テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夏休み中盤。
朝から
「課題はどこまで進んだの?」
と母親が聞いてくる。
kr「もう半分くらい終わった」
そう答えてみせても、
母さんが満足することはない。
「クラスの子たち、ちゃんと宿題進めてるって。あなたも“クロノアさん”なんだから当然やってちょうだいよ?」
また、“クロノアさん”だ。
家の中でも、
学校と同じ役を演じてる気がして、
俺は息苦しくなる。
課題は着々と終わっていく。
残りはあとわずか。
それなのに気持ちは全然晴れない。
スマホの中のクラスグループは
今日も賑やかだ。
「ショッピングモールで買い物しない〜?」
「海でも行ってスイカ割りやらね?」
俺は見ているだけで、何も反応できない。
昼ごろ、ふと机の上にあった
去年使ったカラー筆ペンを手に取った。
課題ノートの裏表紙、
誰にも見せられない落書きを始める。
線が踊って、無意味な模様になっていく。
俺の言葉なんか、誰にも届かない。
どうせ消してしまうのに、
つい何か残したくなってしまう。
夕飯時、父親が珍しく早く帰ってくる。
「最近、元気ないな? お前はちゃんとしてるんだから、無理すんなよ」
そう言いながら、俺の肩を軽く叩いた。
(“ちゃんとしなきゃ”と叱られるよりは、まだいいのかな…)
小さな疑問と安心の狭間で、
俺は声にならない息を吐いた。
夜、何気なくスマホを見ていたら、
またぺいんとからDMが来ていた。
pn『クロノアさん、もしもしー?夏バテしてないか?困ったことあったら言ってよ』
少しだけ指が動いた。でも返事は、
(遊びに行けないやつだと思われたくない)
(でも、俺は今、 ”何を言いたい” ?)
答えはまだ、自分でもわからない。
kr「…本当の想い、言えたらいいのにな」
小さくつぶやいて、スマホの画面を閉じる。
明日も、同じ
“優等生”の夏休みが続いていく。
でもどこか、
ほんの少しだけ、
「違う明日」を望む自分が
生まれている気がした。
コメント
6件
内容が神すぎ!続き楽しみにしてます!
うわぁー!!めっちゃいい!! クロノアさんの気持ち分からなくも無いなぁ、 続きが(っ ॑꒳ ॑c)タノシミ!!
話の内容がが神すぎます! 毎日疲れた時に見て元気 もらってます! 続きも楽しみにしてます。