コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝、反射の様に目が覚める。
カーテンの隙間から見える光に早く起きろと急かされるが、体は重いし、動けそうもない。
また今日が始まる。始まってしまう。
これ以上見たくもない現実に、自ら飛び込む。
kn「はぁ…」
いつも通り溜息を零してから、なんとか体勢を起こし、壁に掛かった制服を眺める。
少しどころか、だいぶ汚れたブレザー。
真っ白なシャツ。
縒れたネクタイ。
これが、自分。
まるで鏡に写したかのような有り様。
ひとけのないリビングに向かうと、ラップのかかった朝食が置かれていた。
「レンチンして食べてね。気をつけていってらっしゃい」
と書かれた紙切れを横目に、ラップを外す。
温めもせずに椅子に座り、「いただきます」と小さい声で呟く。
朝にそんな余裕がある訳がない。
なんなら、いらない。
でも、食べないと流石に申し訳がなくて、食べたくなくても食べる。
味噌汁を持つ手が、いつもに増して震えている。
kn「こんくらい鍋に入れといてよ…」
当たり前に冷めきっていた味噌汁は、食欲がない時に食べるものではなさった。
頭が悪い母親だ。
汁物はよそわなくていい。
電子レンジで温めるようなものでもない。
それを言うつもりは一切ないけれど。
時計の針は絶やさず動いているというのに、自分の体は動こうとしない。
箸を持つ手が止まり、何かが押し寄せてくる感覚が自分を襲う。
ほぼ事務作業の様なものだ。
何か考える前にトイレに駆け込んでいるし、気づいた時にはへたり込んでいる。
kn「ぅッお”えッ…」
息がしにくい。
喉あたりが痛くて、酸の味だけが口内に残る。
それでもまだ身体は満足していない。
空気を吸って吐きたいのに、出てくるのは液体だけ。
まだ味噌汁しか飲んでいないから、胃は空っぽ。
kn「はぁ…」
吐くだけ吐いたら、もう何も残るものはない。
適当に片付ければ、何もなかったかの様なトイレに戻る。
リビングに戻ってもやっぱり食欲はなくて、でも今度は体が勝手に動いて。
あんなに吐いた後の食事なんて、美味しくもないし痛い。
最近朝に吐きすぎて、喉がいかれている。
かと言って止められるものではないから抗わずに吐くけれど。
温めずに食べた白米や焼き魚、お浸し、煮付け。
朝に食べるには、やっぱり重すぎた。
明日から朝食はいらないとでも言っておこうか。
食器をシンクに置き、軽く水を溜める。
kn「ぅ、」
咄嗟に口を押さえて、その場にしゃがみ込んだ。
早く消えろ、と念じながら。
でも家を出なければならない時間は刻一刻と迫ってきていて、時計の針の音が急かしてくる。
全部拒絶したいが、なんとか立ち上がり部屋まで歩く。
その足取りは、少しずつ遅くなっていく。
ようやく辿り着いた頃には、何故か疲弊しきっていた。
ゆっくりとシャツを手に取り、もうこれ何枚目だっけな、だなんて思いながら、ベッドに投げる。
部屋着を脱いで、標準服に着替え始める。
ズボンもネクタイも、ブレザーも全てシャツとは真逆。
きっと、また今日も汚れる。
クリーニングに出したってすぐ元通りなら、そのままでいい。
ふと、前よりも制服が大きく感じるような気がした。
痩せたのかな、なんて思ったって、ちっとも嬉しくない。
洗面台に立った自分の顔は、酷かった。
まるで死んだ魚の様、とでも言うべきか。
顔には傷がない。
なぜかはわからないけれど。
顔を洗い、歯を磨いても、意味がないように感じる。
そんなこんなで今日も家を出る時間になり、手を引かれる様に玄関のドアに手をかける。
片手にある鞄も汚れていて、あぁ、無様だな、なんて。
いってきますだなんて言えるわけもなく、静かに家を後にした。