【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
遥か遠く、夕日はその大きな姿を水平線の向こうへ隠そうとしていた。
オレンジから赤へとグラデーションを彩る空。
通常ならその美しさに見惚れていたかもしれない。
「……」
海とは90度ほどずれた方角を見据え、ないこはゆっくりと深呼吸をした。
その目線の先にあるのはあの例の旧物流センター。
恐らく未だにあのエラー音がけたたましく鳴り響いているに違いない。
『まろ? りうらとほとけっち離脱したよ』
手にしたスマホのスピーカーから、りうらの声が聞こえてくる。
「いふくん帰ったら覚えててよね!」なんて喚く水色の声まで耳に届いた。
「はいはい、うるせーな」とそれを適当にあしらうと、そんないつも通りのほとけとのやり取りにりうらの楽しそうな笑い声が響く。
そして互いに家で再会する約束をして、そのまま通話を終わらせた。
その間、ないこは目を閉じて微動だにしなかった。
その胸にどんな思いを描いているのかは想像に易くない。
これまで自分を追い詰めていた悪夢から解き放たれた安堵と少しの後悔。
それに、意図せずとも他人の人生を狂わせてしまったことへの負い目。
そんな幾重にも重なる感情が、歪な形で胸の奥底に積み上がっているに違いない。
「お前のせいじゃない」なんて、陳腐な言葉を吐く気にはならなかった。
そんな安っぽいセリフで救われるならとっくに苦しみから解き放たれている。
…だから、せめてもの代わりに。
「……」
ないこの隣に立ち、ようやく感覚が戻って動かせるようになってきた左手を伸ばした。
その頭をそっと撫でる。
少し軋んだピンクの髪が、クシャと音を立てて指の間から零れた。
その俺の手の感触に少しだけ頭をこちらに傾けるようにして、ないこは「…まろ」と小さく呼びかけてくる。
ここへ来て、初めて声を発した。
あの場所を脱出してから、互いに言葉を交わすこともなかったから。
「ん?」
呼びかけに応じるように声を返すと、ないこはゆっくりと再び目を開いた。
前を見据えたまま、けれど隣の俺のことを振り返りはしない。
「ありがとう。またまろに救われた」
小さな声でポツリと…だが聞き逃すほどではない呟きを漏らした。
礼を言われることなんてしてない。
そう言いかけたけれどやめておいた。
頭を撫でていた手を滑り下ろし、ないこの首の右後ろ辺りに指を這わせる。
注射器の跡があるその辺りをつつ、と撫でると、ないこはようやくこちらを振り返った。
ここへ来て初めて絡み合った視線を逸らすことなく、「俺は…」と声を押し出す。
「最初は、ほんまにお前を殺す気で戻ってきたよ」
あの4人を守るために、それが一番早いと思っていた。
黒マスクの意図なんて知らなかった俺は、何よりも優先的にあにきたちに危険が及ばない方法を選びたかった。
家族同然に大切だった4人と…「見知らぬどこかの誰か」でしかなかったないこ。
どうすれば最善かを考えたとき、家族を優先するのは自分の中で当たり前だった
本当は、もうその時点から俺はないこに合わせる顔なんてない。
自分の大事なものを守るために、恨みもないお前を殺すことも厭わないと決めた時点で。
「…でも、殺さなかったじゃん」
そう言ってないこは微かに笑った。
…そんなたった一言に胸が震えるのを自覚する。
…違う。殺さなかったんじゃない。
殺せなかっただけだ。
多分、あの時…初めて会ったあのテストと称された実戦で、押さえつけたお前と目が合ったとき。
ピンクの瞳に見つめられたあの瞬間に、きっと自分はもうないこのことを殺すなんて術は選べなくなっていたんだ。
「…まろ?」
あの時見たピンクの瞳が、今も俺を見上げる。
危ない橋を渡らせたことは反省すべき点で、詫びるべきだったかもしれない。
でもないこがそんなことを望んでいないことが分かったから、俺は小さく首を横に振って言葉を飲み下した。
「…あの人さ、元々あそこを爆破するつもりだったみたい。かなり準備されてたから、俺があそこに爆弾しかけるのもあんまり手間かかんなかった」
しばらくの沈黙の後、ないこは不意にそんなことを口にして話題を改めた。
つい先刻自分がブラスターのトリガーを引いたことを思い出したのか、左手をグッと握り込む。
「…死ぬつもりやったっていうこと?」
「分かんない。ただ単にそろそろ潜伏場所を移そうとしてて、その前に自分たちの痕跡を消したかっただけかもしれないし」
