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前回のあらすじ。電話中になんか弓弦が会社に到着した。

……って、えええ弓弦の登場の仕方がスパダリのそれ……っていやいや今はそんな事よりズボンだろ!

………あれ?ズボン、ってゆうか服昨日のと同じだ。昨日とズボン同じだ!?履いてる!!

「???」

「ん?お前そのズボン……」

弓弦ズボン履いてる=俺ズボン剥いでない。

……このズボンどっから来た?

瞬間、俺は尻のポケットから凄まじいスピードで財布を抜いた。中見る。知らんレシートある!ああ(被ダメージ)!

「……つかぬことを尋ねますが、そのズボンどちらで買いました……?」

「え?ユニク●だけど……あれ、そういえばコレ昨日も聞いてきたよな?」

「あああああ」

俺の五千円札が……五千円札がッ!

というか、これ駅前の無人販売店のレシートなんだよな。まぁド深夜だったろうしユ●クロ開いてなかったんだろうな。

「ひぇぇ…高ぇ……」

「……ズボン買ったの?大丈夫か?」

「い、いやいいんだ、剥いでなかったのならそれで……ダメージ負ったのが俺だけならそれで……」

うん、そうだそうだ過ぎた事を嘆きすぎるのも良くないぞ。弓弦は無事なんだ、今日のラッキーマインドは前向きよ陽太郎。

……あれこれ、今日のお昼代すら無いのでは?今日まだお茶しか腹に入って無いのに?…………ファンキーってことにしとくか。処世術、処世術!

さっさと明るい結論出して、しかし誤魔化しきれなかった悲しさから心持ちしょんぼりと財布をケツに仕舞い直した。

今は事態の収拾が先決だ。ぶっちゃけると、あまりの失態続きのせいで弓弦からの大人になった俺への印象が恐ろしすぎてもう……全部終わらせたい。兎に角!なる早で!

「なんか、久々の再会なのに迷惑かけて悪かったな。今度詫びの品送るわ」

とかなんとか適当言ってiPh●neを掴んだら、流れるように弓弦の左腕がガッと俺の右手を掴んだ。ジャック・ニコルソンの再来である。うーん嫌な予感。取り敢えずスマホだけは取り上げようと自由な左手で弓弦の右手と格闘するが、これがまっったく剥がれない。クッッソ!

「ぐぅっ!何だこの馬鹿力……ちょっと弓弦さん?やっぱり怒ってます?」

「詫びの品はファミレス割引券が良い」

なにぃ、ここでリクエスト、だと!?はっ……おもしれー男……!

………じゃなくてね?

あーー待て待てそんな力いれんなってぇ、画面割れるから……ヒッ、今ミシッていった!?

「わ、分かった分かった!え〜〜っと割引券ね?……わ、割引券?何処で貰えんのそういうの………どわぁっ!?急に手離すんじゃねぇ!落としたらどーすんだ……よ……」

……なんか冷静に考えて、会社のエントランスで部外者とスマホ取り合った末にスマホ庇って尻もちついてる俺って結構ヤバくない?

真っ暗な画面に映った見るに堪えないボロ雑巾の顔を見た瞬間そう思った俺はかなり偉かったと思う。

「……なんか、急に目が醒めたわ」

「今?」

「おん。昨日の9時ぶりに」

入店時ぶりか、良かったなと弓弦。こういう所が好きなんだよなぁと俺。

「で、話戻すとファミレス割引券はそこで食ったら貰える。よって陽太郎、お前今日の昼は俺とファミレスだ」

流石弓弦、親指と顎で自動ドアの外を指す様もふつくしいの一言に尽きる。ボロ雑巾とは地が違う。しかし内容が暴君すぎる。

「おいおい知らんのか、社畜に昼休みが必ず巡ってくるとは限らないんだぜ?」

「辞めちまえそんな会社」

エントランス敵の本拠地で言う?それ」

その後も結構色々喚いてみたが、聞く耳は持たれず強制的に会社から引っ張り出された。その様はまるでお手々を掴まれて助け出されたアザラシの様に嫌々だった、と後に同僚は語った。

「…………今金無いんだけど」

「良いぜ、いくらでもせびりな」

ちょっと見ないうちになんかスパダリになったのは一体どういう心境の変化なんですか?

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