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#成り上がり
28
銃声が倉庫内に反響し、火薬の匂いが鼻を突く。
踏み込んできた黒ずくめの集団は、迷いのない動きで遮蔽物を使い分け、俺たちを追い詰めてくる。
かつて俺が率いた「鉄砲玉」たちとは格が違う。
音もなく命を刈り取る、本物のプロだ。
「黒嵜、左だ!」
志摩の叫びと同時に、俺のすぐ横のコンクリート柱が削られた。弾丸の風が頬を掠める。
「……チッ、数が多いな!」
俺は手に持った拳銃の重みに舌打ちした。
ドスなら間合いに入れば勝てるが、銃撃戦はまだ慣れねえ。
だが、志摩に守られているだけじゃ、拓海に合わせる顔がない。
俺は地面を転がり、倒されたスチールデスクの陰へ潜り込んだ。
「志摩! あいつらの装備、どこのもんだ」
「民間の軍事会社か、あるいは海外の傭兵崩れだ。榊原の親父、よっぽどお前を外に出したくないらしいな」
志摩がサブマシンガンで牽制の射撃を浴びせる。
その隙に俺は、奴らの配置を頭に叩き込んだ。
右に二人、奥に三人。
連動して動いている。
なら、その連動を断ち切るまでだ。
俺は床に転がっていた空の消火器を、あえて反対方向へ力任せに投げつけた。
ガラン、と高い金属音が響き、敵の銃口が一瞬だけそちらへ向く。
「今だ!」
俺は遮蔽物から飛び出し、最短距離で右側の二人へ肉薄した。
一人目の銃口を左手で弾き上げ、至近距離から腹に二発。
崩れ落ちる奴の体を盾にしながら、もう一人の喉元に銃身を叩きつける。
悶絶する男の懐からグレネードを奪い取り、奥の三人組に向けてピンを抜いた。
「プレゼントだ。持ってけ」
爆発音が倉庫を揺らし、悲鳴が上がる。
煙が立ち込める中、俺は残りの弾丸を正確に撃ち込み、敵の動きを止めた。
「…っ……」
肩で息をしながら立ち上がると、志摩が呆れたような顔でこっちを見ていた。
「極道が銃を持つとこれか。荒っぽい真似を……」
「…志摩、さっきの続きだ。あの顧問弁護士が、どうして親父と繋がってる」
志摩は煙る室内のモニターを確認し、苦い顔をした。
「あの弁護士……久保田はな、ただの法律顧問じゃない。榊原組が洗浄した金を、政界の『大物』へと運ぶパイプ役だ。拓海は、その受け渡し現場の証拠……ボイスレコーダーを隠し持っていた」
拓海の遺品に携帯はなかった。
だが、志摩の話が本当なら、あいつが命懸けで守った「レコーダー」がどこかにあるはずだ。
「志摩。拓海が最後に俺を呼び出したのは、あいつのガキが生まれるはずだった病院の近くだ」
俺の言葉に、志摩の目が鋭くなる。
「……隠し場所の心当たりがあるんだな」
「ああ。あいつは馬鹿だが、俺への合図だけは忘れない男だ」
背後で、新たな増援のサイレンが近づいてくるのが聞こえる。
警察か、それともまた「掃除屋」か。
俺たちは煙に巻かれた倉庫を後にし、雨が降り始めた夜の街へと再び消えた。
待ってろ、拓海。
お前が遺した「言葉」、必ず俺が受け取ってやる。
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