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順番を間違えました。
本当に申し訳ないです。
こちらが27話になります。
前回のは28話です。
「!見て!!」
ラウールが叫ぶ。
先程まで、静かに空で停止していた龍の体が、崩れていく。
「てるにぃが、やったんやな…」
「成功、できたんだ…」
一気に、メンバーの中で安心が広がる。
男が逃げた後、気絶している阿部を回復させながら、岩本の帰りを待っていた。
もうすぐ、朝日が昇る。
長く続いた戦いが、ようやく幕を閉じようとしていた。
龍の体が、どんどん崩れていく。
静かに、美しく…
その中心に、
「!2人だ!」
岩本と深澤が、ゆったりとしたペースで落下していた。
抱きしめ合いながら、ゆっくりと。
そのまま、ビルの屋上に落ちたのだろう。
慌ててメンバーが屋上に向かう。
「気絶…?」
宮舘が、2人が気絶していることを確認する。
「うわ!全然離れねぇよ!」
渡辺は、深澤を早く回復させようと思い、持ち上げようとしたが、2人は全く離れない。
「ほんとに気絶してんの?」
佐久間も一緒に引っ張ってみるが、ビクともしない。
「…このままでも、回復はできるよ。」
回復役の目黒は、2人を無理に引き離さない選択をする。
2人が、気絶しているにもかかわらず、幸せそうに笑っていたから。
(阿部視点)
「これでよし…っと。こーじ、こっちもOK!」
「ん!りょーかい!あとはなぁ…」
「こっちもいいよ。ラウ、他には?」
「えっとね…北西2km先に…」
「俺、近いから行くね!」
俺、こーじ、舘さん、ラウ、佐久間で壊れた東京の修復作業を行ってた。
立つ鳥跡を濁さず、だしね。
そもそも、こんなとこに一般の方を戻せないし…
めめと翔太には、照とふっかの回復に専念してもらってる。
もちろん、大烏もね。
あの後、俺が気絶してる間に起こったことを聞いた。
目が覚めた時には、もう照とふっかが隣で寝てて…
成功したんだなって思った。
でも、佐久間からすごい勢いで謝罪を受けちゃって…
『あべちゃん、ほんっとうにごめん!!!あんなに、あべちゃんが頑張ってくれたのに…俺、あいつのこと逃がしちゃった…』
綺麗に90度に腰を曲げた佐久間に戸惑ったけど、全然問題ないんだよ。
聞いたよ。
佐久間は、あの男を”圧倒”してたって。
それで十分。
佐久間は、やるべき事をやってくれた。
捕まえられなかったのは、悔しいけど…
俺のわがままに最後まで付き合ってくれた佐久間に、すごい感謝してる。
俺らは、照がふっかのことをどうやって救ったのかは分からない。
俺は聞く気ないしね。
他のメンバーもそうだと思う。
それに、俺は見てなかったけど、2人は龍の中から出てきた時、すごい幸せそうに抱き合ってたんだって。
俺は、なんとなく思う。
きっと、2人はもう二度と離れない。
いや…離れなくなっちゃったんじゃないか…って。
ふっかのことだけど、多分綺麗事じゃ救えない。
だから、俺は本当に照でいいのか、正直心配ではあった。
でも、照じゃないと救えないとも思ってた。
照のことを送り出したのも、それが理由。
照は、ふっかのこと傷つけるのを怖がってた。
なるべく優しい言葉を使って、丁寧にふっかと接してた。
ふっかは、それじゃ救われない。
でも、救われた。
今も、2人は離れないように抱きしめあってる。
照は、覚悟を決めたんだね。
ふっかと”一緒に堕ちる”覚悟を…
大烏も、わかってたんだよね…?
ふっかに必要なのは、照が隠してる”ふっかに対する重すぎる感情”ってことを。
これに気づいてるのは、俺と大烏だけ。
だから、俺らで照の背中を押すしか無かったわけだけど…
これから、どうなるんだろう…?
2人の間に、”呪い”が生まれた。
何があっても一緒にいるっていう、誰も触れることができない呪いが…
多分、2人はもう戻れない。
今までの関係には戻れないんだ。
それが、吉となるか凶となるか…
不安な部分だってあるよ。
だって、この事実に俺以外のみんなは気づいてない。
はぁ、俺の能力…こういう所があるんだよな…
まぁ、いいか…
“理解者”っていうのはいた方がいいもんね。
「あっべちゃーん!!これで全部終わりだって!!」
「うわっ!!」
どこから来たか分からない、急に佐久間に抱きつかれる。
うん。
大丈夫、何も問題ないよ。
だって、俺らは俺らで幸せだもん。
幸せの形なんて人それぞれ。
2人の幸せがどんな形であろうと、俺らに否定する権利なんない。
どんなことがあっても受け入れる。
それが、”仲間”ってやつじゃん?
