俺、青井らだおは今日も出勤していた
大型をはしごし特殊刑事課のクレーム対応に追われ、こうして深夜に1日の業務を書類にまとめている
pcと睨めっこ、備品の管理、毎日のようにかかってくるクレーム電話(ほとんど特殊刑事課案件)の対応、後輩の育成、副業など
やることが多すぎて疲れ果てていた俺は珍しく署の仮眠室で寝ることにした
かけ布団をかぶり寝ようと瞼を閉じる
………
寝れない
さっき飲んだエナドリが悪さをしているのだろうか……
流石に20本は多いか
そういえば最近寝れないことが多かったっけ?
この前はいきなり気持ち悪くなっちゃって書類仕事中に吐いちゃったし………俺って体調結構まずいんかな…?
まぁいいや
どうせ考えたって変わらないしなら明日に回した仕事でも終わらせちゃうか
俺は再び自分のデスクに座り仕事を始めた
それが間違いだった事にその時の俺は気づかなかった
この選択はあとあと酷く後悔する事となった
目が覚めると5時30だった
らだお あれ……いつの間にか寝てたのか俺………
デスクに突っ伏して寝ていたためか体がバキバキだ
決して歳ではない
そう絶対に
俺は自分の腕の下の書類に目を通した
どうやら寝る前には終わらせていたようだ
今日やるべき書類はあらかた片付いていた
そんなこと言ったってまた増えるんだろうけどね…
俺はデスクから立ちあがろうとした
足に力が入らない…
何故だ…?
その疑問が俺の頭を埋め尽くすときにはすでに俺は倒れていた
俺が倒れた反動でデスクの上に置いてあった水入りのコップが音を立てて倒れ中の水が溢れて書類を濡らし机の上から降ってくる
俺の目の前に垂れてはすぐに床に広がっていく
俺はぼーっとしているのかはたまた自分の体の異変のせいなのかわからないがただその垂れていく様を見続けていた
だんだんと瞳が持ち上がらなくなり俺はゆっくりと瞳を閉じて意識を手放した
気がつくとあったかい布団の中で寝ていた
体を起こしここがどこなのか思考を巡らせた
ガチャリ
ドアが開き目の前から誰かが部屋に入ってくる
それはナツメさんだった
ナツメ あっ!起きたらだおくん!?
らだお さっき起きました
らだお てかなんで俺はここに…?
ナツメ 本署でらだおくんが倒れてたから勝手に連れてきちゃったんだけど……ダメだったかな…?
らだお 倒れた……?
らだお そういえば……俺って何してたんだっけ?
ナツメ 僕が見つけて時はらだおくんデスク前で倒れてたけど……
らだお ……
らだお えっと…
らだお 確か仮眠室で寝ようとして……でも寝れなくて
らだお それで仕事したんだ
らだお そしたらいつの間にか寝ちゃってて椅子から立ちあがろうとしてぶっ倒れたんだっけ…?
話を聞いたナツメさんは青ざめた顔で俺を見た
ナツメ ら…らだおくん………
ナツメ 一つ聞いてもいいかな…
らだお なんすか?
ナツメ 休んだのって…いつ?
俺はしばらく考えた
結果数週間前から休んでいないという事実が発覚してしまった
それを話すや否やナツメさんは俺のほっぺたをつねった
らだお 痛いです痛いですっ!ナツメさんっ
ナツメ なんで休まないのー!!
らだお 痛いっ痛いですって!!!
ナツメ らだおくん体調治るまでぜーったいに!帰さないからね!!
そう言いながらも俺のほっぺたをつねる
マジで痛い
地味だけど痛い
らだお 痛いっ痛いー!!!
しばらく経っただろうかナツメさんはやっと俺から手を離した
俺の両頬は共に赤くなっていて瞳にはうっすらと光り輝くものが見え隠れしていた
ナツメさんは俺の正面に立って言った
ナツメ らだおくんが休めなくなったのって僕が原因だよね……
その言葉に俺はなんとも言えなかった
そうだって言いたくないけどそうなんだろうってどこかで思っている自分がいた
だから俺は顔を伏せ黙り込んでしまった
少ししてナツメさんの暖かい手が俺の頬に触れた
そして俺の顔を上にあげた
ナツメさんの綺麗な瞳と目が合った
ナツメ ごめんねらだおくん
俺に謝るナツメさんはどこか辛そうだった
ナツメ 僕が抜けて大変だったよね
そんなことない
別にナツメさんのせいだけじゃない
そう言いたかったのに俺は言えなかった
ただ唇が震えるだけで声が出せなかった
ナツメさんは俺を抱きしめてくれた
ナツメ 僕はもう君の先輩ではないけれどそれでも少しくらい……今ぐらいは先輩でいさせて
そう言いながら俺の頭を優しく撫でるナツメさんの手は懐かしかった
昔……ヘリを教えてくれてた時も時々こんな風に俺のことを撫でてくれてたっけ
俺はいつからか泣いていた
泣く俺をいつまでもいつまでも優しくナツメ先輩は包んでいてくれた
小さな寝息が部屋に聞こえ始めた頃
彼も泣いていた
ナツメ ごめんね…らだおくん………
ナツメ 僕が君にとっての最後の砦だったのかもしれない…
ナツメ 僕は君に何も言わずに行ってしまった
ナツメ こんな僕を許してほしい……そして今だけでも君の先輩で居させて欲しい
ナツメ らだおくん…君は僕の永遠の愛弟子だよ
ナツメ 君はもっと自分を大切にして
ナツメ このままじゃ僕の道を辿ってしまうから………
チュンチュンッ
小鳥の囀りで目が覚めた俺は体を起こそうとする
力が入らない
らだお あ“れ……
なんだ?声もおかしいような………
ガチャリ
ドアが開きナツメ先輩が入ってくる
ナツメ おはようらだおくん
らだお お”ばよう“ございまず……
ナツメ 喋んなくていいよ
俺は頷いた
ナツメ 全く…らだおくんは他人の異変には気がつくのに自分の異変には気づかないんだから
らだお あはは……ゴホッッ…ゴホゴホッ
俺がどうしてこうなっているのだろうか…的な視線をナツメ先輩に向けるとナツメ先輩は察してくれたのか答えてくれた
ナツメ らだおくん君は今重度の風邪だからね?
