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校門前・続き
「それは少し、乱暴ではありませんか?」
静かに響いた声と共に、一人の青年が校門へ歩み寄ってくる。
それは――一祟だった。
校長と教頭が怪訝そうに眉をひそめる。
「君は……?」
一祟は穏やかな笑みを浮かべ、丁寧に一礼した。
「申し遅れました。私は一祟と申します。公太さんとは親しい間柄でして」
公太は思わず目を丸くする。
「……一祟? なんでお前がここにいるんだよ」
「少し心配でしたので。無事に登校できるか、見に来ました」
周囲の生徒たちがざわつく中、一祟は真っ直ぐ校長たちを見据えた。
「公太さんの行動がSNSで広まったのは事実です。ですが、それを一方的に“問題行動”と決めつけるのは、少々早計ではありませんか?」
校長が言葉に詰まる。
「……しかし……」
一祟は静かに続けた。
「彼が戦っていたのは、人々を脅かす存在です。危険を承知で、多くの人を守ってきた」
その言葉に、生徒たちの中から声が上がる。
「……あの時、公太が助けてくれたんだ」 「動画見たけど、悪いやつ倒してただけじゃん」
空気が少しずつ変わっていく。
一祟は穏やかな口調のまま問いかけた。
「この件で彼を追い出すことが、本当に“教育”と言えるのでしょうか?」
しばらくの沈黙。
やがて校長は深く息を吐いた。
「……少し、考えさせてもらおう」
その場は一旦収まる。
だが、公太は舌打ちした。
「チッ……くだらねぇ」
一祟はそんな公太に微笑む。
「公太さん。“学校を守る”のも、一つの戦いですよ」
その言葉に、公太は一瞬だけ目を見開く。
そして、気まずそうに顔をそらした。
「……ったく、偉そうに」
校門前での別れ
放課後。
公太と一祟は並んで校門へ向かっていた。
その時――
「公太!!」
声と共に、不良仲間たちが立ち塞がる。
険しい表情だった。
「お前……宇宙人みたいな奴らと戦ってるって、本当なのか?」
「知り合いが襲われた。あいつら、お前の敵なんだろ……?」
公太は目を伏せる。
一祟は何も言わず、静かに見守っていた。
やがて公太が低く言う。
「……今日で終わりだ。もう、つるむのはやめにする」
仲間たちは一瞬だけ寂しそうな顔を見せる。
だが、何も言わず背を向けた。
重い沈黙。
一祟がそっと声をかける。
「……大丈夫ですか?」
公太はポケットに手を突っ込み、歩き出した。
「……帰る」
その時だった。
「――どこ行くんすか、アニキ!!」
校門の向こうから、数人の若者たちが駆け寄ってくる。
かつて、公太に救われた者たちだった。
「宇宙人だろうが関係ねぇっす!」 「アニキが戦うなら、俺らもついていくっすよ!」
「助けてもらった恩、返させてください!」
公太の足が止まる。
振り返らない。
だが、その声を確かに聞いていた。
しばらく沈黙したあと、小さく息を吐く。
「……バカが。お前らが相手できるわけねぇだろ」
ぶっきらぼうな声。
だが、その奥には確かな嬉しさが滲んでいた。
一祟は静かに微笑む。
「……いい仲間に恵まれましたね、公太さん」
「うっせぇ。気持ち悪ぃこと言ってんじゃねぇ」
不機嫌そうに顔をそむける公太。
けれど、その表情は少しだけ柔らかかった。
やがて公太は立ち止まり、校舎を見上げる。
「……やっぱ学校戻るわ」
「ええ。行ってらっしゃい」
無言で校門をくぐり、歩いていく公太。
その背中を、一祟は静かに見送っていた。
静かな尾行 ― 校門の影で
生徒たちのざわめきが遠ざかる。
その頃――
校門から離れた裏通り。
黒いワンボックス車が静かに停車していた。
後部座席のモニターには、公太と一祟の映像。
男が低く呟く。
「ターゲット二名、照合完了。行動パターンも一致」
別の男が続ける。
「やっと尻尾を掴んだか。だが素性は依然不明……」
そして、さらに低い声。
「……まだ接触は早い。継続監視だ」
ブレーキランプが赤く灯る。
次の瞬間、車は静かに闇へ溶け込むように走り去った。
――二人の知らぬ場所で、新たな追跡が始まっていた。