目が覚めたのは、日が昇りきった昼だった。
寝過ぎた……。
そんな謎の罪悪感に苛まれる。
でも、悪夢を見なかった。だからこんな時間まで寝たんだろう。
何となく窓の外に目をやると、ゲッソリとして疲れ切った様子の兄貴が居た。多分、仕事帰りだ。
もしかして、昨晩からこの昼までずっと走り回って仕事でもしてたのか?
そんなの、疲れるに決まってる。
兄貴、大丈夫なのか?
顔色の悪いように見える兄貴が心配でたまらなかった。
兄貴、これで体調崩したりとかして、寝込んだりしないよな…?大丈夫、だよな…?
心配と不安がまた心を埋め尽くして、俺を支配する。
無音のまま、また部屋は氷で埋め尽くされる。
陽の光も届かぬほど、窓に分厚い氷が張っている。
俺は、また、何もできないのか…?
また、閉じ籠もるのか…?
そんなの、断固拒否する。
まだ誰かと面と向かって話すのは怖い。まだ直接会うのは怖い。
だが、いつまでもこの部屋にいたら永 遠に何も変わらない。
心に募った不安を一蹴して、俺はまた決意した。
そんな決意をもう一度固めた時、部屋の外から音が聞こえた。
そう言えば、もうそろそろ兄貴が昼飯を運んできてもおかしくない時間だ。
兄貴はいつも昼飯を置いて、話しかけてくる。なのに、今日は皿を机に置いた音しか聞こえない。
兄貴の声は、聞こえなかった。
「…あ、兄貴…?」
恐る恐る声を出してみても、兄貴からの返事は無い。返事どころか、兄貴はそのまま、歩いて行った。
俺の声が小さかったのかもしれない。ドアを覆う氷は他の氷よりも特段に分厚い。
それに、今日は兄貴、疲れてるからそのまま寝て、ソ連さんとかに頼んだのかもしれない。
なら、仕方無い、よな。
と、取り敢えず、この部屋中の氷を溶かさないと、だなぁ。
また溶かさないとかぁ。
不安を忘れるために別の事を考え続ける。







