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嵐のモンスターを倒し、町で宴が終わった翌日。
「……ル。……ウル」
「う、う~ん。もう食べられないよ……」
「コウル! 起きてください!」
エイリーンの声にコウルは目を覚ます。
「ど、どうしたの。そんなに寝坊した?」
「いえ、外に来てください」
言われ、慌てて外に出るコウル。すると、そこには――。
「モンスター……ポム?」
コウルの目の前で宴の後の残飯を食い荒らすモンスター。
そのモンスターの丸い形はポムそっくりだった。色が緑や、毒々しい紫な色なことを除けば。
「あれは『腐ポム』。または別名『ボム』です。ポムそっくりですが、とても食い意地の張ったモンスターです」
「そ、そうなの……」
確かに目の前で残飯を荒らすモンスターからは、とてもポムの可愛さは欠片も感じられなかった。
「追い払う――って、まだ剣を返してもらってない」
さすがに聖剣を呼ぶほどではないと思い、コウルは魔力弾を軽めに撃つ。
「ボムー!?」
「ボムー!」
腐ポムの群れは慌てふためくように、逃げ惑う。
しかし、わりとしつこく、逃げてはまた食料を漁りに戻ろうとする。
「倒した方がいいのかな? 逃げても戻ってくるよ」
「それはそれで問題が……」
エイリーンが指さした方向。町の男が剣で腐ポムを一斬りする。すると――。
「ボムー!」
腐ポムは、別名ボムのとおり、その場で軽くだが爆発した。
「うわっ!?」
爆発した一帯に腐ポムと同じ色の液体が飛び散る。
「これです……。腐ポムはやられると爆発し、液体をまき散らすのです……」
「うわあ……」
コウルは怯んだ。
腐ポムが液体を出したのが、すっかり忘れていた血を思い出させたのもあるが――。
「くさい……」
腐ポムの残した液体がすごく臭かったのだ。
「腐ポムの液体は、食べたものが混じり合ったものと聞きます……。なにを食べたらこんな臭いに……」
二人は腐ポムを追い払いながら、鼻が曲がりそうなのを堪えるのだった。
「ふう……」
数分後、腐ポム騒動は何とか収まった。
「すまねえな。昨日の今日に、モンスター退治の英雄に」
「いえ」
「それで、もう海を渡るのか?」
「いえ、まずはマントを返しにいかないと」
二人は腐ポムの臭いから逃げるように、マントを持ち山の方へ走る。
「おかえりなさいー。無事で何より。マントは無事ですかな?」
山の洞窟でそのまま待っていたアキナインは、すぐさま二人からマントを取りチェックする。
「うん傷はないね。なんかすごい臭いがついてる気もするけど」
二人はギクッとなる。腐ポム騒動の残り香がついていたのだろうかと。
「まあ、他は問題なし。剣は返すよ」
「あ、ありがとうございます」
コウルが剣を受け取る。するとすぐに、アキナインは別のものを取り出し見せる。
「ところで、この『究極臭い取り』。今なら安くしておくよ。いかがかな?」
コウルとエイリーンは顔を見合わすと、自分の服の臭いを嗅いだ。まだ少し臭い気もした二人は――。
「買います……」
その場でそれを買い、自分たちに吹きかける。確かに臭いは消えたようだった。
「これ、あとどれくらいあります?」
「うん? まだたくさんあるけど?」
コウルはアキナインから『究極臭い取り』を大量に買い込むと町に戻ることにした。
「いやあ、まさかモンスター退治の英雄から、こんなものまでもらえるとはね」
町人たちが礼を言う。腐ポムの臭いで悩んでいた町に『究極臭い取り』はなんと売れた。
コウル達は配るつもりだったのだが、その効果抜群さを知るや、町人が金を払ってくれたのだった。
「これが転売か……」
#センチネルバース
かんな
1,005
#女主人公
灰猫さんきち
1,838
#魔道具職人
こはる
212
ぬくみおんせん
21
「え?」
「いや、何でもないよ」
コウルの呟きは風に乗って消えた。
「さて、じゃあ――」
「ええ。やっと海を越えれますね」
二人は海岸に立つと、いよいよとエイリーンは翼を広げた。
「いきます!」
コウルを抱えエイリーンは飛び立つ。塔のある大陸へ向けて。
「もうあとは、塔に向かうだけ?」
「特に何もなければですが」
コウルは、それはフラグなのではと思ったが、エイリーンがわからないと思い胸にしまう。
そして大陸を渡り、塔の前に付いたが――。
「これ、入れる?」
神の塔には着いた。だがその周りはまたも風、竜巻が覆っていた。
「風除けのマント、まだ必要でしたね……」
「どうだろう……。嵐と違って、入る隙間もないよ」
二人は途方に暮れる。
「エイリーンの魔力でどうにかならない?」
「いえ……。この竜巻は邪神級の魔力です。わたしでは難しいと思います……」
「そう? なら一つだけ試していい?」
コウルはそう言うと女神聖剣を呼び出す。
「はあああっ!」
魔力を込めた聖剣の一撃。聖剣の光が竜巻を包む。竜巻は――。
「ダメです。消えてません」
「そうかー……」
コウルはふらついて尻餅をつく。
「だ、大丈夫ですか、コウル」
「う~ん……。出せる魔力を全て込めたんだけどな……」
コウルはエイリーンに支えられ立ち上がる。
「無茶はいけません。全魔力なんて。死んだらどうするんですか!」
「し、死なない程度にしてるよ」
エイリーンに怒られ、たじたじなコウル。
「で、でも本当にどうする?」
「あ、そうですね。一体どうすれば……」
考える二人。その上から、竜巻に吹き飛ばされるように紙が一枚落ちてくる。
「これは――」
『エイリーン。コウル。よく来たわね。この塔に入りたいなら、かつての邪神様を封じたといわれる四つの神具が必要よ。あなたたちに見つけられるかしら?』
「これって……」
「はい、エルドリーンからの手紙のようです。かつての邪神を封じた四つの神具ですか……」
「わかる?」
エイリーンはもちろんと頷く。
「はい。今の邪神エンデナール。その前の邪神は、非道極まりなかったため、英雄に封印されたとの伝説があります。その武具のことなら……」
「手紙のとおりならそれを集めればいいんだね」
「ええ。でも信じるんですか?」
コウルは頷いた。
「他にこの竜巻を突破する方法はないんだ。嘘でも罠でもこれを信じるしかないよ」
「そうですね……では」
「四つの神具を集めに――」
「出発です!」
二人は手を掲げ宣言するのだった。