【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
最終話
家に帰り、一番にしたことと言えば黒マスクが家に仕掛けたという爆弾の捜索だった。
結果、敷地内の庭や家の通気口やらから複数の爆弾が見つかった。
それら全てをないこが丁寧に処理していく。
手際よく解除・解体されたそれに安堵の息を漏らした頃、りうらとほとけ、そしてあにきとしょにだが帰ってきた。
「しょうちゃん! 大丈夫!?」
今にもしょにだに飛びつきそうなほとけが、あにきに首ねっこを掴まれて制される。
まだ当然歩けないしょにだは車椅子に乗せられていたけれど、それ以上に暗い表情で言葉数が少なかった。
撃たれた箇所は当然痛むだろうし、元気がないのは当然だ。
…そう思ったけれど、「…僕…」と小さな声が何かを告げようと発されたそのときにようやく、思っていたのとはどうも様子が違うことに気づいた。
「僕…僕だけ、完全に役立たずやん…」
一連の話をあにきから聞かされたらしいしょにだは、目をしばたたかせながらポツリと呟く。
思わず顔を見合わせた俺たちすら素知らぬフリで、ほとけが「そんなことないよ!」と車椅子に座ったままのしょにだに抱きつこうとした。
今度こそあにきに頭を叩かれて阻止されている。
「しょうちゃんはかっこよかったよ! あんなに敵に囲まれたのに勇敢に戦ったじゃん!」
「いや僕あのとき逃げる途中に撃たれただけ…っていうか…」
「図体でかいんだからいふくんが盾になれば良かったのにね!」
「いやあの…いむくん…? 聞いてる…?」
「役立たずはいふくんの方だよ! しょうちゃん本当にかわいそう…」
涙まじりの言葉の、どこからどこまでが演技なのか判然としない。
「どっからツッコんだらいい?」と隣でりうらが言うので「知らんわ」と鼻であしらうように俺は短く返した。
ほとけをしょにだから引きはがしながら、あにきは「あ、そうや」と何かを思い出したように声を上げる。
「初兎とほとけ以外、はいそこに正座」
リビングの隅を指さして、あにきはそう続けた。
俺を挟んで、ないことりうらが互いの顔を見合わせる。
「…なんでりうら? 何も悪いことしてないんだけど。むしろ褒めて欲しいくらいなんだけど」
「いやそれ言ったら俺だって怒られることはなんも…」
ボソボソと言い合っていた2人だったけれど、すぐにあにきの冷たい一瞥を浴びて口を噤んだ。
俺を挟んだ位置関係のまま、3人で指定された場所に正座する。
「りうら、お前をあそこに行かせるとき、俺がなんて言うたか覚えとるか?」
仁王立ちでこちらを見下ろすあにきの言葉に、りうらは一度視線を泳がせた。
思い出すのに時間がかかっているのか、いつもの涼しい顔を少しだけ曇らせて思案している。
「『気をつけろよ』だっけ?」
「その前やアホ! 傷が開くような戦い方すんなって言うたやろ!」
「そんなに無茶してないけど」
「普通の人間はなぁ、大怪我直後に50人近く斬ったらそれを無茶って言うねん」
「え! りうちゃんそんなに動いたの!?」
驚いたように横からほとけが割りこんできた。パチパチと瞬きを繰り返した後、りうらは小さく首を捻る。
「50…? 100人は斬ったと思うけど」
「…尚更あかんやん? それは」
呆れたように呟いたあにきは、「もうええ、次」と続けて今度はないこの方を向いた。
「ないこ」
「…はい」
厳かに呼ばれ、ないこは少しだけ居ずまいを正す。
背筋を伸ばし、目線は逸らすことなくまっすぐあにきを見据えた。
「心配ごとがあるときはちゃんと相談せぇよ」
「…はい」
「何のためのチームやねん」
「………はい」
