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9 - 第9話 お願いだから(番外編)

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2025年11月01日

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side渡辺


どこでそんな知識を覚えたのかなんて、もうわからない

けど、どうやったらこの大好きな人の気が引けるだろうと考えた時に、それがパッと思いついた


何年も彼を見てきた

真面目で爽やかなイメージとは裏腹に、多分だけど、性に関する興味も深く、意外とムッツリだから、駆け引きが見え隠れする、煽られるような誘われ方は好きなはずだ

少しロマンチストでもあるから、ちょっとした知識に基づいた仕草や言動も、心に刺さるはず

俺のことは恥ずかしがり屋でストレートなアプローチが苦手だと思っているはずだから、ギャップにも心を打たれてくれたら嬉しい


俺は、もうすでに、何年もの片思いをぶちまけてしまって、失うものは何もないし、半ば諦めにも似た境地に至っていた

そこへ降って湧いたチャンスを目の前に恥も外聞もなかった



掌へのキスは『懇願』だ


(お願いだから)


(あべちゃん、俺を好きになってよ)

「あべちゃん、俺を好きになってよ」

万感の想いを込めて、大好きなその人をじっと見つめて、掌に口付けをする


あべちゃんが少し息を呑む

「……可愛らしいことするじゃん」

(…伝わってる?)

「この意味、あべちゃんなら分かるでしょ?」

込み上げてくる不安を抑え込んで、なんとか目を逸らさずに言葉を紡ぐ

「ん、今のはなかなかクるね」

あべちゃんの目の奥に少し、欲の炎が灯った気がする

(…もう一押し…このあと…あべちゃんが好きそうな反応……お願いだから響いて…)

「ふふん」

少し得意気に笑ってみせると、炎が大きくなる

(……成功かな…?もう、出し切っておこ)

「………撫でて?」

今度はそのまま瞼を閉じて、甘えるように手に頬を擦り寄せると、ぴくりと少し手が揺れた

「……かわいいね」

(…ビンゴだな……このパターンで攻めよう)


「おれ、がんばるから」

(覚悟しとけよ、あべちゃん)



そこからは、隠し通してきた反動でか、自分でも驚く程に大胆に、俺はあべちゃんへのアプローチを続けた

その度にあべちゃんが、少しずつ俺にハマっていくのがわかった


でも、そんな風に余裕な態度で好意を伝えるなんてことは、もともと得意なことではない

ずっと頑張っていたけど、最後には、余裕のあべちゃんに、あっさりと立場を逆転された

がっちりと体を抑え込まれて、甘すぎる声でゆっくりと愛を伝えられる時間は、嬉しかったけど、気を失うかと思うほどに恥ずかしかった


だけど、長年想い続けてきた大好きな人が手に入ったんだ

そんなことはどうでもよくなるくらいに幸せだった






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コメント

2

ユーザー

ああっ……可愛いよぉ…(悶) 私のバカなコメントには無理して返さなくて大丈夫っす笑

ユーザー
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