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第6話:カオスな共同生活、開幕
「さあ! 聖域(シェアハウス)の掃除は完了! 多聞くん、のパンツは私が預かった!!」
「姉さん……それ、普通に変質者。……通報されるよ」
新しく用意された一軒家のリビング。
ユズルはソファに沈み込みながら、洗濯物カゴを抱えて絶叫するウタゲを冷めた目で見つめていた。
F/ACEのメンバーとユズル、そして「おまけ(最強の戦力)」のウタゲ。
奇妙な共同生活が始まった。
「……あー。……多聞くん。……その、メロディ。……ちょっと、高い。……僕の、耳が、キーンってする」
「あ、ごめんユズルくん! すぐ下げるね。……こうかな?」
ダイニングテーブルは、今や機材だらけの作業場と化している。
ユズルがノートPCで波形をいじり、その隣で多聞が真剣にハミングを重ねる。
正体がバレて吹っ切れたユズルは、音楽に関しては容赦がない。
「……違う。……もっと、こう……ジメジメした感じで。……湿気、足りない」
「湿気!? ……う、うん。頑張る……!」
多聞はユズルの独特すぎるディレクションに必死に食らいついていく。
「おいユズル! メシだぞ! ウタゲさんが作った……って、また寝てんのかテメェ!」
キッチンから現れた桜利が、作業中に寝落ちしたユズルの頭を小突く。
ユズルは「……んッ。……桜利さん。……ハンバーグ。……一口、食べさせて」と、目を閉じたまま口を開ける。
「あー……もー、マジで手がかかるな……ほらよ」
文句を言いながらも、桜利は箸でハンバーグをユズルの口に運んでやる。
「……ん。……美味しい。……姉さん、味付け、変えた? ……あ。……桜利さんの、食べかけ、だった」
「気付くのが遅ぇよ!!」
その様子を、ウタゲが物陰からスマホで連写していた。
「ユズル……アンタ、前世でどんな徳を積んだの……。推しに餌付けされる弟……尊すぎて、心臓が……っ!」
「……姉さん。……シャッター音、うるさい。……消して」
夜になると、リビングの照明を落とし、全員でユズルの作ったデモ音源を聴くのが日課になった。
ユズルの気だるい歌声に、多聞の繊細なコーラスが重なる。
「……これ、すごいね。……僕たちの声、すごく合ってる気がする」
多聞がポツリと呟くと、ユズルはヘッドホンを片耳だけ外して、少しだけ口角を上げた。
「……ん。……多聞くんの声、いいよ。……僕の、毒を……ちょうどよく、中和してくれる。……あと。……おやすみ」
そのまま多聞の膝に頭を預けて、本気で寝始めるユズル。
「えっ、ちょっ……ユズルくん!?」
赤面する多聞と、「そこ代われ!!」と叫ぶウタゲ。
無気力な天才・ユズルを中心に、F/ACEの日常はどんどんかき乱され、そしてかつてない「新しい音」が生まれようとしていた。