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第34章「英雄の魂、揺れる空」
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【夢の深層――ウカビルの記憶】
それは、静寂に包まれた世界だった。
光も音もない。
ただ、白い空間に浮かぶ“記憶の断片”だけが、静かに回っている。
少年のころのウカビル。
優しげな瞳の姉と笑い合う記憶。
剣を手にした日。
仲間を失った日。
そして、ルシフェルと対峙し、ただひとり戦場に立ったあの日――
ウカビル(俺は、どうしてあの日、振り返らなかった?
助けを求めていた声が、確かに……あったはずなのに……)
白い空間に、ふたりのウカビルが現れる。
ひとりは現在の彼。
もうひとりは、目に狂気を宿した“影”――
影ウカビル「お前が捨てたもの。それが俺だ。
光の名の下に、全てを斬り捨てた、お前自身の後悔だ」
ウカビルは、拳を握る。
ウカビル「……俺は、“あの日”を許していない。
自分が、誰よりも弱かったと、ようやく気づいた。
だが、今の俺なら、もう一度立てる気がするんだ」
影は微笑み、霧のように消えた。
その瞬間――
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【水晶の棺、崩れる】
エラ・ノア神殿。
セレナが静かに祈っていたその時、水晶の棺にひびが走った。
セレナ「……!?」
棺の中から、眩い金色の光が漏れ出す。
そして――
ウカビルが目を開いた。
ゆっくりと、力強く身体を起こし、周囲を見渡す。
ウカビル「……この世界は……まだ、終わっていないのか」
セレナが駆け寄る。
セレナ「あなた……! 本当に……!」
ウカビル「君の声が、夢の中でも響いていた。……ありがとう。俺はもう……迷わない」
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【再会と、新たな誓い】
ゲズと再会したウカビルは、静かに頭を下げた。
ウカビル「影の俺が暴れたと聞いた。……すまない。
あれは、俺の心の弱さが作った、もう一人の俺だ」
ゲズ「それでも、お前は今ここにいる。……だったら、それでいい」
三人は、再び力を合わせることを誓い合う。
ゲズ「ルシフェルを倒す。今度こそ、終わらせる」
セレナ「……でも、まだルシフェルは動いていない。静かすぎるわ」
その不穏さの中で、ふとウカビルが言った。
ウカビル「ルシフェルは、俺たちだけを相手にしていない。
……この宇宙には、“もうひとつの王の気配”がある」
ゲズとセレナが、息を飲む。