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『凛として、凍てついた想いを』

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『凛として、凍てついた想いを』

5 - 第五章 『連れていく、それが罪でも』

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2025年08月03日

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夜の風が、草木の匂いを運んでいた。山の上、古びた祠の裏にある石段の上。

そこに、ひとり佇む影があった。


凩 侃。


今日も訓練を終え、ひとり静かに刀を研いでいた。

その横顔は淡々とした無表情――だが、心の奥底では決して静かではなかった。


(……あの人は、なぜ俺を殺さなかった?)


(“連れてこい”と言われていたのに、なぜ……)


(会いたいと思っていたのは、俺だけじゃなかった……?)


ふと、刀を置いた瞬間だった。

背後に、気配。


気配を感じた刹那、侃は即座に立ち上がり、刀を抜く。


だがその場にいたのは――


「よォ。ずいぶん警戒してるな、柱さんよ」


赤と青の痣。武道家の構え。

上弦の参――猗窩座。


「……また、お前か」


「会いに来た」


その言葉は、真っ直ぐだった。

剣を振るうでもなく、威圧するでもない。

ただ、会いに来た。それだけ。


侃は少しだけ眉をひそめる。


「……また、鬼になれって言いに来たのか?」


「違う。今日は……お前を、連れて行こうと思ってな」


一瞬、風が止まった。



対話――静かな火花


「……ふざけてるのか」


「本気だ。お前を、“あんな連中”の手の届かねぇところまで連れて行ってやる。

鬼殺隊も、無惨も、誰の手も届かない――ただ、俺とお前だけの場所へ」


「……それが、優しさか? 俺を鬼から守るために、誘拐でもするつもりか」


「そうだ。……悪いが、お前を見捨てる気にはなれねぇ」


猗窩座の目には、憎しみも飢えもなかった。

ただ、真っ直ぐな願いだけが宿っていた。


「俺があの時、お前を助けた理由、わかるか?」


「……子どもだったから。鬼殺隊だと勘違いしてたから。そんなとこだろ」


「違う」

猗窩座が、静かに否定した。


「俺が、お前を見て――“生きててほしい”って思ったからだ」


侃の目が、揺れる。


「……あの時、俺はもう何も信じてなかった。

家族も、仲間も、力も、全部失って、冷たくなってた。

でも、お前だけは……あの目だけは――生きててほしいと思ったんだ」


その言葉に、侃は一歩だけ猗窩座に近づく。


「……勝手だな。お前が助けたせいで、俺は……お前を追うようになって、

結局、お前が鬼だって知って、裏切られたような気になって……」


「それでも、会いたかったんだろ?」


侃は、言葉を返せなかった。


静寂。

風の音。

虫の声。

夜の世界が、二人を包んだ。



そして――猗窩座の決意


「このままじゃ、お前は“鬼にされる”。

あの無惨が、お前を放っておくわけがねぇ。

だったら、俺が先に――」


「……無理だ。柱を、捨てられない」


「なんでだよ」

「お前はもう十分、頑張ったろ?強さも手に入れた。仲間もいる。なのに――なぜ、自分を犠牲にしてまで……!」


「……仲間が、いるからだ」


猗窩座が、息を呑む。


「俺は……もう、ひとりで戦ってるわけじゃない。

俺が“斬らなかった”ことを、柱たちは責めなかった。

信じてくれた。それだけで、俺はもう、ここにいる意味がある」


「……それでも、連れていくって言うのか?」


「……」


猗窩座の手が、ゆっくりと侃の頬に伸びる。

だが、その手は――途中で止まった。


「……お前が、俺を見て泣いたとき。

俺は……“鬼”でも、まだ、誰かを守れるかもしれないって思ったんだ」


「なら……」


「行かないよ」


侃は言った。

それが、彼の“答え”だった。


「俺はここで、“柱”として生きる。

たとえ鬼になっても、人間として、誰かを守るために――“ここ”にいる」


猗窩座は、何も言わなかった。


ただその姿を見て、ゆっくりと背を向けた。


「……そうか」


「また来るよ、坊主」


「……もう、坊主じゃない」


「……いや、あのときのお前は、ずっとここに残ってる」


そう言って、彼は夜の中へと消えていった。



影の中、蠢く“もう一つの計画”


「猗窩座は信用ならんな。ならば――次は“別の上弦”を送るとしよう」


鬼舞辻 無惨が冷たく言った。


「凛柱――今度は、強制的に鬼にしてやる」


夜は、音もなく深まっていく。


『凛として、凍てついた想いを』

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