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#3




保護都市の街は、いつも通り真っ白だ。

人口が多い為、色々な管理役の魂が管理している。


街には公園や売店があり、魂同士で街はワチャワチャと賑わっている。

お互いの魂を追いかける者、楽しく笑みを浮かべ会話が盛り上がってる魂達の姿が目に見えて分かった。





「そう、ここの辺りにあると思うのだけれど…」

そう女性は言い、人気の無さげな公園でそれを探し彷徨っていた。


「あれえ、どこだったっけなあ……」


遊具の下を這いつくばって覗いたり、木々が生え揃った中に物色したが全く見つかることは無かった。


「――あの…」


そろそろ アタフタしている姿は、もう見飽きた。


「その…」


女性はどうしたの、と言いたげに首を傾け、そんな姿から斜め下に視線をやり、問いた。


「その、凄く大切な落とした物って…」

「ああ、そういえば言ってなかったわね」


そう答えた後に背中を向け、木々の下、止めていた歩が進み出した。


「――私が落とした、凄く大切な物とは名刺よ」


カサカサと、歩く落ち葉の音と共に女性の透き通った声が重なった。


「名刺?」


「ええ。」という声と共に、歩を止めた。

ヒラヒラと散る葉が成った木を懐かしい様に、どこか寂しげに見上げながら言った。


「前世のママに付けて貰った初めての名前なの」


風邪が吹いて、木の葉がカサカサと揺れる。


「――名前、ですか」


「私の初めてのママで、初めての人生のスタートだったのよ」


女性は懐かしい様に語る。


「右も左も分からなかった頃の私に、色々なことを教えて貰って、色々なことをさせて貰ったわ」


「⋯そう、なんですね」


「凄く良い思い出があの名刺にはあって、私の全てが詰まってる」


そう続けて女性は振り向き、手入れの行き届いている茶色い髪を靡かせこう言った。


「まあ、そんな大事なものを落としてしまったのだけれどね」


そう、その女性は苦笑の笑みを私に向けた。

――私には、その笑みが輝いて見えた。

凄く自然で、綺麗で整った笑顔に、少しばかり妬ましくなった。

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