テラーノベル
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続きです!
……ごめん、なおこ。
「……んっ……」
そして、重なった。
触れるだけの、羽のようなキス。
けれど、その柔らかさは想像を絶するもので、
頭の芯が痺れるよな感覚に襲われる。
一度触れてしまえば、もう「綺麗で無垢な関係」には戻れない。
ーーわかっているのに、
吸い付くような感触に抗えず、
私はさらに深く、唇を喰むように重ねてしまった。
「……ん……っ……」
NAOKOの喉から、微かに吐息が漏れた。
…今の気持ちいのかな?
そんな不敬な思考が頭をよぎった直後、
密着した体から伝わる彼女の鼓動が一瞬、
跳ねた気がした。
ぴくりと、腰に回していた私の指先が震える。
心臓がうるさい。
バレたかもしれない、という恐怖。
……でも。
「嫌だったら、起きてよ……」
卑怯な言い訳をつぶやく。
起きないのは、嫌じゃないから? ナオコもこの熱を求めているの?
薄く開いた彼女の唇からは、熱を持った吐息が絶え間なく溢れている。
けれど、彼女は一向に目を開ける気配がない。
拒絶も肯定もしないその静寂が、
私の理性をさらに焼き切っていく。
(……いいんだね…)
自分に言い聞かせるように、私はもう一度、
深く、深く唇を重ねた。
今度は、彼女の舌先に触れるほど、
独占欲を剥き出しにして。
「……ん……っ////…んぅ……」
少し息苦しかったのか、 逃げるように首を振るけれど、私を拒むように押し返す手には力が入っていない。
……ん、……ちゅ、……っ……
彼女の喉の奥から漏れる小さな吐音(ねいき)が、私の耳元で甘く響く。
無自覚で残酷な誘惑。
理性の糸が、ぷつりと切れた音がした。
このまま、彼女が目を覚まして私を拒絶するまで、この甘い熱に溺れてしまいたい。
そのときだった。
「……ん……っ…………すき……だよ…」
耳元で、熱を帯びた声が響いた。
私の体温が、一瞬で凍りつく。 心臓が跳ね、全身の血が逆流するような感覚。
「……っ、え……?」
重なっていた唇を離し、私は彼女の顔を覗き込んだ。
NAOKOの瞳はまだ閉じたままだ。
けれど、その表情はどこか切なげで、
愛おしい誰かを想っているような
……そんな、見たこともない柔らかな色を湛えていた。
(好き……? 今、私に言ったの……?)
一瞬、心に甘い期待がふわりと広がった。
けれど、その期待を打ち消すように
鋭い不安が胸を刺した。
(……誰を?)
誰にでも分け隔てなく優しい彼女のことだ。
この「好き」だって、 無自覚な甘えの延長に過ぎないのかもしれない。
それとも――夢の中で見ている、私じゃない誰かへの言葉なのだろうか。
「…………ナオコ?」
震える声で名前を呼んでみるけれど、
彼女はまた小さく吐息を漏らすだけで、
それ以上の言葉を紡ぐことはなかった。
暗闇の中、私の心だけが激しく揺れ動く。
このまま、聞こえなかったことにして、続きを奪うこともできる。
けれど。
明日、目が覚めた彼女が「昨日はよく眠れたね」なんて無邪気に笑ったとき、
自分はどんな顔をすればいい?
(奪いたいんじゃない。……ちゃんと、私を選んでほしいんだ)
私はゆっくりと、回していた腕を解いた。
吸い付くような肌の感触が離れていくのが、
ひどく寂しくて、胸が締め付けられる。
彼女の乱れたバスローブの襟元を、
震える手でそっと整えた。
指先がまだ熱い。唇には、
まだ彼女の感触が残っている。
「……次は、ちゃんと聞かせてね」
小さく、自分に言い聞かせるように呟く。
夢の中の無自覚な言葉じゃなくて。
その瞳に「私」を映した状態で、その言葉の本当の宛先を教えてほしい。
たとえ、それが私の望む答えではなかったとしても。
「……逃げないでよ、ナオコ」
私は彼女の額に、今度はただの親愛を込めた、
小さく短いキスを落とした。
朝。
障子の隙間から差し込む光で、ぼんやりと目が覚める。
……いや、正確には。
一睡もできていない。
隣では、NAOKOが気持ちよさそうに眠っている。
昨夜のことが、全部そのまま残っていて。
胸の奥がじんわりと熱いまま、動けない。
「……コハル?」
ふいに、声がして。
いつの間にか起きていたNAOKOと目が合う。
「え、ちょ、顔やばくない?大丈夫?」
心配そうに覗き込んでくる顔は、いつも通りで。
何も知らないみたいに、まっすぐで。
「眠れなかったんか?」
そう言って、額に手を当ててくる。
その距離に、一瞬だけ呼吸が詰まる。
「……だいじょぶ」
絞り出した声は、自分でも驚くくらいかすれていた。
「……全然大丈夫じゃないやん」
そう言いながら、安心させるみたいに頭を撫でられる。
その手の温度に、昨日の全部がよみがえってくる。
(……言えるわけ、ないじゃん)
なんてことを思いながら、
私は小さく目を逸らした。
つぎはNAOKO視点のお話を書く予定です!
お楽しみに✨
コメント
1件
なおこ目線たのしみです!!