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数日後・帰り道
修行帰りの夕暮れ。
公太と唯我は、いつものように口喧嘩をしながら歩いていた。
「何でついてくるんだよ」
「それはこっちの台詞だ」
「途中まで帰り道が同じなだけだろ」
「もっと離れて歩け。仲良しだと思われる」
「俺に命令すんな。お前が離れろ」
「あぁ、そうする」
「……ムカつくな」
公太は舌打ちしながら空を見上げた。
「こんな日に限って一祟は地方だしよ。よりにもよって、お前と二人か」
唯我はため息をつく。
「俺の台詞だ」
そんなくだらないやり取りをしていた、その時だった。
前方の道路に、黒いワンボックス車が五台、横一列に並んで停車した。
車の扉が次々と開き、軍服姿の男たちが降りてくる。
総勢二十名近い。
先頭の男が礼儀正しく口を開いた。
「君たちだね?」
男は携帯端末を掲げる。
そこには、公太と唯我の戦闘映像が映っていた。
「この人物と、君たちは一致している。加えて――“モンスター”に関する情報提供をお願いしたい」
二人は沈黙した。
アビスとの戦いは極秘。
簡単に話せる内容ではない。
やがて、公太が低く問いかける。
「……その前に、あんたら何者だ?」
男は一歩前へ出た。
懐から黒地に金のエンブレムが刻まれた証票を取り出す。
「我々は《特務機関アスガルト》――国家治安特別活動部隊第四分隊だ」
「……アスガルト?」
公太が眉をひそめる。
唯我が小さく呟いた。
「軍人か……」
男は静かに続ける。
「悪いが、同行してもらいたい」
公太が唯我を見る。
「どうする?」
「決まってる」
次の瞬間――
二人は踵を返し、全力で駆け出した。
「待て!! 追え!!」
兵士たちが一斉に走り出す。
だが、角を曲がった瞬間。
公太たちの姿は消えていた。
路地裏
薄暗い路地。
公太と唯我は壁にもたれ、息を整えていた。
「なんなんだよ、あいつら」
「アスガルト……聞いたことはない」
公太が拳を握る。
「次来たら返り討ちにしてやる」
「馬鹿か。俺たちの活動は極秘だぞ」
「でもよ――」
その時だった。
背後から低い声が響く。
「なら、今ここで見せてくれないか」
振り返る。
そこには、一人の男が立っていた。
筋肉質な体。
ただ立っているだけで空気が変わるような威圧感。
「俺の名は牧田孝二。アスガルト隊長だ」
牧田は静かに二人を見る。
「君たちの戦闘記録を見て、興味を持った」
公太がニヤリと笑う。
「へぇ。俺たちについてこれるとはな、オッサン」
「それより聞かせてくれ。“モンスター”と、お前たちの力について」
「知らねぇ方が身のためだぞ」
「なら、なおさら知りたい」
公太が拳を鳴らす。
「どうなっても知らねぇぞ」
唯我が呆れたように呟く。
「おい……」
だが、公太はもう飛び出していた。
拳が牧田へ向かう。
しかし――
牧田は軽く回避。
次の瞬間、鋭いストレートが公太の顔面に突き刺さった。
「ッ!?」
公太がよろめく。
「てめぇ……!」
連続攻撃。
だが、牧田は全て見切る。
避け、捌き、正確にカウンターを返す。
公太の表情が歪む。
「なんだよ……こいつ……!」
「悪いが時間がない。終わらせるぞ」
通信
唯我は距離を取り、通信機を開く。
「ジュリー、聞こえるか」
『唯我? 何したのよ、今度は』
「面倒な相手に捕まった」
『……場所は?』
「軍人崩れだ。名前は牧田孝二」
一瞬、沈黙。
『……牧田?』
唯我が眉をひそめる。
「知っているのか?」
『今調べる。けど撤退しなさい。想定外の接触は禁止って言ったわよね?』
「できれば苦労しない」
通信が切れる。
唯我は公太を見る。
「時間稼ぎが必要だな」
公太が笑う。
「二人でやるしかねぇな」
牧田との激突
二人が同時に飛び出す。
公太が正面。
唯我が側面から援護。
しかし――
牧田は異常だった。
公太の拳を紙一重で避け、肘打ち。
唯我の蹴りを流し、そのまま地面へ叩きつける。
「っ……!」
「連携は悪くない。だが甘い」
次の瞬間。
牧田の拳が、公太の腹へ突き刺さる。
「ぐっ……!」
公太が膝をつく。
そこへ通信。
『情報が出たわ。牧田孝二――アスガルト隊長。複数格闘術の師範資格持ち。実戦経験も桁違いよ』
「……なるほどな」
唯我が息を吐く。
「勝てないわけだ」
公太がゆっくり立ち上がる。
「だったら――本気でやるしかねぇ」
次の瞬間。
灼熱の炎が、公太の全身を包み込んだ。
『ネオ・コード』
《灼獄》。
赤い炎が夜を照らす。
牧田が目を見開いた。
「……なんだ、その力は」
公太が拳を構える。
「逃げるなら今のうちだ」
炎が爆ぜる。
「でも来るなら――容赦しねぇ!!」
爆発的加速。
炎を纏った拳が、牧田へ一直線に突き刺さる。
「――ぐはっ!!」
衝撃。
牧田の身体が吹き飛ぶ。
公太は肩で息をしながら呟いた。
「悪く思うなよ……。こうでもしねぇと、埒が明かなかった」
牧田は倒れたまま、小さく笑う。
「……なるほど……面白い……」
そして意識を失った。
その瞬間。
奥の路地から無線の声が響く。
「いたぞ!!」
唯我が即座に振り向く。
「公太、撤退だ!」
「あぁ、分かってる!」
二人は闇の中へ駆け出した。
残されたのは――
静かに倒れる牧田の姿だけだった。