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銃声が倉庫内に反響し、火薬の匂いが鼻を突く。
踏み込んできた黒ずくめの集団は、迷いのない動きで遮蔽物を使い分け、俺たちを追い詰めてくる。
かつて俺が率いた「鉄砲玉」たちとは格が違う。
音もなく命を刈り取る、本物のプロだ。
「黒嵜、左だ!」
志摩の叫びと同時に、俺のすぐ横のコンクリート柱が削られた。弾丸の風が頬を掠める。
「……チッ、数が多いな!」
俺は手に持った拳銃の重みに舌打ちした。
ドスなら間合いに入れば勝てるが、銃撃戦はまだ慣れねえ。
だが、志摩に守られているだけじゃ、拓海に合わせる顔がない。
俺は地面を転がり、倒されたスチールデスクの陰へ潜り込んだ。
「志摩! あいつらの装備、どこのもんだ」
「民間の軍事会社か、あるいは海外の傭兵崩れだ。榊原の親父、よっぽどお前を外に出したくないらしいな」
志摩がサブマシンガンで牽制の射撃を浴びせる。
その隙に俺は、奴らの配置を頭に叩き込んだ。
右に二人、奥に三人。
連動して動いている。
なら、その連動を断ち切るまでだ。
俺は床に転がっていた空の消火器を、あえて反対方向へ力任せに投げつけた。
ガラン、と高い金属音が響き、敵の銃口が一瞬だけそちらへ向く。
「今だ!」
俺は遮蔽物から飛び出し、最短距離で右側の二人へ肉薄した。
一人目の銃口を左手で弾き上げ、至近距離から腹に二発。
崩れ落ちる奴の体を盾にしながら、もう一人の喉元に銃身を叩きつける。
悶絶する男の懐からグレネードを奪い取り、奥の三人組に向けてピンを抜いた。
「プレゼントだ。持ってけ」
爆発音が倉庫を揺らし、悲鳴が上がる。
煙が立ち込める中、俺は残りの弾丸を正確に撃ち込み、敵の動きを止めた。
「…っ……」
肩で息をしながら立ち上がると、志摩が呆れたような顔でこっちを見ていた。
「極道が銃を持つとこれか。荒っぽい真似を……」
「…志摩、さっきの続きだ。あの顧問弁護士が、どうして親父と繋がってる」
志摩は煙る室内のモニターを確認し、苦い顔をした。
「あの弁護士……久保田はな、ただの法律顧問じゃない。榊原組が洗浄した金を、政界の『大物』へと運ぶパイプ役だ。拓海は、その受け渡し現場の証拠……ボイスレコーダーを隠し持っていた」
拓海の遺品に携帯はなかった。
だが、志摩の話が本当なら、あいつが命懸けで守った「レコーダー」がどこかにあるはずだ。
「志摩。拓海が最後に俺を呼び出したのは、あいつのガキが生まれるはずだった病院の近くだ」
俺の言葉に、志摩の目が鋭くなる。
「……隠し場所の心当たりがあるんだな」
「ああ。あいつは馬鹿だが、俺への合図だけは忘れない男だ」
背後で、新たな増援のサイレンが近づいてくるのが聞こえる。
警察か、それともまた「掃除屋」か。
俺たちは煙に巻かれた倉庫を後にし、雨が降り始めた夜の街へと再び消えた。
待ってろ、拓海。
お前が遺した「言葉」、必ず俺が受け取ってやる。