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【生み出す】だけじゃ半人前だ。
次は、【操る】んだ。
氷を溶かすには、温かいものが必要だ。
温かい、温かい、……。
イメージしろ、温かいものを、。
そう思って、氷に触れた時、俺の頭に映像や声が流れてきた。
[今日は特段に寒いからな。3人で寝よう!]
満面の笑みで枕を抱えながらリビングに居る俺と兄貴のもとに来る兄さん。
[断る!]
必死に抱きついてくる兄さんを引き剥がそうとする兄貴。
[よし。もうこうなったら、このまま2人を抱き上げて行くぞ!]
豪快な笑顔で、俺と兄貴2人を抱えて、兄さんの部屋に行く。
あったかくて、楽しくて、愉快なあの時間の記憶…。
机に触れた指先から、酷く冷たいその中に、微かな温かさを感じた。
俺の体温では無い気がした。
氷自身が持っている、温かい記憶のような、そんな感覚。
「溶けろ、…溶けろ」
何度も強く念じてみる。
その瞬間、指先の触れていた机を覆う氷にその場所からヒビが入った。
ーーパキッ…、パキパキッ…カキンッ!
まるでガラスが割れるような音を盛大にたてて、氷は内側から一気にヒビ割れてゆく。
細かく砕けた氷に、更に「溶けて無くなれ」と何度も念じる。
すると、目の前が“白”で覆われた。
一瞬、失敗したのかと思ったが、それは間違いだった。
湯気になったんだ。真っ白な、湯気に。
やがて湯気は、窓の隙から抜け出て、消え去った。
温かい湯気に当てられた椅子も、天井も、ベッドにも、もう、氷は無かった。
残りは、ドアだけだ。
でも、あぁ。久しぶりに変に頑張ったせいか、希望を持てた安堵のせいか、猛烈な眠気が……。
取り敢えず、ベッドに、行こう…。
妙に重い瞼を何とか上げながら、ベッドにダイブする。
温かい毛布と、柔らかい枕に顔を埋めると、朦朧とした意識を放棄して、重い瞼を閉じた。