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夏休み初日。


朝から蝉の声がうるさくて、


余計に目が覚める。


「早く課題進めなさいよ」


母親の声が空気の熱と一緒に迫ってくる。



今日も変わらない日が始まる。



午前中は机にかじりつき、


ひたすら課題を消化していく。



家の中は静かだけど、


心の中はずっとざわついていた。



スマホを見ると、


クラスのグループLINEがやけに賑やかだ。


「カラオケ行こうぜ!」


「花火もしたい!」


トラゾー、ぺいんと、しにがみなど


――みんなが楽しそうに予定を立ててる。


俺も誘われてはいる。



「俺も行けたら行く」



そう返事したのに、


画面を見てるだけで指が止まる。



昼過ぎ、


ぺいんとから個別でメッセージが届いた。



pn『クロノアさん!今日ほんとに来れそう?待ってるから!』



迷って、しばらく文字を打てずにいた。



……答えは結局、



kr『ごめん、今日は無理そう』



その言葉を送信した瞬間、


なんとも言えない罪悪感と安堵が


同時に押し寄せてきた。



本当はみんなと遊びたいのかもしれない。


でも、




“ちゃんとした自分”




じゃないと、


楽しんでいい資格なんてないような


気がしてしまう。






夕方。


リビングで課題プリントを片手に、


ぼーっと窓の外を見る。




夕焼けのグラデーションと、


どこか遠くで花火の音。




夏休みは始まったばかりなのに、


俺だけ取り残されているようだった。





夜、


机に向かって日記を書くふりをして、


ページの隅に





「どうしたら、自由になれる?」





と小さく独り言を書いた。



でもやっぱり、


次の瞬間に消しゴムで消してしまう。



この夏も、


“優等生の俺”


でいないといけないルールだけが、


変わらず俺を縛り続けている。

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