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その日の放課後。
〇〇が靴箱で上履きを履き替えていると、横にスッと影が差した。
「一緒に帰ろ」
見上げると、そこには亮。
自然すぎるその言葉に一瞬返事を詰まらせてしまう。
「……いいけど」
校門を出ると、春の風が少し強く吹いて、〇〇の髪を揺らした。
亮はそれをちらりと見て、小さく笑う。
「なんかさ、こうして一緒に帰るの、いいな」
「えっ……」
「だって俺、まだ道とか全然わかんないし。案内してもらえるの、助かるよ」
そう言われると何も返せなくて、〇〇はただ歩幅を合わせて隣を歩いた。
夕陽に照らされる横顔があまりにも綺麗で、まっすぐ見られない。
家の近くまで来たとき、亮がふと立ち止まった。
「なぁ、〇〇」
「ん?」
「……学校では、あんま話しかけすぎない方がいい?」
唐突な問いに、心臓が跳ね上がる。
「ど、どうして……?」
亮は少し視線をそらし、苦笑した。
「だって、今日昼に一緒にノート見てただけで、けっこう見られてたろ? ○○ が嫌なら、控えようかなって」
(……気づいてたんだ)
胸がじんわり温かくなった。
「別に……嫌じゃないよ」
そう答えると、亮はほんの一瞬だけ安心したように目を細めた。
その表情を見てしまった〇〇は、思わず顔をそらした。
――そして次の日。
「ねぇねぇ、昨日、〇〇と亮くん一緒に帰ってなかった?」
「え〜怪しい〜!二人って仲いいんだね!」
教室に入るなり、友達たちに囲まれてからかわれる。
〇〇は必死に否定するけれど、心臓は落ち着かない。
ちらりと視線を送ると、亮が遠くの席からこっちを見て――にやり、と楽しそうに笑った。
(……もう!)
〇〇は思わず頬を赤らめ、机に顔を伏せるしかなかった。
第3話
〜完〜