テラーノベル
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夜のリビング。テレビもつけず、静かな部屋の中で太智はソファに寝転がりながら、スマホで動画をぼんやりと眺めていた。
ふと、背後から気配を感じた次の瞬間。
ふわりと、仁人がその上に覆いかぶさってきた。
「……じんちゃん?」
スマホを胸の上に落とし、戸惑いながらも太智が声をかけると、仁人はまっすぐにその瞳を見つめてきた。
「太智……」
仁人が、低く落ち着いた声で呼ぶ。
「……ねえ、俺、太智のこと好きだよ。……太智はさ、俺のこと、ちゃんと好き?」
その問いかけは、胸に刺さるほど真剣だった。
こんな体勢やったら、すぐ押し倒し返せるのに。 そんなことも気ぃつかんと、「好き」って言葉を求めてくるじんちゃんが、ほんまに無防備で、可愛い。
太智はゆっくりと手を伸ばして、仁人の頬にそっと触れた。
指先に触れたその熱が、彼の不安を物語っている。
「……好きやで。めっちゃ好きや。愛してる。じんちゃんのこと、俺だけのもんにしたいって思うくらい、好きや。」
一言ずつ、ちゃんと届けるように、丁寧に。
太智の声が部屋に響くたび、仁人の肩の力が抜けていく。
ふっと緩んだ笑顔。
でも、それも束の間──
「……急にこんなことして、ごめんな?」
顔を真っ赤にして、照れたように目を逸らす仁人。 そのまま逃げるように立ち上がろうとしたその腕を、太智はすかさず引き留めた。
「どこ行くん? 逃がすわけないやん」
引き戻して、今度は太智が上になる番。
ソファに優しく押し倒して、仁人の髪をそっと撫でる。
そして、ふわりと唇を重ねた。
最初は触れるだけのキス。
けど、次第に深く、舌を絡めると、仁人の体がかすかに震えた。
唇が離れても、視線は絡んだまま。
「……じんちゃん、ごめんな」
太智が優しく囁いた。
「今夜は……寝かしてあげられへんかもしれんわ」
仁人は目を閉じ、何も言わずに太智の胸に顔を埋めた。
ソファの上で、唇を重ねたまま時間が止まる。
熱を含んだキスの余韻に、仁人の肩が震える。
太智はゆっくりと唇を離して、彼の頬にまた触れた。
火照った肌。赤く染まった耳。少し潤んだ瞳。
「なあ、じんちゃん……なんで急に、あんなこと聞いてきたん?」
仁人は小さく瞬きをしてから、そっぽを向いた。
「……なんとなく。不安になっただけ」
「俺のこと、信じてないん?」
「違う。……信じてるよ。でも……たまに不安になるんだよ。太智、他の子にも……優しいし……」
そこまで言ったところで、仁人は言葉を飲み込んだ。
太智はふっと笑って、指先で仁人の唇をそっとなぞる。
「アホやな。俺がどんだけじんちゃんのこと好きか、ちゃんとわからせたるって言うたやん」
そう言って、もう一度、深くキスを重ねた。
唇を舐めるように、焦らすように。
絡めた舌が、甘く音を立てるたびに、仁人の呼吸が乱れていく。
「……っ、太智、ソファ狭い……」
「せやな。でももう、むり」
太智は仁人の耳元で囁き、ゆっくりと首筋に唇を落とした。
優しく、けれど離さないように、丁寧に愛していく。
その夜、仁人が寝室に戻ることはなかった。
翌朝
カーテンの隙間から差し込む朝日。
リビングのソファには、ブランケットに包まったふたりが寄り添うように眠っていた。
仁人が先に目を覚ます。
視界の端に映る太智の寝顔は、どこまでも穏やかで、すこし子どもみたいに無防備だった。
「……昨日、やっぱり寝かせてくれんかったやん」
ぽそっと呟いて、頬を染める仁人。
けど、その頬にはどこか幸せそうなゆるみもある。
すると、目を閉じたままの太智が、ふいに口を開いた。
「……だって、俺のこと信じてへん言うたやん。証明せなな……?」
「うわ、起きてたんだ……っ」
「んー……まだ寝ぼけとる。けど、じんちゃんのことはちゃんと覚えとる」
太智は腕を伸ばして、仁人を自分の胸元にぐいっと引き寄せた。
「朝も……ちょっとだけ、証明してもええ?」
「……っ、ダメだろっ!ほんとに仕事遅れる……!」
そう言いながらも、仁人は太智の胸の中で動けなくなっていた。
甘い体温に包まれたまま、ふたりだけの朝が、静かに始まっていく。
コメント
1件
うわわ!最高🤦♀️