prat
pr視点
雨が降る放課後。校舎裏にあっとが立っていた。制服の袖を濡らしながら。
足音が近づき、やがて傘を差した俺が姿を見せた。
pr …待たせたな、あっと
at ぷりっつ先輩、遅いです
あっとの声には、いつも通りのぶっきらぼうな響きがあった。でもその目は、どこか切なげだった。
at 今日で終わりにしたいことがあって、呼び出しました
pr 終わり…?
俺の声に動揺が混じる。あっとは少しだけ黙った。濡れた制服の胸元をぎゅっと握る。
at 俺、先輩の“好きなフリ”に付き合うの、そろそろ限界なんです
pr ……
at いつも優しいのに、距離を詰めたら、すっと離れる。LINEも既読スルーするくせに、会ったら笑いかけてくる
あっとは顔を上げた。目が真っ直ぐ、俺に向いていた。
at 俺のこと、好きなんですか。好きなフリですか
俺は返事をしない。ただ、傘の向きを変えて、あっとに向ける。そして、ぽつりと。
pr ……好きに決まっとるやろ
あっとの目が見開かれる。
pr でも、怖かってん。お前が本気で返してくれるんか、自信なかった
at じゃあ――
pr けど今は違う。あっと、俺のこと、どう思っとる?
一瞬の沈黙。そして、あっとはほんの少し頬を赤らめて、小さく笑った。
at 先輩のそういうとこ、ずるいです。俺も……ずっと、好きでした
傘の中、ふたりの距離がゆっくりと縮まり、雨音がかき消されていく。
初めて触れた指先に、お互いの体温が宿った。