もういない人間からは、答えが得られるはずもない。
それ以上の言及を避けようとした俺だったけれど、一方でないこは「ただ」と言葉を重ねた。
「最後まで、理解できない人だったなと思って」
ないこは拳を握り込んだ左手で、開いたり閉じたりを繰り返した。
まだどこか夢でも見ているような…現実との狭間に立たされている気がするのだろう。
もしくは、まだあの男が生きている気すらしているのかもしれない。
「理解できとったら今頃ここにおらんて」
もう一度ないこの頭に手を乗せると、あいつは今度はゆっくりと目を伏せた。
「確かに」と小さく頷く。
「そんで、まろにも会ってなかったな」
「今のチームすらできあがってなかったやろ」
もしもの話なんて不毛以外の何物でもない。
だけどそんな意味のない会話をする時間すら、今のないこには必要だった。
時間稼ぎのようなそれに、また深い吐息を漏らす。
「……」
やがてないこは、覚悟を決めたようにふとポケットから何かを取り出した。
それは最期の時に黒マスクが必死に手にしようとしていた起爆スイッチに似ていた。
それを左手に握り、ふーっと細く息を吐き出す。
今から自分がしようとしていることの重大さを分かっているからこそ、鼓動が早鐘を打つに違いない。
ピンクの瞳は閉じられ、自分の気持ちを落ちつけるように静かに深呼吸をくり返す。
たとえどんな犯罪者だろうと…どんなに悪人だろうと、その命をないがしろにしていいわけじゃない。
今後生かしておけば甚大なる被害をもたらすだろう人間を殺すのは、俺たち組織の人間からしたら「正義」だ。
だけどその正義は、誰から見ても正しいわけじゃない。
「殺す」ということに関してだけ言えば、あいつらと自分たちのやっていることは何ら変わりがない。
だから、いつまでたっても慣れることなんてない。
悪人を裁くたびに、自分の正義を貫くと同時に命の尊さが重くその身にのしかかる。
今まさに目を瞑って呼吸を整えるないこは、その葛藤と戦っているに違いない。
それが、昔仲間だった相手なら尚更。
「…ないこ」
しばらく待った後、俺はないこに呼びかけた。
ゆっくりと再び開かれた瞳が、まっすぐこちらを振り返る。
そんなないこの横から正面へ移動して、俺は右手を伸ばした。
「半分背負うわ」
最初の任務でスイッチを押したときのことを思い出す。
そのときのことをなぞるような俺のセリフに、ないこはハッと息を飲んだ。
あのときは、後ろから抱きしめるように支えて共にスイッチを押した。
今は正面からないこの左手に自分の右手を添える。
「3,2…」
互いに顔を俯けて、目を閉じた。
カウントダウンを始める俺の前髪とないこのピンク色のそれが触れ合い、風を受けてサラリと流れる。
「1……」
震えそうなそのないこの指に、俺は上から添えた手に力をこめた。
こちらの声に呼応するように、ぐっと息を詰めるのが空気で伝わってくる。
残りたった1秒が、こんなにも永遠のように長く感じたことはなかった。
「0!」
カチリと固い音がした瞬間、遠くで黒煙が上がった。
刹那遅れてからドォンと爆音が連続で轟く。
巻き起こる煙の向こうで、俺たちがさっきまでいた建物は音を上げて崩れ落ちていっているのだろう。
あの黒マスクや部下たちの体を、全て飲み込むようにして。
粉塵舞う煙に遅れ、赤い炎が上がるのが視界いっぱいに広がった。
ドン、ドンと連続して鳴り響く音に比例するように、燃え盛る炎は瞬く間に大きくなっていく。
全てを焼き尽くしそうな業火。
夕焼けの空と重なり合い、赤とオレンジが混じり合った。
それを黙って見据えていたないこが、やがて踵を返す。
「…帰ろう、まろ」
瞳に赤い色を映して眺めていた俺は、かけられた声の方を振り返った。
先を歩き出したないこの後ろについて、半歩遅れて歩く。
ないこはその後、結局一度も振り返らないままそこを後にした。
コメント
2件
半分背負うってかっこよすぎんか?(((((((
ここにきてタイトルのERRORがサブタイトルにも…✨✨ 半分背負うという言葉心に刺さりすぎてます…😖💞 作品の中で名言が出るの本当にあおば様の言葉選びのセンスと知識量が豊富で大好きです…、!! 半分背負う、なんていつか誰かに言ってみたいものです😿💓 スイッチを起動する時の緊張感がこっちまで伝わってきました…また6人で揃うことが出来たらと思うとわくわくしちゃいますっ😽