~数日後~
(岩本視点)
あれから、俺らの関係は少し変わってた。
メンバーが言うには、俺らはどれだけ引っ張っても離れなかったらしい。
俺は、本当かどうか疑ってけど…
まだ気絶してるふっかを抱きしめてることに気づいて、うわ、本当だ!って驚いた。
ふっかは能力の使いすぎとか、精神的に疲れも溜まってて、その日に起きることはなかった。
そりゃそうだ。
逆に、気絶する前まで平然としてたのがすごいよ。
そこから、しばらく任務もなくてふっかと会うことがなかった。
それでも、分かる…
俺とふっかは、もう二度と離れることなんてないって…
俺は、ゆっくり自動ドアに足を踏み入れる。
まだ、確認しないといけないことがあるから。
いつも通り、プロテインとチョコ。
あと、今日はフライドポテトもカゴに入れて…
ゆったりとした足取りで、レジに向かう。
いつも、並んでいたレジに。
……やっぱり、いた。
「いらっしゃいませ!」
バイトの人じゃない、爽やかな笑顔のふっかが。
「お願いします。」
いつも通り。
全部がいつも通りだった。
「今日はポテトだ!珍しいですね~!」
いつも通り、この時間は消防士とレジの店員の関係。
何気ない会話を交わして、それでも、あくまで”顔見知り”。
そんな関係性。
まるで、あの時のことが夢だったんじゃないかって思うくらいに、俺もふっかも落ち着いてた。
「んっと…,お会計、862円になります!」
「じゃあ、1000円で…」
これくらいならカードで払ってもいいんだけど、俺は現金のが好き。
ふっかの綺麗な手で俺のお金を受け取って、お釣りを渡してくれる。
…ふっかがなかなかお釣りを渡してくれない。
なんだ?
レシートももう手に持ってる。
なのに…
疑問に思ってると、ふっかが急にカウンターから身を乗り出して、顔を近づけてくる。
そして、こそっと
「…照、ありがと」
「……」
「お釣り、138円です!ありがとうごさいました!!」
フリーズする俺を他所に、ふっかは俺の手にレシートとお釣りを渡す。
何も分からないまま、俺は店を出る。
え?え…?
ちょっと、待って……
お互いがただの店員と客としての態度で接する。
俺らの暗黙の了解…
ふっかが、それを破った…?
今まで、そんなこと無かった。
俺は、結構破っちゃうことあったけど、ふっかからなんて…
「……まじで…あいつ……!」
両手で顔を覆う。
顔が熱い…今、絶対真っ赤だ…
こんな状態で、消防署戻れねぇっての…
(深澤視点)
照が店から出てくのを確認する。
「……」
ニコニコと、しばらく笑ってみせる。
でも…
「…っ…」
ボンって音がなって、一気に恥ずかしくなる。
なにやってんの、俺…?
待ってよ…
こんなん…もう…
恥ずすぎる…
たしかに、誰も後ろに並んでなかった。
誰も見てなかった。
だからって…!
だからって顔を近づける必要あったかなぁ!?
しかも、耳元で囁くなんて…!!
ほんとに、恥ずかしい…!
穴があったら飛び込みたい…
今まで、俺から約束破るなんてなかった。
でも、伝えたかった。
照とあれから1回も会えてなくて…
LINEで伝えることもできたけど、それはなんか違うかなって…
だから、ここで伝えようって思ったんだけど…
もっとやり方あったじゃん!!!
もう……なんで、恋する乙女みたいなってるわけ……
「…ん?」
あれ?
今、俺なんて思って…?
へ?
“恋する乙女”…?
「…っ!ッッッ…!!」
声にならない声を上げて悶絶する。
待って!待ってよ!!
何考えちゃってんの!?
さすがにそれはまずいって…!!!
意識した瞬間、鼓動のバクバクの原因が増える。
顔の熱がどんどん上がってく。
俺…もしかして…照のこと……
いやいやいや!!
違うじゃん!!そういうのじゃなくて…!
