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祭り前日
じゃ、この時間に明日集まって作戦開始で良い?悟
もちろん!
じゃあ明日ね、悟
うん、バイバイ傑
傑が悟の家から出ていく
…
ふぅ
夜、俺は深呼吸をしてから家を出た
そして堤防に向かって一直線に走った
子供が堤防で走って転んでよろけてそのまま海へ落ちる
俺は子供を追い掛けるように海へ飛び込む
暗い水の中、必死に目を開けて子供の姿を探し出した
気を失って沈みかけてる小さな体を抱え込み水面に向かって泳ぐ
月で反射して輝いている水面は思っているより遠くちゃんとたどり着けるか心配になる
思うように体が動かないし息も苦しい
あと少し、あと少しだけ頑張るんだ
ここで失敗したら意味が無い
この子を死なせちゃ意味が無い
その瞬間父親らしき人が飛び込んできた
子供を引き渡してほっとした瞬間力が抜けて水を思いっきり飲んでしまった
喉や器官が燃えるように痛くて気が遠くなっていくのを自覚した
もう、ダメだ
泡に包まれながら海底へと緩やかに沈んでいく
意識が遠のいてきて苦しみも和らいできた
目を閉じて
ねぇ、傑と心の中で呼び掛けた
傑、ごめんね
嘘だったんだ
祭りの日に死ぬって言ったけど本当は今日だったんだ
お前が俺の言うこと全部信じるって言ってたからそれを利用して騙した
俺が死ぬって言ったらお前は助けようとする、運命を変えようとするだろ?
そんなのダメ
だって神様に言われたんだ
運命は変えちゃいけないんだって
死に直すことはできるけど、死ぬ運命を変えることは許されないんだって
そんな大それたことしたら、死ぬはずだった俺が生き続けたら、歪みが生まれて周りにまで影響を及ぼすんだって
それがもしおばあちゃんや学校の皆、
“傑”に及んじゃったら?
そんなのダメだろ
俺が生き続けたせいで皆に迷惑が掛かるなんてそんなのダメだろ
もし傑が俺を助けようとしたら傑が死んじゃうかもしれない
そんなの耐えられない
俺は17歳で死ぬ運命だっただけのこと
それなのにもう1回この夏を生きて傑と少しでも長く過ごすことが出来た
それだけで俺は十分
もう十分幸せだ
なぁ、傑
ごめんな、たくさん嘘ついて
ごめんな、約束破って
ごめんな、ずっと一緒にいれなくて
ごめんな、1人にして
それと
ありがとう、ずっと俺といてくれて
ありがとう、俺に沢山楽しいをくれて
ありがとう、優しくしてくれて
ありがとう、俺の事を親友と言ってくれて
なぁ、傑、大好きだよ
本当に、本当に、大好き
傑と一緒にいるともう何もいらないって思えるくらい幸せだった
俺こんな見た目だからさ
結構裏でも言われててすっごく悲しかった、辛かった、怖かった
でも傑の優しさで、温かさで、いつの間にか恐怖も悲しさも辛さも全部忘れてしまった
ただ、幸せだった
短い人生だったけど、俺の親友はたったひとり、傑だけ
あぁ、傑を置いて死ぬって分かってたら、傑とこんなに仲良くならなかったのに
なぁ、傑
もう一緒にはいられないけど、どうか幸せになって
寂しいけど、悲しいけど、俺の事は忘れていいから
だから、誰にも負けねーくらい、世界で1番幸せになってね
ちっぽけな俺の人生にも、この先少しくらい幸せが待ってたと思う
それ全部傑にあげて、って神様にお願いしとくね
俺は傑の幸せだけを祈ってるから
バイバイ、俺のいちばん大切な人
沢山の”ごめんね”と数え切れない
“ありがとう”を君に送ります
はい、ここで切ります
では!