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海の紅月くらげさん
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待ちに待った夏祭り当日。
午後五時、狭く蒸し暑い私の部屋の中に潤と二人きり。
「きついかな?」
「大丈夫」
キャミソールを着ているとはいえ、やっぱり男の子に着付けしてもらうのは少し恥ずかしい。
……抱きしめられているくらい近い距離にいるし。
「ん、よかった。これで帯をこうして……と」
鏡の前で私を着付けてくれている潤に釘付けになる。いつもよりも潤は格段に大人っぽくて色っぽい。
「よし、完成!」
「わあ、ありがとう!」
「……ましろん」
「潤?」
さっきまで笑顔だった潤がなんだか元気がないように見える。
「かわいい」
「え!?」
予想外の言葉に目が点になってしまった。
「かわいい。ううん、綺麗だよ。似合ってる」
「そ、そんな……っお世辞いらないよ!」
「本当だよ。すごくかわいいし、綺麗だよ。髪もいつもと違って後ろでまとめていて大人っぽい」
「あ、ありがと」
優しくて気が利く潤はお世辞で言ってくれているのだろうけれど、褒められなれていない私にとってはくすぐったくてたまらない。
「外に出すの嫌になってきた」
潤は私を引き寄せるとそっと包み込むように抱きしめてきた。こんな時でも浴衣が崩れないようにあくまで優しい力。
「え、ちょ、潤?」
「他の男に見られるんだよね。見せたくない……四人にも」
少し掠れた低めの声。普段の柔らかい彼の声とは違う。
「俺って本当はガキっぽいんだ。我儘で欲張りなんだよ」
潤は私から離れると口元を歪ませて微笑んだ。
「知らなかったでしょ?」
その瞳は艶っぽくて表情が色っぽい。
あ……やっぱり兄弟だ。意地悪そうな表情をすると実里くんと似ている。
「俺はね」
でも、こんな潤は初めて見た。普段の彼からは想像がつかなかった色気と大人びた表情に鼓動がどんどん速くなっていく。
「ましろんといると欲がでる」
指先が甘く痺れ、胸の高鳴りを全身で感じる。彼から離れることができない。目が離せない。
「今では誰にも渡したくないよ」
「潤……あの、私」
「期限までに考えて。気持ちに答えてくれるのなら、王子役に選んでほしい」
彼の包み込むような優しさに甘えてしまわぬように、きちんと答えを考えないといけない。