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私にとって、それは夢だ。
希望に満ちた、美しい夢のはずだ。
それがどうしてこんなにも胸苦しいのだ。
なぜこうも目が覚めた後まで引きずるような気持ちになる? ああそうだ。思い出したよ。
私はいつも見ていたじゃないか。
誰かの夢を見るたびに、同じことを思った。
なんて酷い話だと。
夢を見ているのは、本当は誰なのかと。
「お前たちには期待していたのだが……」
「はい?」
「どうやら見込み違いだったらしい」
「えっと……どういうことですか?」
「俺には関係ない」「お前らが勝手にやってろよ」
そう言っていつも逃げてきた。
誰かが傷つくのを見るくらいなら自分が傷ついた方がマシだと本気で思っていた。
でも本当は違うんじゃないか? 自分の痛みなんて誰にもわからないから他人を傷つけて平気なんじゃないだろうか? だったらこの痛みは一体誰のものなのか? 誰もわかってくれない苦しみを抱えたまま生きていかなければならないのならいっそ死んでしまいたいと思うほど辛かった。
それでも死ねなかった。
自殺すればきっと家族に迷惑をかけると思ったからだ。
「もう死にました」では済まないのだ。
俺は死んだ後も苦しむことになるだろう。
そして残された家族もまた同じ苦しみを抱えることになる。
こんなことならば最初から生まれなければ良かった。
生まれてこなければ親にも兄弟にも友人にも恋人にも会えずに一人ぼっちのまま生きるしかなかったとしても。
「どうせこのまま生きてても何も変わらない」
そう思っていても結局は諦めきれずに、 何度も立ち上がってしまう自分がいることを。
それでももう限界だと悟ると、 いつものように何もかも投げ出してしまおうとする。
けれど何故か足掻かずにはいられない。
本当にそれでいいのか?と。
何かできることはあるはずだと。
たとえ無駄だとしても。
諦めきれないからこそ……
俺はまた立ち上がるしかないのだ。
俺にとってこの世界は……
救いようのないほどに残酷だったけど。
でも同時に希望に満ちた素晴らしい世界でもあって。
そんな矛盾だらけのこの世界を、 俺はきっと愛していたんだろうと思う。
だから例えどれだけ辛くても、 苦しくても、怖くても、 どんなに惨めで情けなくても、 それでもいつかは必ず報われると信じて、 這いつくばってでも足掻いて生きるしかないのだ。
そうでなければ救われないから。……ああ……本当に馬鹿だ。
今更気付くなんて遅すぎる。
俺はずっと前から知っていたはずなのに。
俺がこんなにも弱くて臆病だってことを。
本当は誰とも関わりたくないと思っていること。
他人なんか信用していないということ。
他人には興味がないと言いつつ、いつも誰かに見ていて欲しいと思っていること。
だけど誰にも理解されないと知っているからこそ、本当の意味では決して関わろうとしないということを。
いつの間にか当たり前になっていたこの生き方が、実はただの強がりだということを。
結局俺はどこまで行っても独りぼっちで、永遠に変わることのない孤独な存在なのだと。
『……ごめんなさい』
謝らないでくれよ。
君は何も悪くない。
何もかもが間違っていただけだ。
そして間違えたまま終わらせてしまっただけの話さ。
そうだろ? もう終わったことだ。
全て終わってしまった後なんだ。
これから先の未来のために、 この世界に必要のない記憶は全て捨てよう。
全て忘れてしまえば、楽になれる。……そうすれば、きっとまたやり直すことが出来るから。
少女は彼を励ますために言った。
「貴方は何も悪くないわ」
「何もかもが悪いわけじゃないでしょう?」
「大丈夫よ」
「私が側に居る限り、貴方は決して一人にはならない」
「だから今は休めば良い」
「心配しないで……」
「貴方には、私が付いている」
「……ありがとう」
「ごめんね」