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ぬいぬい
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「……待っていたよ、執筆者くん」
ランタンの淡い光の中に浮かんできたのは、古風なハンチング帽を深くかぶり、絵の具の匂いを漂わせた小柄な人物だった。
その指先には、落ちない黒いインクの染みが幾重にも重なっている。
「僕は『校正者』。
世界の原稿に紛れ込んだ『致命的な誤植』を削り取り、正しく正すのが僕の役目だ」
校正者は手に持った小さな鉄筆をクルリと回すと、霧で霞む巨大な摩周丸を見上げた。
「この船にはね、かつて津軽海峡の冷たい海に沈んでいった人々の、果てしない悔いや未練が『誤字』となって付着している。尊はここに来るたび、その膨大な文字の削り残しを、自分の身を削って消し去っていったんだよ」
校正者はポケットから、使い古された小さな消しゴムを取り出し、僕に見せた。
「だけどね、執筆者くん。消しても消しても、人間の未練は湧き出してくる。君が継ごうとしている物語は、そういう終わりなき『推敲』の地獄なんだ。それでも君は、この鉛筆を握り続けるかい?」
「……ああ」
僕は手の中のルービックキューブを強く握りしめた。
「あの人が必死で消そうとしたノイズも、残そうとした物語も、僕が全部受け止めて校正してみせる。だから、次の手がかりを渡してくれ」
校正者は一瞬驚いたように目を見開いたが、やがて楽しそうに口元を緩めた。
「いい度胸だ。尊が君を相棒に選んだ理由が、少し分かった気がするよ」
彼が鉄筆で空を切ると、濃霧が一瞬でサッと破れ、摩周丸の古い甲板の上に、一筋の赤い線が浮かび上がった。
「僕が預かっている尊の『初稿』は、あの船の操舵室にある。さあ、登っておいで――僕の校正に耐えられたら、君に三枚目の頁をあげよう」
校正者の挑戦的な言葉とともに、甲板へと続く古いタラップが、重い音を立てて静かに揺れ始めた。
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てかさ空白の、、、を…にしたんよ
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