神妙な面持ちで素直に大きく頷いたからか、あにきがないこを解放するのは早かった。
すぐに隣の俺に視線を移して上から見下ろしてくる。
その威圧感たるや、こちらが思わず目を逸したくなるほど。
「まろ」
呼ばれて、小さく返事をする。
ないこほどはっきりと応じる声は出なかった。
「無謀すぎ、見切り発車すぎ。お前らしくないやろ」
「…ごめん」
「もっと作戦立てるとかできたやろ。それこそ俺らに相談するとか」
「…すみません」
首を竦めて絞り出した謝罪の言葉は、心がこもっていたかというと怪しい。
ただあにきのこちらを見下ろす圧に身を縮め、そう口にするしかなかった。
「…まぁでも…」
俺を見据える目をふっと細め、あにきは小さくため息を吐き出した。何かを諦めるような、そしてそれでいて何かを掬いあげるような矛盾を孕んで。
「ありがとうな」
俺の髪をクシャッと撫でて、あにきはそう言った。
思わず目を瞠り顔を上げると、あにきは照れを隠すように腕組みをした態勢でしかめっ面のままそっぽを向いた。
「え、あにきそれだけ!?」
そんなあにきの向こう側から、またほとけが会話に割り込んでくる。
「いふくんにはもっと説教してよ! 僕この人のせいで死んだんですけど!?」
「いや死んでへんやろ。今のお前は何やねん。生きとるやろ」
不機嫌さを全面に押し出し、俺は眉を寄せて応戦した。
唇を歪めてそう言うと「はぁぁぁ!?」とほとけのバカでかい声が響く。
「一回死んでたよ! 数時間記憶ないもん!」
「寝とったんちゃうん」
「ないちゃんだって確実に死んでたもん! ほら見てよあにき! 僕とないちゃんの首のココ、注射器の跡あるでしょ!? ひどくない!? キズモノにされたんだが!?」
「元々お前が傷みたいなもんやろ」
「ひっど! しょうちゃーん、いふくんがひどいこと言うー!!!」
また車椅子のしょにだの方へ駆け寄り、今度は泣きつく。
その様子に苦笑いを浮かべたりうらが「通常運転だね」とボソリと呟いた。
その後あにきが作った料理をいつもの賑やかさであっという間に平らげ、夜も更けた頃。
りうらやほとけは今頃になって疲労が押し寄せたのか、ソファで折り重なるようにして眠ってしまった。
あにきはしょにだを連れて部屋へ戻っていく。
なんらかの管をつないだままのしょにだは、まだあにきの看病が必要なのだろう。
それを見送ってから、俺は缶チューハイを手に自室へ戻った。
大きなガラス戸をほんの少し開けただけで、途端に冷たい風が頬を掠めていく。
室内のぬるい温度にさらされていたせいか、外のひんやりとした空気が心地よく感じられた。
カラカラとそれを全開まで開き、ベランダに出る。
手にしていたチューハイを呷ると、ゴクリと喉が鳴って奥底の方まで染み渡っていくのを実感した。
全身の怪我は、あにきが全て手当してくれた。
頭には仰々しく包帯が巻かれ、手首の手錠の跡には薬が塗り込まれている。
殴られたときに切れた唇の血はもう止まっていたけれど、酒を流し込むときにピリとした痛みが走った。
その痛みに小さい不快感を覚え、一瞬だけ眉を顰める。
そうしているうちに今頃になって、疲労感が全身を襲ってきた。
けだるい体を支えるようにして、思わずベランダの手すりに寄りかかった。
今更手が震えてきたのは、きっと夜の寒さのせいだけじゃないだろう。
ようやく緊張から解き放たれた実感からか、途端に脱力感に苛まれる。
「まろ、ここにいた」
隣の部屋のガラス戸が開く音がして、ないこが顔を見せた。
震える手を見られないように、缶を持つ手により力をこめる。
「それおいしい?」
俺の隣までやって来て、ないこが俺の持つチューハイを指差す。
「消毒液の味しかせん」
