テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夏の初め、暑苦しい空気が体にかかる。
校門。
鉄柵は 歪み、校名プレートは亀裂が入っている。
「男子・彗嶺鬼学園」と書かれたプレートの下には、細い縄のようなツタがまとわりついていた。
______________________
廊下。
机が倒れ、壁には所々ラクガキがされてあるのを、一部の教師たちが遠巻きに見て話している。
『…今年の番ランも、上位3人は確定でしょうね。』
『1人は赤髪の桐ケ谷でしょう?…あいつ、昨日もトラブルがあったそうですよ、まったく…。』
『ほんとですか?はぁ、…それにしても、あいついつも冷たいですよね。』
『怖いというか、笑ったところすら見たことないですし…。』
そんな話をしながら、それぞれの教室に散っていく。
3年A組。
「ガララッ」と音を立てて教室のドアが開くと、相変わらずガヤガヤと騒がしい教室に1つの声が響く。
「ごぉらお前ら!!静かにしろ!!!」
野太い声が響き渡り、その声の主が豪雷だと分かると、クラスの者は次々と言葉数を減らす。
静かになったことを確認すると、教卓に立って話し始める。
「ふん、今からホームルームを始める。立て。」
生徒たちが面倒くさそうにしながら立ち上がる中、1人の生徒だけが机に突っ伏したまま動かないのが見える。
もちろん豪雷が見逃すわけもなく、大きな声が耳に突き刺さる。
「ごぉら臣!起きらんか!!」
臣、と呼ばれた生徒は寝ているのか、それでも起きず、隣の生徒が起こそうと声をかけている。
『お、おい桐ヶ谷。豪雷来てるぞ。』
そんな様子を見ていた豪雷はドスドスと足音を立てて臣の席に近づく。
「臣!まだ寝てるのか!!早く起きろ!!」
「……あ?」
豪雷の声に顔をしかめながら体を起こす。気だるげな目で豪雷を捉えると、小さく悪態をつく。
「…チッ、起きた、これでいいだろ。」
素っ気なく返すと、豪雷はなにか言おうとする。
…が、その前に教室の扉がバンッと勢いよく開けられる。
教室にいる全員が声の主に目をやると、そこには、明らかに柄の悪い大柄の男が立っていた。
『おい、桐ヶ谷 臣ってやつ。いるか?』
『まただよ…番ラン狩り、』
『こえ〜…』
頬や首元には、傷跡があるのが見て取れる。
そんな突然の男の登場に戸惑うことなく豪雷は言う。
「うちのクラスに何の用だ。今はホームルーム中だぞ。」
豪雷は低い声で言うと、男を鋭い目で見据える。
だが男は怯むことなくクラス中を見渡し、目的の桐ヶ谷を探す。
「…俺がなんだよ。」
臣が自分から出てくると、男は獲物を見つけた笑みを深める。そして教室に足を踏み入れ、臣の席に近づく。
だが、それを豪雷が許すはずもなく、すかさず間に入る。
「おいクソガキ、どういうつもりだ。」
『あ?クソガキだと?さっきからうるせぇんだよゴリラが。静かにしてろ!』
男が豪雷に拳を振り上げる。
その時 ___ 、
ガタッ、と臣が立ち上がる。
「どけゴリラ。俺に用があんだろ。」
冷たい声で一貫すると、前に出る。
「で?…要件は?」
臣は後ろで豪雷が 「ご、ゴリラだと…?!」とわなわなしてるのを無視して男を見つめている。
『…ははっ、わざわざ出てきてくれてありがとうなぁ?』
ネチネチと子気味悪く笑いながら言うと、
『分かんだろ?…番ラン狩りだよ。』
と、突然温度が下がるような冷えきった声が響いた。
「…無理だな。」
そう言うと、また一段と教室の温度が下がる。
『…..無理?あぁ、そうかよ。』
冷え切った声で短く言う男。すると突然、”ゴッ”と鈍い音が鳴った。
男が臣の頬を殴ったのだ。
「…ぺっ、」
血の混じった唾をぺっと吐き出して男を睨みつける。口の中を切ったようだ。
『はっ…これでもやらねぇってか?あ?』
「チッ、」
臣が舌打ちをして1歩前に出ようとした、その時、後ろでわなわな震えていた豪雷が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「お前ら…ッ!やめろっつってんだろッッ!!」
またもやゴッ、と鈍い音が教室に広がると、今度は豪雷が男を殴ったらしい。頭を殴られた男はグルンッと目を上に向かせて倒れる。
『か、はっ..』バタッ、
「はぁ…臣、お前もだぞ!なんで避けなかったんだ!!避けれただろう!!」
臣は相変わらず淡々とした様子で、豪雷の声に顔をしかめながら言う。
「うるせぇ黙れゴリラ。」
「…なっ、!!?」
豪雷が目を見開いて言葉に詰まらせ、やがてわなわなと肩を震わせながら俯いたと思うと…
「このッ…いい加減にしろォッ!!」
バッと真っ赤になった顔を上げた豪雷の怒号が教室中…いや学校中に響いた。
____________
_放課後_
帰りのホームルーム。
いつもなら寝ている臣が起きていた。
やがてホームルームが終わり臣は席を立つと、教室を出て廊下を歩く。
「臣。」
聞き覚えのある声に臣は足を止めゆっくりと振り返る。
「…なんだ、」
案の定、豪雷が立っていた。朝のホームルームで怒っていた表情は消え失せ、少し真剣な顔で臣を見据えていた。
「ちょっと来い。お前、最近問題行動が多すぎる。」
臣の目が一瞬見開かれるが、すぐにいつもの無表情に戻る。
「無理だ。帰る。」
「………なんだと?」
…無理?こいつは何を言っているんだ。
豪雷が眉間にシワを寄せ、臣を見つめていると、
「今日は無理だ。俺は帰るぞ。」
まただ。また突き放すような言い方をして背を向けて去ろうとする。だから、豪雷は臣の腕を掴んで阻止した。
__だがそれも、バチッと振り払われる。
豪雷はまだビリビリと残る払われた手の感触を感じながら、ぽかんと診断を見つめることしか出来ない。
「…俺に触んな。」
それが合図だった。我慢していた豪雷の堪忍袋の緒が切れる。
「…あぁ”?」
低い声で唸ると、ドンッと臣を壁に押し付け、近距離で睨みつける。
「おい…いつまで調子のってる気だ?大人しく着いて来いっつってんだよ!」
荒々しい豪雷を前に臣は表情も変えず、断り続ける。
やがて豪雷はなんでこうも伝わらないのかとでも言うように顔をしかめ言う。
「ッ..はぁ、クソ。埒が明かねぇな。」
「…なんで無理なんだよ。」
臣は一瞬黙り込むが、すぐに用事があるとだけ答える。
だが豪雷はそれだけで済ませない。
「用事?なんの用事だ。また喧嘩とかだったらいい加減にしろよ。問題を起こすな。」
「喧嘩じゃねぇ。」
「はぁ?じゃあなんだよ!言ってみろ!!」
それに臣は言葉を詰まらせる。やはり何があるかは言いたくないようだ。
「…言わねぇと通さない。絶対にだ。」
「はぁ?ふざけんな。」
豪雷はそれでも退かずに臣を壁に追い込んでいる。
「…チッ、クソ。」
「なんだ、やっと言う気になったか?」
どうせくだらない理由だろうと思いながら答えを待つ。
だが、臣から出た答えに俺は呆然とする。
「__妹、迎えに行くんだよ。」
「_______は?」