テラーノベル
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数時間前とはまるで違う色の景色が流れていく。
准は運転しながら、夜空に浮かぶ月を一瞥した。
生まれてから、気付けば二十七年。もう二十七年なのか、まだ二十七年なのか、微妙な数字に囚われる日々だ。
人と関わるのは怠かったり気まずかったり、笑い合ったり怒鳴り合ったり、正直ものすごい疲れる。────から、時々ちゃんと休まなきゃいけないんだと思う。
目が眩んで道に迷ったら立ち止まって、座り込んでしまえばいい。今は休んでほしいと思う人達がたくさんいる。
例えば隣の席ですっかり寝てる彼とか。
真面目過ぎて行き詰まっちゃった彼とか。
常識に囚われて諦めてしまった彼女とか。
休んだっていい。身体ではなく、心の休養が必要な時が絶対にくる。人の人生は、一度も立ち止まらず完走するにはあまりに長いから。
「星は……さすがに見えないな」
車の中から夜空を見て笑った。でも隣の彼は起きる気配がない。
このまま家までぐっすり寝てくれてるといい。起きたら、それはそれでうるさいし。
無事に帰ったら、また大きすぎるベッドに二人で寝よう。
俺も少しばかり休みが欲しい。
やらなきゃいけないことや、守らなきゃいけないこと。久しぶりに、全部忘れてみようか。
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