ていうか、冷静になって考えてみたけど…
照は、俺に対してあれだけの感情を持ち続けてて…
それこそ、優越感とか…嫉妬…って…
「…ぅ…ぅあ…///」
だめだ。
完全に思考がそっちに行っちゃう。
そんなんじゃないはず。
きっと違う…なのに……
すごい、ドキドキする…
「ふぅ…」
ようやく思考も落ち着いてきて、やっと接客に集中できる。
さっきまで、すごいからぶっちゃってたよね。
でも、お客さんの反応が想定外だったな…
『深澤くん!心配したんだよ!体調の方は大丈夫かい?』
『久しぶりに顔を見たよ~!しばらく会えてなくて寂しかったんだから!』
『やっぱり、深澤くんの顔見るとほっとするよ。』
『体調気を付けてね。また来るよ。』
お客さんだけじゃない。
同じ店員さんも、みんな…
俺に対してのマイナスな感情を感じない。
俺、無断で仕事サボっちゃってたのに…
それでも、怒らないで心配してくれてる。
俺…ほんとに周りのこと見てなかったんだな…
俺は、ずっと誰からも否定されてなかった。
偽物の笑顔でも、誰かの生活の一部になれてた。
ほんと、馬鹿だな…
俺のすぐ隣に、幸せはずっと転がってたんだ。
「お願いします。」
また、お客さんが来たみたい。
「いらっしゃいませ!」
偽物ではない、でも接客スマイルでカゴを受け取る。
笑顔は、やっぱ大事にしないとだもん。
それで、お客さんの顔を見て…
「……ぇ…」
思わず、固まる。
向こうも同じ反応。
藤森、先輩…?
嘘…高校から、1回も会ってないのに…
「深澤、くん?」
先に声を出したのは、藤森先輩だった。
「…久しぶりだね。」
「そう、ですね…」
少し流れる気まずい空気。
そりゃそうだ。
藤森先輩は、どう思ってたんかな?
俺にバスケ部を託したのに、その後すぐ辞めた俺のこと。
失望、したかな…
「深澤くん、もうバスケやってないんだね。」
「…っ…はい…」
藤森先輩から、俺の思考を呼んだかのような発言。
偶然なんだろうけど、俺は思わず焦る。
これから、なんて言われるんだろう…
なんで辞めたの?
俺の時間奪ったのに。
逃げるなよ。
そう、言われる?
藤森先輩に、怒られる…?
手が震える…
こわい…
藤森先輩からの言葉が怖い。
「ごめんね。」
でも、藤森先輩から聞こえた言葉は、”謝罪”だった。
あの日も、藤森先輩に謝罪された。
どうして、先輩が謝るのか、ずっと不思議だった。
でも、その謝罪の意味が…
今の俺なら分かる。
「そんなこと、言わないでください。」
思ったよりも、はっきりと声に出せた。
申し訳なさそうに顔をあげる先輩。
「俺、もともとバスケは向いてなかったんです。むしろ、こうやってる方が楽しくて…」
レジの道具を手に持って笑ってみせる。
たしかに、俺には才能があった。
でも、熱量はなかった。
きっと、いつか飽きちゃってたと思う。
あの日は…今まではバスケをやめたことは、先輩の役を奪った罪悪感と逃げだと思ってた。
でも、今は違う。
俺は、こうやってレジ店員をやってる。
人の温もりを感じながら…
「俺は、俺なりにやりたいことを見つけたんです。だから、先輩のせいじゃない…」
目を丸くする先輩に、柔らかくほほ笑みかける。
そう…ずっと、これを伝えたかった…
「先輩…俺に、夢を与えるきっかけをくださり、ありがとうごさいました。俺は、先輩の期待を裏切ってしまったかもしれない。でも、先輩とバスケをしてた時間が、すごい”楽しかった”。」
「…っ…」
これが、俺の本音。
後悔してた。
先輩の立つべき場所を奪ったことが。
それが、自己嫌悪の始まりになるくらいに…
でも、それは…
俺が藤森先輩と過ごした日々が大好きだったから。
「…ありがとう…ありがとう……」
藤森先輩は、それだけ言ってお店を出てく。
ちゃんと、伝えられたよね…?
藤森先輩に、感謝を伝えられたよね?
