好きだから
 
 秒針が動く音が大きく聞こえるへや。
 異様に帰りが遅い恋人。
 どこに行ってるか分かってるのに、許せない。
 僕がいるのに。 1人で待ってるのに。
 チャイムがなる。 身体が言う事聞かなくて。
 気づいたら走ってて。
 玄関を開けたら知らない匂いの恋人。
 「ただいま」
 「ロウ、くさいよ」
 嘘、臭くないよ。でも、くさいの。
 ねぇ、ロウ、誰の匂い付けてきたの?
 僕以外の匂い付けちゃダメだよ。
 「わり、風呂いく」
 「違う、」
 なんで、僕から離れようとするの。
 ロウは僕のなのに。いいの、僕が離れても。
 「いかないで」
 「ウェンっ…」
 こんなに抱きしめて密着してるのに、苦しい。
 なんで、
 「僕以外の匂い付けないでよ、ねぇ、苦しい」
 「うぇんっ、泣くな 」
 ちがう、泣くなじゃなくて、ロウが泣かせてるのに。
 「うぇん、」
 「ロウ、酒臭い、酔ってるでしょ」
 こっちは普段酒飲んでるんだからさ。気づくよ。
 どうせ、女も居たんでしょ、男も距離近かったんでしょ。
 香水の匂い、男女どっちも着いてるよ。片方ずつ。
 ねぇ、ロウは、僕には怒るくせに、自分はいいんだ。
 僕は許したくないのに。
 本当は飲み会だって、忘年会だって、許したくないのに。
 ねぇ、ロウ、ロウが全部悪いんだよ。
 「ロウ、好きって言ってよ」
 ロウを近づけたくて手を伸ばしたのに、なんで。
 近寄ってよ、ねぇ、なんで僕とそんなにくっつきたくない。
 「っ、ウェンっ、…」
 「ねぇ、ロウは僕のなんじゃないの、
違う、僕の勘違い、思い上がり。ねぇ、ロウは誰の」
 「っ…、ウェンの」
 「ほんと、信じない、ロウなんか、信じれない」
 顔を上げても目を合わせてくれないロウなんか信じない。
 嘘、信じてる。信じてるから嘘つくの。
 ねぇ、ロウ。わかってる。気づいてる。
 僕が何考えてるか、ロウは分かってるの。教えて。
 「ロウ、浮気したら許さない」
 「…俺も許さないよ」
 「嘘、だって、じゃぁ、僕以外の匂いつけちゃダメでしょ。
ねぇ、臭いんだよ。お酒の匂いも、男女の香水も付けて」
 「…ウェンっ、」
 「ねぇ、上書きさせてよ」
 「…っ、」
 ねぇ、なんで。近づいてってば。
 「…ウェン、一緒に風呂行くか」
 予想外。思ってもなかった。
 抱きしめてもらえると思ってた。キスしてもらえると。
 でも、お風呂にいくと。2人で。何してくれるかな。
 「うん、いいよ。でも、ロウが連れてってよね 」
 腕を伸ばしたらお姫さま抱っこして貰えた。
 あぁ、こんなご褒美なら待ってて良かった。
 ロウの顔、こんな近距離で見れるの僕だけなんだもん。
 ねぇ、ロウ。今更だけど、僕、気づいてたよ。
 僕に嫉妬させたくて、ロウがわざとそういうことしてきたの。
秒針の動く音と愛しい人の寝息が聞こえる
 先程まで可愛らしく喘いでいた、嫉妬していた姿は鮮明。
 もし、何もかもがわざとだと言えばウェンは怒るだろうか。
 いや、もっと嫉妬するか。それはそれで可愛い。
 ウェンは鈍感だから、どうせ気づいてないのだろう。
 否、ウェンは意外と鋭い男だ。鈍感なフリしてただけだろう。
 鈍感な振りは、どうせ一番上手いんだから。
 あどけなさの残る寝顔は未だ情欲を煽る。
 なぁ、ウェン。お前のあのわがまま可愛いな。
 可愛いなんて言えば照れて叱られるが。
 いつもより積極的な恋人をまた明日も見たい。
 嫌、明日どころじゃない。毎日。なぁ、お前は怒るか。
コメント
2件
え゛、とてもとても可哀想でかわいい😭♡ありがとうございます😖♡