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22歳軸オメガバース。
久々に通知が来て胸を躍らせて確認したらフォロバの人の投稿通知だった時の顔
(´・ω・`)…ヨムカ
でもうこう言う時に限って神投稿だったりするのが唯一の救い
ヨコハマの海風は、冬の気配を孕んで鋭く冷たい。二十二歳になった彼らは、もはや「双黒」という伝説の亡霊ではなく、それぞれが組織の重鎮として、あるいは守護者として、別々の光と影の中に立っていた。
しかし、今夜だけは違う。
任務での不慮の事故。太宰が飲み込んだ異能の残滓が、彼の中に眠っていたオメガとしての脆弱さを、暴力的なまでの熱と共に引きずり出した。古い廃ビルの屋上。月明かりに照らされた太宰は、コンクリートの上に崩れ、自身の吐息で視界を白く染めている。
「……ッ、ハ、……あぁ、本当に、最悪だ……」
太宰の声は、高熱に浮かされたように震えていた。 その体から溢れ出すフェロモンは、もはや制御不能な暴力だ。甘く、苦く、神経を逆撫でするような死の香りが、追いかけてきた中原中也の理性を、猛獣のように食い破ろうとする。
「……太宰。お前、これ……もう『薬』じゃ止まらねぇぞ」
中也の声は、地を這うような低音だった。アルファとしての彼の本能は、眼前の獲物を組み伏せ、そのうなじを噛み砕けと絶叫している。だが、中也は自らの重力を自分自身に叩きつけるようにして、その場に踏みとどまった。
太宰は潤んだ瞳で中也を見上げる。その瞳の奥には、生理的な熱に抗いきれない自分への嫌悪と、そしてそれ以上に深い、「この男にだけは、すべてを見透かされている」という諦念が混ざり合っていた。
「分かってるよ……中也が言いたいことくらい。……君という野蛮なアルファに、私の『永遠』を切り売りしろって言うんだろう? 傲慢だね、本当に、救いようがない」
「あぁ、傲慢だよ。だが、お前が今、その熱を他人の手で散らされるくらいなら舌を噛み切って死ぬってことも、俺は知ってんだよ」
中也は一歩、また一歩と距離を詰める。 太宰は逃げなかった。逃げられたはずなのに、彼は震える指先で中也のシャツの襟を掴み、自分の方へと引き寄せた。
「……嫌いだよ、中也。君のその、私を理解しているつもりの顔も、……私を繋ぎ止めて放さない、その忌々しい重力も」
「知ってるよ。……俺も、お前のその減らず口だけは死んでも好きになれねぇ」
二人の距離が、ゼロになる。 太宰の白い首筋が、月光の下で無防備に晒された。 そこにあるのは、かつて巻かれていた包帯ではなく、剥き出しの、熱を帯びた、一人の「男」としての皮膚だ。
太宰は中也の肩に顔を埋め、その強いアルファの匂いを、肺が焼けるほど深く吸い込んだ。
「……噛んでいいよ。……中也になら、……呪われてあげてもいい」
それは、太宰治が絞り出した、生涯で唯一の「降伏」だった。
中也の犬歯が、太宰のうなじの柔らかな皮膚に触れる。 次の瞬間、鋭い痛みが走り、二人の魂を不可逆的な鎖で繋ぎ合わせた。
「あ、……っ、あぁ!!」
太宰の指が中也の背中に食い込む。激痛と、それを遥かに凌駕する圧倒的な充足感が、全身の血液を沸騰させた。 アルファの牙が、オメガの腺に深く刻み込まれる。それは「番」という名の、世界で最も閉鎖的で、最も強固な共依存の完成だった。
やがて中也が口を離すと、太宰の目元には涙が滲み、その瞳は熱に溶け、ただ一点、自分を抱きしめる男だけを映していた。
「……おめでとう太宰。これで一生、お前は俺から逃げらんねぇ。死ぬ時も、地獄に行く時も、お前の魂には俺の印が刻まれてんだ」
中也は荒い息をつきながら、太宰の額を自分の額に押し当てた。 太宰は、乱れた呼吸の中で、力なく、けれど確かに笑った。
「……最悪だね。……こんな、……自由のない世界に私を閉じ込めるなんて。……でも、まぁ。……中也が看守なら、……それも悪くないかもしれないよ」
嫌い合っている。反吐が出るほど憎み合っている。 けれど、彼らはお互いの欠落した部分を、牙と爪で補完し合うようにして、一つの「獣」になった。
ヨコハマの夜。 月は高く、二人の影は重なり合い、もう二度と離れることのない不滅の形を描き出していた。