「ふはっ」
唇の端に塗られたそれを思い出しながら言うと、ないこは思わずと言った感じに吹き出した。
それから俺の頭に巻かれた包帯に視線をやってから、痛々しそうに目を細める。
「大丈夫? 怪我」
「まぁなんとか。…ないこは結局ほとんど怪我なしやな」
良かった、と続く言葉は飲み込んだ。
ないこはうんと頷いてピースサインを作り、「ほぼ無傷」と微笑する。
「これだけか」
言って、俺はないこの細い首に触れた。
右後ろにある注射器の跡。
人差し指で沿うように撫でると、ないこは少し苦笑を浮かべたようだった。
「え、もしかしてさっきほとけっちが言ったこと気にしてる?」
「『キズモノにされた』ってやつ? んなわけないやん」
「だよなー」
笑うないこの首に這わせた指をそのまま、うなじを撫でる。
注射器の跡は赤くプツリとしていたけれど、目をこらして見ないと分からない程度の大きさだった。
それでもそこに確かにある、俺の罪。
結局未だにきちんと改めて謝ることもできていない。
だけど安っぽい言葉での謝罪に意味がないことも、同時に十分すぎるほど理解している。
だから、代わりにそこに唇を寄せた。
赤い小さな跡をじゅっと音を立てて吸う。
「!? まろ…!?」
注射針の跡よりも、その上に少し大きめの紅い跡がついた。
花が咲いたように散ったそれはないこの目からは見えないはずだけど、あいつの顔はそれと同じくらい赤くなっていた。
「…っやっぱり気にしてんじゃん…」
手の甲で口元を覆って赤面を隠しながら、ないこはそう言う。
「どうやろ」とけらけらと笑いながら俺は身を離した。
それを恨めしげに見やった後で、ないこは何かを思い直したようにふっと真顔に戻る。
そして何かを決意したような…そんな表情で再び俺を見上げてきた。
「まろ、一個聞いてもいい?」
どこかで聞いたような…続いたそんな問いに、俺は片眉を持ち上げて無言で先を促す。
隣合うないこに正面から対峙するように、体ごと向きを変えた。
ないこは、一度深く息を吸い上げた。
全てを終わらせ…そしてここから全てを始まらせるかのように、まっすぐな目で俺を見据える。
「好きになっても…いい?」
続いた言葉に、俺は瞬きを繰り返しながらその深いピンク色の瞳を見つめ返した。
あの時レイクサイドで、今と同じことを尋ねられた。
そのときの自分の答えを思い出す。
あの場で俺は、ダメだと即答した。
あの時自分が置かれた状況ではそう言うしかなかったから。
でも…今は……
「今更それ聞くん?」
ふふっと笑って、俺は手を伸ばした。
とっくに堕ちているのは、こっちの方だ。
ピンク色の後頭部に手を添えて、ぐっとこちらへ引き寄せる。
薄く開かれた唇に、そっと自分のそれを重ねた。
ずっと耳にし続けていたせいで、未だ頭の中で鳴り止まなかったエラー音。
幻聴のようなそれが、今この時になって嘘のように脳内から消えた。
『ERROR』
―end ???―
コメント
15件
初コメです!! 実は医者パロの時から ずっとあおばさんの小説を 拝見していました✨✨✨ ERRORも最初から最後まで 素敵な作品で、毎日通知が来る度 気分が上がっていました! 後日談のお話もとても楽しみです
ついにERROR最終話でしたね…、!! 作中に何度も出ていたエラー音の言葉が最後にこんなに綺麗な形で締めくくることが出来るの凄すぎます…✨✨ 忙しい日でも見ると元気になれるんです!!毎日投稿お忙しいのにありがとうございます😿💕 注射痕の1つでさえも気にする青さんはもう桃さんに堕ちちゃってますね😸💓 後日談も楽しみです…!!
全然コメントしてなかったけどずっと見てました!後日談楽しみにしてます😊