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私にとってこの世で最も大切なものは何かと聞かれたら、それは家族だと答えるでしょう。
父様、母様、姉さん、兄さん達、弟妹たち。それに……。
「──さあ! 今日も元気よく行きましょう!」
いつものように朝の挨拶をして、私は家を出る。
私の名前はリリアンナ=ヴィクストレム。ヴィクストレム公爵家の三女にして末っ子です。歳は十六歳ですが、もうすぐ十七歳になる予定ですね。ちなみに髪の色は赤茶で目の色は紫。顔立ちは整っているほうだと自負しております。身長は百六十センチくらいでしょうか。
そんな私ですが、実は現在進行形で婚約破棄の危機に直面しております。しかも相手は我が国の王太子殿下ですから驚きです。えぇ本当に驚いていますとも!……はい冗談はこの辺にしましょう。もちろん本気で驚いておりますし、とても困惑していますけれどね。
さて、なぜ私がこんなにも取り乱しているのかと言いますとね、実はつい先日ですね……えーっと、なんて言ったらいいかなぁ~。
そう! あれですよ!!
『友達100人できるかな?』っていうアレがあるじゃないですか!? もうこの歳になってくるとね、恥ずかしくてなかなか言えないんですよね。
100人の友達を作るとか……なんかもう恥ずかしくなってきちゃうわけでしてね、はい。
そんな私ですから、もちろん今まで友達と呼べる存在が一人もいなかったんですけどね。
しかし今度こそはと思いましてね、私なりに色々と努力をしてみた訳なんですよ。
まずは挨拶をするところから始めてみました。
おはようございます、こんにちわ、こんばんわ、今日もいい天気ですね、明日もいい天気になりますかね? あ、ちなみに私は晴れ女なのできっと大丈夫でしょう、うん。
とまあ、とりあえずそういった感じのことを言ってみたわけなんですよ。
そしたらなんということでしょう。
「ふっ、君は面白いことを言うんだね」と返されてしまいました。
その瞬間、私の中にあった何かが音を立てて崩れていくのを感じました。
ああ、やっぱり私には無理なのか、と諦めかけたその時でした。
一人の女性が私の前に現れたのです。
彼女は私を見るなりこう言いました。
「あら、あなたはいつもニコニコしていて気持ち悪いわねぇ」と。
それはまさしく天の声でした。
その一言により私の心に光が差し込み、希望の火が灯ったのです。
ありがとう、感謝、ご機嫌伺い、愛想笑い、媚びへつらい、追従、謙遜、自己犠牲、同情、献身、従順、服従、忠誠、義務感、名誉欲、忠誠心、自負心、承認欲求、責任感、罪悪感、劣等感、羞恥心、良心の咎め。
病名:狂騒曲病 近年、ここ日本で奇妙な病気が発見される。発病した人間には、ある感情を抱いた時に、周りで突然騒音が発生するという症状が現れる。更に発病すると体が石のように硬直し動かせなくなる。そして、次第に呼吸困難に陥り死んでしまう。
苦しみ……
恐怖……
止まらない悪夢……
白昼夢……
幻覚……
絶望的な光景……
そして……希望。
真っ暗な闇の中で……
彼女の歌声だけが響いていた……。
それはまるで……天使のようで……
彼女は歌うことをやめなかった。
壊れたレコードの様に繰り返される旋律。それは、ただの音痴の独唱歌。
音程の狂ったメロディライン。
もう、何もかもが遅いんだろう? そうさ。今更何をしたところで無意味だ。……ああそうだとも。俺だって本当は分かっていた。
だがそれでも、この胸に宿る熱だけは否定できない。
だから俺は、最後の最後まで足掻いてみせる。
例えそれがどんな結末になろうとも。
お前達には分からないだろう? その笑顔の裏でどれだけの涙が流れてきたのかなんて。
だが、それで良いんだ。
きっとお前達は知らないままの方が幸せな筈だから。
これは俺が勝手に始めた戦いの物語。