伝わってるといいな。
これで、先輩の重荷を軽くできてたらいいな。
うん、伝わったよ。
「…!」
心の中で、声が聞こえた。
今夜は、ゆっくり寝れそうだな…
「ということで!!今日から会議を始めまーす!!」
カフェに、佐久間の声が響く。
今夜は、久しぶりに”9人”が揃っている。
これが、9人にとってはものすごく幸せなことだった。
「じゃ、説明を…あべちゃん、よろしく!!!」
自分で言い出したくせに、阿部に全てを丸投げする佐久間。
「お前がやんねーのかよ!」
「なんやねん、それ!!」
渡辺と向井がすぐにツッコミ、笑いが広がる。
全員が、笑ってる。
(楽しい…やっぱり、みんなと一緒にいるのが好き…)
深澤も、もう苦しくなかった。
少しだけ、自分がここにいていいのかは分からなくなる。
それでも、岩本は隣にいてくれる。
隣で、周りには見えないように手を握ってくれている。
楽しい。
その感情を偽らない。
この感情は間違っていない。
深澤は、純粋にこの場を楽しめるようになっていた。
「まぁ、あの男はボスをやめたじゃん?つまり、指示役が居なくなったってこと。」
阿部は、佐久間に投げられた説明を始める。
「任務を発信する役が居なくなった…俺らがこれから見つける必要がある。」
あの男は本当にボスをやめたようで、あれから一切声は聞こえなくなり、任務も入ってこなくなった。
だが、それは裏社会の治安が不安定になりつつあることを意味する。
「自分から見つけるって…どうすんの?」
渡辺が少しめんどくさそうに言う。
今までは、指示されたことをこなせばよかったが、探す手間が増えるのは渡辺にとっては大問題であった。
「表世界の情報と、定期的な見回り。これしかないと思うよ。」
岩本の発言に、渡辺はカウンターに突っ伏す。
「もう…翔太ったら…」
宮舘が困ったように笑いながら、9人分のケーキを運んでくる。
その匂いで渡辺が勢いよく顔をあげる。
その様子に、また笑いが生まれる。
「ん!美味しい!!」
初めに佐久間がケーキを口にして驚く。
「すごい!生地ふわっふわ!生クリームも甘すぎない爽やかな味で…」
阿部は、完璧な食レポを始める。
「うまっ!」
「美味すぎるやん!!」
続いて、目黒と向井もケーキを口にして驚く。
「やばい…もう半分も食べちゃったよ!」
ラウールも美味しすぎて、ケーキは半分しか残ってなかった。
「あったりまえだろ!」
渡辺は、食べ慣れてる宮舘の味が絶賛されてることに嬉しそうに言う。
「大きい戦いの後だからね。休憩みたいな感じで…おかわりもあるよ。」
宮舘が、おかわりと言った瞬間、ラウールと目黒が席を立つ。
「…ふっか、美味しいね。」
「…うん。」
「おかわり、する?」
「…うん。」
わちゃわちゃとしている7人と、少し離れた席で、2人はケーキを味わっていた。
深澤は、ストレスもあり、”味”を感じなくなっていた。
岩本も、最近それを知った。
まだ、完全に戻ったわけではない。
でも、このケーキは美味しいと感じていた。
「…って言っても…さすがに俺らだけじゃ、全部を見るのは無理じゃない?」
ケーキを食べながら作戦会議にもどる。
深澤は、ふと思ったことを発言してみる。
「そう…そこなんだよ…!」
頭を抱えながら、佐久間が応答する。
見回りの場所は、東京だけどしよう。
だが、広すぎる。
9人では、ほぼ不可能。
「俺の能力使っても無理だもんな…」
ラウールが、そんなことをつぶやく。
ラウールの能力、ミサイル。
東京の修復作業の時に大きく役に立った。
小型ドローンを飛ばすことによって、どこに何があるかを正確に把握できる。
だが、限度がある。
「さすがにビュンビュン飛ばしてたら、俺が死ぬからなぁ…」
ラウールは冗談交じりに笑う。
だが、深刻な問題ではある。
頭を抱えたまま、しばらく悩んでいると…
「dominator…」
と、向井が言う。
「…っ!それだ!!!」
8人は、閃いたように瞳を輝かせて声を揃える。
「…うん。ありがとね。それじゃ、またね。」
あれから数分後。
岩本と深澤が戻ってくる。
「どうだった?」
阿部が、2人に問いかける。
「全然いいよ、だって!」
深澤が笑顔で答える。
dominatorに協力を求めようと閃いてからの行動はスムーズだった。
岩本と深澤で、副ボスの颯馬に電話をかけてみたのだ。
ボスの真白でも良かったが、やはり安全な方がいいため、まとも枠の颯馬に電話をかけたのだ。
dominator側も、今回の1件について、少し理解はあるようで、指示役がいなくなったことについて悩んでいたようだ。
お互い、ちょうどいいタイミング。
「…よかったー…」
ほっとして椅子に座る7人。
これで1つ問題は解決した。
「そういやさ…」
ふと、渡辺が思い出したように話を切り出す。
「お前らさ、恋愛泥棒ってやつ知ってる?」
「……は?」
宮舘を除く7人の声がハモる。
急に何を言い出すかと思えば、恋愛泥棒…?
そんなの知るわけないだろう、と。
「絵本の話?」
宮舘は否定しないが、少しズレた質問をする。
いや、違うだろ。
質問するとこ、そこじゃないだろ。
7人の中に、そんなツッコミが浮かぶ。
「ちげぇよ。そんなやつがいるって噂。」
誰も興味が無さそうに来ていることに気づき、少し不貞腐れながら渡辺は頬を膨らませる。
この渡辺のくだらない話が、これから大きな影響を与えることを知らずに……
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