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恋の季節を越えて

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恋の季節を越えて

11 - すれ違う心、届かない言葉

2025年04月23日

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気付けば体育祭の翌日だった。曇り空の下、校舎裏のベンチに腰かけていた陽のもとへ、澪が歩いてくる。


「昨日のリレー、かっこよかったよ」


そう言って笑う澪に、陽はぎこちなく微笑み返した。


「……ありがとう。でも、最後のバトン、ちょっと遅れたなって」


「ううん、ちゃんと受け取ってた。気づいてるでしょ、みんなの目も、私の目も、陽くんをちゃんと見てたんだよ」


その言葉に、陽は何かを言いかけたが、ふいに別の足音が近づく。


「やっぱりいた、佐伯さん」


現れたのは片桐悠真。体育祭で騎馬戦の主将を務めた彼は、汗ひとつかいていないような顔で笑う。


「ちょっと、いい? 昨日の写真、送ろうと思って」


「……うん、ありがとう」


澪がスマホを受け取ろうとしたそのとき、片桐はあえて陽の方へ視線を投げた。


「風間、昨日はお疲れ。あ、リレー……惜しかったね」


その言い方に、陽は目を伏せた。

澪はそんな二人の間に、ふとした違和感を覚える。


片桐はそのままスマホを渡すと、何事もなかったように去っていった。

後に残されたのは、重たい沈黙。


「……ごめんね、あんな言い方されて」


「別に、慣れてるから。俺のこと、別に気にしなくていいよ」


その一言に、澪の胸が少しだけ痛んだ。

“気にしなくていい”なんて、そんな距離じゃなかったはずなのに。


放課後、帰り道。


陽が図書館に立ち寄ると、そこには柚葉の姿があった。

静かに本を開いているその姿を見て、陽は声をかける。


「お、柚葉ちゃん」


「風間先輩……あ、こんにちはっ」


柚葉は少し慌てながらも笑顔を見せる。


「今日は何の本?」


「えっと、推薦入試の小論文集です。まだ受けるか決めてないけど、見ておこうかなって」


「えらいな。俺はそっち系まだ全然だから、逆に教えてほしいくらい」


「ふふっ、先輩に教えるなんて、まだ早いですよ」


そんな会話の中、柚葉は陽の顔をじっと見つめた。

その瞳に宿る小さな迷いに、陽は気づかない。


一方、藤堂花は、教室の窓辺でノートをめくりながら、小さくつぶやく。


「……風間くん、最近ちょっと元気ない?」


そう言って、そっとペンを置いた。

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