らだお か…風邪…?
ナツメ そう
らだお なんで…?俺…風邪に…ならない…と………ゴホッ思って…たん……だけど…なぁ…ゴホッゴホッ
ナツメ 睡眠不足、栄養失調、カフェイン摂取過剰、脱水症状、免疫力低下………とか要因がありすぎるくらいだよ…
ナツメ 逆になんで今まで動けてたの?ってくらいやばかったんだからね……
らだお あは…は……ゴホッゴホッ
ナツメ まぁ数日は安静にしてなきゃいけないから僕が看病するよ
らだお そんな……迷惑…かけ…ゴホッゴホッ
ナツメ らだおくんはもう喋らないでいいから!あと迷惑じゃない
らだお じゃあ……たまには……ゴホッ…看病……ゴホ…お願い…します…ゴホッゴホッ
ナツメ うん!いくらでも甘えていいからね
らだお wwそうっすか
たまにはこういうのも……いいかもね
それから数日ナツメ先輩はずっと俺に付きっきりだった
ナツメ これねマジで面白かったんだよww
らだお えぐっww
昔みたいにくだらない話で盛り上がって笑い合ったり
ナツメ ねーむれーねむれーいい子のらだおくん〜♪
らだお なんか音ズレてません…?
ナツメ いいの!
なぜか子守唄で寝かしつけられたり
ナツメ ほらあーんして
らだお いや俺1人で食べれます…
ナツメ いいからはーやーくーー!あーん!
らだお ぁ…あーん
半ば強制的に食べさせられたり
らだお んんっ……
らだお まだ…4時…かぁ……
らだお 2度寝…しよ………ウトウト
寝返りを打った瞬間暖かい物体が体に触れ俺は布団をめくった
ナツメ先輩が俺を抱いて寝ている
らだお いつの間に……ってまぁ……いいか………ウトウト……
らだお 待てっ!よくない!!風邪移っちゃうじゃん!
その後俺が急いでナツメ先輩を部屋に寝かしに行ったりした
ナツメ先輩の看病のおかげか俺は数日ですっかり元通りの健康体を取り戻した
ガチャリ
いつものようにナツメ先輩が部屋に入ってきて俺と話す
ナツメ それでさw
らだお ナツメさん
俺が声をかけるとビクッと肩を上に上げて俺を方を見るナツメ先輩
ナツメ な…なに?
らだお 俺今日で戻ります
ナツメ先輩はがっかりした様子で俺を見た
上目遣いしたって戻るもんは戻ります
ナツメ 行っちゃうの…?
らだお はぁ……だって俺だってもう上官の立場ですし
らだお いつまでもナツメさんに甘えるわけにはいきませんからね
ナツメ そ…っか……
らだお そんなにあからさまにがっかりしないでくださいよw
らだお ナツメ先輩
俺が一言そう言っただけだった
ナツメ先輩は目を輝かせて俺を見た
ナツメ 今…今なんて!?
らだお 2回はいいませーん
ナツメ え…えぇ…そんなぁ………
ナツメ 録音してスマホの着信音にしようと思ったのに……
らだお ぇ?
ナツメ まぁいいや
今なんかサラッとやばいこと言ってなかった……?
ナツメ らだおくんもそうだもんね
ナツメ じゃあ僕はここまでかな
俺とナツメ先輩は家の玄関まで歩いた
俺が玄関のドアノブに触れる
俺は振り向いてナツメ先輩にハグをした
ナツメ先輩は抵抗することなく俺を上から抱きしめてくれた
俺はナツメ先輩に満面の笑みで言う
らだお 今までお世話になりましたナツメ先輩!
ナツメ先輩は笑ったでも彼の綺麗な瞳から水滴がポロポロとこぼれ落ちていた
俺はその水滴を手で拭い言う
らだお ありがとう…でもこれからもお世話になりますよナツメさん
ナツメ うんっ……うんっ!
ナツメ 今までこちらこそありがとう
ナツメ これからもよろしく!!
泣きながら笑う彼の姿は俺の脳裏に焼きついた
きっと死んでも俺は彼のことは忘れないだろう
親愛なる師匠であり先輩であり、良きライバルでもあった
俺の大好きな人
ハクナツメ
これからもよろしくお願いします
俺は元気に戸惑いなく玄関を出た
この日俺はTwixにこんな投稿をした
「俺はこれからも頑張ります」
短い文章に込められた意味に気がついたのはきっと彼だけであろう
ナツメ いつまでも応援しているよ
ナツメ 僕の大切な人
ナツメ 青井…らだおくん
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