テラーノベル
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「簡単な家事は一通り説明したな!」
「じゃ、行ってくるってばよ。いい子で待ってろよ!」
バタン、と扉が閉まる。カチャカチャと何かを引っ掛ける音がしたあと、人間はどこかへ行った。
「いいこ……、いい子で待つ、か」
あの人間は「ナルト」というらしい。この住処に一人で住んでいるんだと。
サスケが居候し始めてからというもの、ナルトは色々な事を教えてくれた。食料調達の方法も。
しっかり覚えている。「れんじでちん」、だ
サスケはお腹が空くまでゆったり過ごした。
ふかふかな椅子で寝転んでいる時、ふと天界を考える。
悪魔と会ってから天罰までの間、こうして何もしていない時間は無かった。何かしなければ四肢は無くなると言われたからだ。
今こうして寝ていられるのが不思議でならない。
人間にとっての悪とはなんだろう。魔力がないから何も起こらないのだろうか
でも、それなら先程言っていた「悪い事はしたらダメ」はどうなる?
人間界にも、必ずしも罰があるのだろう。揚げ足も、理不尽な罪も。2度も罰を食らうのは気が進まない。ここでもある程度言う通りに動いた方がいいのかもしれない。
未知の生物と対話するのは、こんなにも怖いのかと痛感した。
円形の機械…とけいの針は「11」を指している。外から光が差し、ぽかぽかと暖かくなった
翼をかざすと綺麗で、ずっと見ていられた。
次第にお腹が空いてきたので、サスケは部屋の奥へ向かった。
ナルトが言っていた。「台の上に作り置きがあるから、それ食ってくれってば」……と。それを れんじでちん か
翼だけではやりづらいだろうが、やってみよう。どうにも人間界の器具は手足がある前提なのでやりにくい。
現に先程、ドアに翼を滑らせ壊しかけてしまった。
(これだな)
箱に詰まった食べ物をれんじでちんに入れ、適当に赤い所を押した。
途端それはジジジと動き出し、触れると温かくなっていた。
(凄い、人間界にはこんな物が)
これもかがくと言うやつなのだろうか。これが天界にも普及すればさぞかし過ごしやすくなるだろう。
ピーピーという音がし、箱も冷たくなった。中を見ると白く湯気が立っている。
湯気と共に優しい匂いが流れ、サスケのお腹をまた鳴らせた。とてもおいしそうだった。
天界では見ない、よくわからない柔らかい食べ物。少し怖くもあったが口へ運んでみた。
「………うまい」
心配する事はなかった。香りや舌味、全てが完璧で一瞬でサスケを虜にした。果実以外にこんなに美味しい食べ物があるなんて。どんどん手が進んだ。
いくらナルトを信用していないサスケでも、これだけ美味いものをくれたからにはお返しせねばと思った。
サスケはあらいものも教わっていた。きっとこれをやれば礼になるだろう。
スポンジは持つことができず、面倒くさくなったので翼でゴシゴシ洗った。液体をかけて擦るだけで泡立って面白い。
洗い終わった食器たちは、水でびしょびしょだった。
(しまった。ここからどうするか聞いてない)
食器はどうすれば水滴が無くなるのだろう。これも機械がやるのか、手動か?
