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昼を食おうと俺を引きずって外に出たものの、弓弦には特に何の計画もなかったらしい。まぁ言うてファミレスなので取り敢えず近くのに入ってみた。………が、 昼間のファミレスの混み具合と言ったら大変なもので、男二人ふらふらと僻地へ僻地へ追いやられ最終的に廃病院みたいなファミレスに辿り着いたのだった。今ココね。
2人して店の前で立ち尽くす。う〜ん、看板の劣化で謎キャラクターが最早ただのバケモンと化してる。恐怖と笑いが一対一くらいでいい勝負してるわ。
まぁそれはさておき、ここはもしや割引券とかって……いや聞くか。昼飯はパン派なもんで普段ファミレス行かないからよう分からん。
「弓弦、ここ割引券……いや、そういう制度…あると思うか?」
「まぁ一か八かってとこだろ」
間髪入れない答えに嫌な予感がしてチラッと隣を見た。すると(これはどえれぇトコに来ちまったぜ……)という緊張を滲ませながら、それさえも楽しむトップギャンブラーの顔をした親友がそこに立っていた。
「………役に立たねぇ返答どうも」
もしかしなくてもコイツ、何のためにこんな所まで来たか忘れてねぇか。
…………うん、まぁ……いいか。俺だってイケメンとただで飯食えるんだから文句言わんよ。その場しのぎで言っただけだからお詫びの品用意する気もほとんど無いしな。金も無いし。忘れてくれるならラッキーラッキー。
………ラッキー、かな…?この店に流れ着いた時点でアンラッキーなのでは……?
「……大丈夫なんだろうなこの店」
「食事できれば良いんだよ」
「ホントに?ココなんか古代の遺品みたいな郷土料理でてこない?俺ら普通のご飯食べれる?」
ここでやっと弓弦がこっちを見た。
「…古代の遺品みたいなって……お前ファミレスって何か知ってる?」
「さぁ、あんま……あ、ファミレスのスはスイパラのスって親父が言ってたから、それだけは知ってるぞ」
……おいなんだその目は。違うのか?違うのかコレ?親父はクソ野郎か?純粋な子供に嘘吹き込んだクソ親父か?
「いやクソかは分からないが、スイパラじゃないしなんならスイパラも略名だからな」
「なん、だと……」
じゃあファミレスのスは何のスなんだよ……。
とかなんとか言ってたら店の窓向こうに人影が現れてこっちをじっと見始めた。果たしてこれは入店の催促なのか、変な野郎二人組の観察なのか。
「……店入るか」
「そうだな」
「俺ハンバーグ食ーべよ。ハンバーグならどこのでも外れないしな」
陽太郎も同じのにする?とペラペラのメニューを指差して笑う弓弦。なんて陽パワーだ……弓弦、恐ろしい子……。廃墟一歩手前の内装に対して場違い感がすごすぎやしないか。
「……陽太郎?」
「ん、俺お前のセットについて来る味噌汁だけ貰うわ。今がっつり二日酔い」
「なんで昼飯付いてきたんだよ」
「お前が引っ張ってきたんだろうがよ……」
というかお前だって俺と同じ量飲んでんのに何でピンピンしてんの?お前昨日ちゃんとベロベロだったよな?……二日酔いしない体質ってヤツか、うわ羨まし。この頭痛を丁寧にラッピングしてプレゼントfor you…したいわ。
「……あ、陽太郎、これ」
「んぁ、メニュー見ろって?」
……何々…………えっ。
味噌汁、しじみ汁だと良いな。そう心から思った時ほどセットメニューに味噌汁は無いのだと……そう言って弓弦は結構真面目に落ち込む俺を諭したのだった。