第33章「叫ぶ空、交差する記憶」
――影は消えた。だが、その残滓は確かに世界に亀裂を残していた。
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【目覚めの兆し】
場所はエラ・ノア神殿。
水晶の棺に静かに眠る“本物のウカビル”の胸に、淡い光が灯る。
セレナ「……光脈が……動いてる……!」
水晶の内部、ウカビルのまぶたが、わずかに震えた。
しかし彼はまだ、目を覚まさない。深い夢の中で、誰かと対話していた。
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【ウカビルの夢の中】
――空は白く、世界は何もない。
だがそこに、ひとりの影が立っていた。
ウカビル「……お前は、誰だ?」
???「私は“君の影”。君が捨てた破壊の意志。だが君がそれを否定するなら、私は実体を持つ」
影ウカビルは夢の中で、本物に語る。
影ウカビル「君は“英雄”と呼ばれていた。
だが英雄の裏側には、怒りも、悲しみも、憎しみもあったはずだ。
それを捨てた君に、果たして未来は創れるのか?」
ウカビルは拳を握る。
だが彼の答えはまだ出なかった――
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【ゲズとセレナの距離】
その夜、ゲズとセレナは神殿の庭で、星空を見上げていた。
ゲズ「……あいつ、本当にすごいよな。
あれだけの力を持って、なお“誰かを守るために”戦ったなんて」
セレナ「ゲズも同じよ」
「あなたが私を見ていてくれたから……私はずっと、壊れずにいられた」
ふたりは無言で手を取り合い、星の風の中で、静かに寄り添った。
ふと、セレナが頬に唇を寄せる。
セレナ「……ねぇ、ゲズ。
私、あなたの未来にいたい。どんな終わりが待っていても……一緒に、最後まで見たいの」
ゲズは、ゆっくりと頷いた。
ゲズ「俺もだよ、セレナ。お前がいるから、俺は俺でいられる」
ふたりの影が、月光の下でひとつに重なる。
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【不穏なる闇】
そのころ、遥か宇宙の果て。
ルシフェルの本拠地にて、黒い祭壇の上でひとつの報告が響いた。
配下「影ウカビル、喪失しました」
ルシフェルは微笑む。
ルシフェル「構わないわ。あれはあくまで“魂の鎖”……本体の覚醒には、もう少し時間がかかる」
ルシフェル「さあ、次は“本命”を動かすとしましょう。
彼が目覚めれば、この宇宙のバランスは……一気に傾く」
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