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その日、𓏸𓏸が咳こんでベッドに倒れ込んだ。
「ごめん、ちょっと、熱があるみたい……」 額に手を当てると、明らかに普段より熱い。
薬を飲んで横になった𓏸𓏸は、ふらふらしながらも微笑んで、涼ちゃんにこう伝えた。
「……水が飲みたい時、起こしてね」 声が掠れていた。
涼ちゃんは、ただ「うん」と声には出さず、小さくうなずいた。
その夜、𓏸𓏸が苦しそうにまどろむ中、
涼ちゃんは布団にくるまったまま、
じっと隣に寝ている𓏸𓏸の顔を見つめていた。
(……大丈夫かな)
胸の奥がきゅっと痛む。
何も話せなかった間の自分の無力さが、そのまま押し返ってくる。
しばらくして、𓏸𓏸が小さく唸ると、
涼ちゃんは静かにベッドを抜け出した。
「𓏸𓏸を起こす」ことができず、
自分でふらつく足取りで台所まで行き、水をコップにそそぐ。
こぼさないようにそっと持って帰り、
𓏸𓏸の枕元に置いた。
「ごめんね……」
それも声にならず、
ただ胸の中で繰り返した。
翌朝も𓏸𓏸の熱は下がらなかった。
涼ちゃんは𓏸𓏸の額に手を伸ばすけれど、
どうしても何もできなかった。
不安と後悔がただ膨らんで、
涙も出なかった。
重たい静けさだけが、
二人の間に流れていた。