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(……はぁ、……はぁ、……っ)
高架下のコンクリートは、驚くほど冷たい。
でも、さっき突き飛ばした絵名の体温は、まだ掌にこびりついて離れない。
ひどいよね。大嫌いなんて嘘をついて、あんなに泣かせて……。
あんなに優しく抱きしめてくれたその身体を、ボクは暴力で拒絶した。
(…えななん、今頃怒ってるだろうなぁ。ボクのこと、一生恨んでくれたら、ボクのことなんて、ただの『思い出』にして最高に美味しい絵を描いていける。ボクが、絵名のとなりに、いたら、いてしまったら…!塗りつぶして…壊してしまうけど)
震える指でカバンから取り出した封筒。
表紙には、精一杯「暁山瑞希」らしく、可愛らしいウサギのシールを貼っておいた。
中身は、ボクがいなくなった後の、みんなのための『メニュー表』。
『前菜:ボクのことは、悪い夢だったと忘れて』
『メイン:絵名の描く、瑞希のいない真っ白で綺麗な世界』
『デザート:……ボクがいない、最高に幸せな25時』
「……あはは。ボク、最後まで……可愛くないや」
これをここに置いていけば、ボクは消えられる。
絵名への贖罪。ボクというが消えた後の、静かで美しい静寂。
それこそが、ボクが絵名に捧げられる、最後で唯一の愛のカタチなんだ。
好きな人くらいは、ボクの手で幸せにしたかった。
君と、笑い合いたいだけだった、でも、それは叶わない。願えない。
(追ってこないで、えななん。……ボクを、一人にして。……そうじゃないと、ボク、また君を傷つけちゃうから……っ)