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合同合宿3日目。陽が出て間もなくの時間帯から特訓を開始。昨日に引き続き個性を伸ばす。違うのは補習組が更に厳しくなっていること、そして今日の夜は特別イベントが待ち構えていることだけ。
「…さて!腹もふくれた、皿も洗った!お次は……」
「肝を試す時間だー」
「「「試してぇ!!」」」
「その前に、大変心苦しいが補習連中は…これから俺と補習授業だ」
「嘘だろ!!?」
「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので、こっちを削る」
「うわああ!堪忍してくれぇ!!」
「試させてくれぇ!!」
飛び上がっていた補習組は一瞬にして絶望し、捕縛帯によって引きずられていく。そんないいの?肝試し………
肝試しは脅かす側の先攻がB組。A組は大体二人一組で3分置きに出発。一周およそ15分のルートの中間地点に名前を書いた札を持って帰る。脅かす側は直接接触は厳禁だが、個性を使って仕掛けてくるらしい。
「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!!」
「止めて下さい汚い……」
「なるほど!競争させることでアイデアを推敲させ、その結果個性に更なる幅が生まれるというワケか!さすが雄英!!」
「さァくじ引きでパートナーを決めるよ!!」
さっさと行ってさっさと終わらせるか。くじを引いて書かれたのは1人
グシャッと思わず紙を握りつぶした。
「それじゃあ3組目の1人!GO!」
月明かりしかない夜の森に足を踏み入れる。
突っ込んで終わらせたくてスタスタと歩く。夜の森は怖いか?と問われると違うわね。夜の森はそこまで怖くない海賊は上陸した島の環境を選べないからいちいち怖がってられないから、月明かりしかない森は慣れてる。暗い分神経使うし、耳から入る音が敏感になる。だからこんな遊びで警戒する必要なかったし、誤って手が出ないようにしていたつもりだったけど…
ガッ!
「ふがっ!」
「?ごめんね💦」
地面から顔を出していたB組の頭を踏んでた。気まずく思いながら足を退ける。いや、わざとじゃないし。殺気なかったし、そんなとこにいるのが悪いもん
「怪我はない?」
「うぅ〜ひどい」
「怪我あったら先生に見てもらって?」
「いや、このぐらい大丈夫だよ。うん、気をつけてね」
「あぁ、ほんとごめんね」
その後B組の脅しをスルーして歩き、中間地点にある札を取ってゴール地点に向かう。
「もう半分…短いわね」
スンスン、と鼻を嗅ぐと焦げ臭い匂い。木々の間から薄紫をした煙が見える。この匂い、煙の色からして有毒ガス。煙を吸わないようにしてたら脳内に声が響く。
『みんな!!敵二名襲来!!他にも複数いる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず撤退を!』
「めんどくさいわね…」
その瞬間…青色のガラス玉に閉じ込められた。油断はしてなかったけどガスに脳の動きを遅くする作用でもあったのか…向こうの隠密が凄いのか……捕まっちゃった★
【(呑気な事ね…)】
「どーしようかしら…」
ポテと頭から音がしたら小さいクマが居た。この小熊は体育祭で遊んで欲しいとオネダリしてた小熊で仮面ちゃんの相棒。クマリンちゃん
「クマリンちゃん?!」
【クマリンちゃんじゃん♡】
手のひらに収まる丸いソレは、私の言葉を理解していないのかコテリと傾げる。こんな危機的状況なのにクマリンちゃんの小さい指が呑気に指に絡みつくから気が抜ける。林間合宿初日から身体の方で頭が重いと思ってたけど、クマリンちゃんだったのね。
「頭重いって思ってたけどクマリンちゃんの仕業?」
私と仮面ちゃん、私達と同じ赤い目がじっと見つめる。
なんだろ、瞼がひどく重い。こんな状況なのに抗うことができず、赤く発光した瞳を最後に意識を落とした。
【ありがとクマリンちゃん♡】
《ワァ〜!》
ぽて、ぽて
横たわった船長に小さい手を屈指してよじ登る。元の場所にいた髪の中へと戻った。
夜の激闘。敵が爆豪の回収に完了し撤退する。しかしそんな敵に諦めず、取り戻さんと動いた子ども達がいた。緑谷、轟、障子が捕えられた爆豪と常闇を躍起となって立ち向かった。
「右ポケットに入っていたこれが、常闇・爆豪だなエンターテイナー」
「障子くん!!」
障子の手の中にあるビー玉サイズの玉が2つ。
「ホホウ!あの短時間でよく…!さすが6本腕!!まさぐり上手め!」
「っし、でかした障子!!」
回収できたら撤退だと、緑谷達はすぐに来た道を戻ろうとする。しかしそんな甘い夢は打ち砕かれる。退路を防ぐ黒霧。障子が回収したと思っていた玉はダミーで、本物はMr.コンプレスの口の中。
「氷結攻撃の際にダミーを用意し、右ポケットに入れておいた」
「くっそ!!!」
「右手に持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したら、そりゃー嬉しくて走り出すさ」
「待ぁてええ!!」
「そんじゃー、お後がよろしいようで…」
ワープゲートに入ったMr.コンプレスはマジシャンのようにお辞儀する。もうダメかと思われた時、一筋の青い光がMr.コンプレスの仮面を割る。突然の衝撃に口を開き、3つの玉が吐き出された。
絶好のチャンス。3人は駆け出していたが緑谷は悶絶するほどの両腕の痛みでリタイア。障子が2つの玉を掴む。轟が最後の1つを捕らえようとしたが、爛れた手に奪われる。
「哀しいなぁ、轟焦凍」
轟を見下ろし、愉悦を含ませて嘲笑った。ワープゲートに既に沈んでいる敵に、ここで逃したらもう何もできない。
「確認だ。解除しろ」
「っだよ今のレーザー…俺のショウが台無しだ!」
パチン!と指が鳴る。障子の玉から出てきたのは常闇と爆豪。そして敵に首元を抑えられた霊華さん。
「問題、なし」
「霊華さん!!」
「……………」
霊華はそのまま敵と共にワープゲートに沈んだ。
「あ…_____っああ”!!!」
蒼炎に焼かれる木々に負けないぐらい、緑谷の悲痛が轟いた。
生徒42名のうち。
敵のガスによって意識不明の重体15名。
重軽傷者11名。
無傷15名。
行方不明1名。
プロヒーロー、6名のうち。
1名重体。
1名行方不明。
楽しみにしていた林間合宿は最悪な結果で幕を閉じた。