よくわからないが、目の前には れんじでちん があった。
試しにこの円柱のガラスを入れてみよう。こっぷと言ったか
先程のように箱にこっぷを入れ、赤い所を押した。
変わらずジジジと同じ音がするが、その他にピキッとなにか乾いた音がした。
それを始めとしビキバキとどんどん変な音がしてくる。
さっきの食べ物はこんな音はしなかった。だんだん嫌な予感がしてくる
突如、パキン!と大きな音を立て、そのまま静かになっていく。
きっと何が起こったに違いない。まだ終わりの音が鳴っていないが、沈黙が不気味に感じ思わず翼が勝手に箱を開けた。
「なっ…………」
目の前にある物はドロドロに溶けたかたまりで、ガラスの面影はこれっぽっちも無い。
そんな、言う通りにやったはずなのにと、怖くて動けない。
これをナルトに見られたらどうなるだろう。これはきっと悪い事だから罰される。住処から追い出されるかもしれない。そうなればサスケは生きては行けないだろう。
塊はまだ熱を帯びていて、触るとぐにゃっと粘り熱さが伝わる。あまりの熱さに小さく絶叫した。
それでもこれを元に直さなければいけない。こんな状態のこっぷを、ナルトに見せられるわけがない
(どうする、なんでだ……こねても、治らない)
次第に塊は固くなり、箱から取れなくなってしまった。
生きた心地がしない。悪い事はダメ、いい子でいなきゃ……それら全てをこれで破ってしまった。
人間界ではどう償えば許してくれるのだろう。四肢はもう無い。償う物すら、もう残っていない。
どれだけ悩んでいたのか、青かった空はきつね色になっている。きっとナルトは帰ってくる。それまでにどうにか──────
ガチャ、と遠くから音がする。サスケはそれを聞き息を吸った。
「ただいまー、いい子にしてたか?」
いい子……、いい子にできなかった。悪い事をした。何をすればいい………こういう時だけ腕や足が疼き、言葉が出ない。
きっちんと言われる所に座り尽くしているサスケをナルトは不思議に思い、きっちんを覗いた。
「どうかしたか?お、洗ってる。ちゃんとレンジでチンできたんだな!!」
「どうだレンジでチン。便利だろ?」
……と言いながら、ナルトはレンジを見た。その瞬間、「ヒェッ」と悲鳴をあげ硬直する
そんなナルトをサスケは見ることができなかった。
「へ………、な、なにこれ???」
「………こっ……、ぷ」
「コップ…………」
ナルトは絶句していた。サスケがとかしたこのコップ、実は彼のバイト先の後輩から貰ったものだったという。
ナルトはサスケの方を見た。つばさの先端は赤く火傷しており、溶けたガラスのぐにゃぐにゃ感からすぐに懸命に直そうとしたんだろうと察した。
その瞬間、ナルトは吹き出した。
「ふはっ、お前ってばやらかしたな?このコップは耐熱性ってヤツじゃねぇからレンジでチンしたら溶けるんだってばよ!!」
「………知らな、かった」
「悪い悪い、教えてなかったな。オレも時々分かんなくなるし大丈夫だって」
「それより羽!そのままにしてたら痛い目見るぞ?」
冷やさなきゃなーとナルトは作業を始めた。その間、サスケは下を向いたまま翼を縮める。
(………なんだ?大丈夫、って。罰は)
ガラガラと袋に何か詰め、持ってくる
「その羽の赤くなってるやつ、火傷って言ってな。ほっとくとめっちゃ痛ぇんだってばよ」
「そんな時はこれ当てるんだ」
袋が当たった時、ヒヤリと体中に寒気が通った。サスケは驚いたが、微かに感じていた痛みは完全に無くなった。
「……これが、罰か?」
「は?ばつ?なんで」
「……悪い事をしたら罰だろ?」
「何言ってんだよ!わざとじゃねぇなら悪くねぇよ」
「こんな赤くしてよ……、頑張って直そうとしたんだろ?そんだけされれば怒れねぇし、次やらなきゃいいだけだ」
その時、やっと理解した。
人間界は悪い事をしてもそれを認めて反省出来れば、次に繋がるかもしれないんだ。
そしてしっかり謝れば、こうして支えてくれるのだと。
「………すまなかった。」
「ん!ちゃんと謝れて偉いじゃん!!」
「お前ってばまだここに慣れてねぇし、わかんない事あったら失敗したっていいの」
「………」
何故だろう。話していると、温かくなる。
優しい返事だ。今まで感じたことの無い…
命令では無い。だが、従わせる前提で話している。
そしてそれに嫌な気を感じること無く、次もやりたくなる。
……いつか、褒めて欲しいと思ってしまう。
「人間」
「人間って……、名前で呼べよ」
「もっと、人間について知りたくなった」
別の意味で捉えれば
この居場所は「檻の中」なのかもしれない。
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