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少女レイ
ふふっ…どこかから声が聞こえてきた。その震えた声は、どこか何かに似ている気がした_
追い詰められたハツカネズミの本能が狂い始めるように、君はその時、絶望と線路の淵に立ち、踏切へと飛び出した。
そう、君は友達だ。なら、僕の手を掴んでくれたらよかったのに。君は一人じゃあ、居場所などないのだろう?
君と僕ふたりだけで、透き通ったこの線路の奥の海のような綺麗な世界で愛しえる…はずだったのに
繰り返す。あの夏の日の五月蝿いくらいの蝉の声。二度と帰らなくなってしまった君。ふたりお揃いのキーホルダーが永遠にちぎれる。
夏が消し去った、透き通るほどに白い肌の君に、哀しい程、取り憑かれてしまいたい_
9月のスタートを告げるチャイムは本性が暴れ始めたように、次の標的に置かれたのはその、僕がしかけた花瓶だった。
そうじゃん、君が悪いんだよ。僕だけを見ていてくれればよかったのに。君のその苦しみに、僕の助けが必要だろう?
溺れていく君のその手にそっと𝑲𝑰𝑺𝑺をした。
薄笑いの獣、つまり周りの人間たちはその心が晴れるまで爪を突き立て威嚇する。不揃いのスカート。夏の静寂を切り裂くような悲鳴は教室にこだました。窓から空を見ると、これ以上ないくらいの青空だった。
カンカンカンカン…踏切の遮断棒が降りていく音が聞こえる。その音は君を止めようとする僕と重なる警告音だった。君は友達。君はそういい線路へと歩き始めた。
ああ、またフラッシュバックが繰り返す。
今はもう見えない、見えることのない、みることのできない透明な君は、僕を指さし、ゆっくりと口を動かした。
その言葉は、君から僕への、最期の言葉だった。