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記憶のない蓮が、無意識に拓実に惹かれていく。
蓮の退院が決まった。
拓実の提案で、リハビリを兼ねて拓実の家に滞在することになった。
JO1のマンションは、蓮に刺激が強すぎるかもしれないという配慮だった。
拓実の部屋は、どこか懐かしい匂いがした。
蓮は、拓実が淹れてくれた温かいお茶を飲みながら、部屋の中を見回した。
壁には、見慣れない写真が飾ってあった。
それは、拓実と蓮が寄り添って笑っている写真だった。
「これ、俺…?」
蓮が尋ねると、拓実は優しく微笑んで答えた。
「うん、そうだよ」
蓮は、拓実と過ごす日々の中で、少しずつ変化していった。
記憶はないけれど、彼のことをもっと知りたいと思うようになった。
拓実が料理をする様子、好きな音楽を口ずさむ姿、そして、ふとした瞬間に見せる、寂しそうな表情。
蓮は、そのすべてに心を奪われていった。
ある日の午後、拓実は蓮に、昔のJO1のパフォーマンス映像を見せた。
蓮は、画面に映る自分のダンスに、驚きを隠せない。
「…俺、こんなに激しく踊れたんだ」
「うん。蓮くんは、ダンスが大好きで、誰よりも上手かった」
拓実がそう言うと、蓮の体が無意識に動き出した。
画面に映る自分と同じように、指先から足先まで、完璧な動きを再現した。
その姿を見た拓実の目に、再び涙が浮かんだ。
「…拓実くん、なんで泣いてるの?」
蓮の問いに、拓実は何も答えられなかった。
ただ、蓮のダンスが、過去の彼を思い出させて、懐かしさと、切なさが入り混じった感情が溢れてきたからだ。
その夜、蓮は拓実に尋ねた。
「俺たちは、どうして一緒にいるの?俺には、まだ君のことがわからないのに」
拓実は、蓮の瞳を真っ直ぐ見つめて言った。
「俺が、蓮くんを愛してるからだよ」
蓮は、その言葉に戸惑った表情を見せた。
愛?自分は、この人のことを何も知らないのに。
そんな感情が、蓮の瞳に浮かんでいた。