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リーズ国にはゴブリンの姿がなかった。
ただ、壊れかけの城と集落が並んでいるだけだ。
それは、少しを手が触れただけでも
崩れ落ちそうなほどなのであった。
「この洞窟に泊まろう。」
グーロは山の近くにある洞窟を指差して言った。
「木もあるし、なにより水がある。」
「急に攻めるよりこっちの方が効率的だろう?」
近くの木を蹴り倒しながら
グーロが言うと、グルは頷いた。
「木に火をつければ周りも見えるし
深夜レプリトスカに行くことも可能かもしれない。」
グルが言い終わる頃
急に周りが暗くなった。
「日が落ちる速さが何倍だからなぁ…」
「グル、火をつけるぞ。」
「分かった。」
口に酸素を二倍ほど吸い込むと
ゴォォォと音を立て炎を吹いた。
先程蹴り倒した木が炎に飲み込まれて
森は火の海になった。
「これで見えやすい。大規模な焚き火ってやつだ。」
「ドロップには関係のない話だが、
お前に言わなきゃいけないことがある。」
グーロはあぐらをかくと話し始めた。
「七年前の夏、俺は友達のサーガラと入れ替わった。
肉体が入れ替わったのだが、原因はサーガラの死だ。」
「サーガラが亡くなっては困ると政府は言い
生き返すためにサーガラと肉体契約をしたのだ。」
「相手の皮を剥いでそれを着るという行為が
自分肉体を相手に貸すということになり
俺はサーガラと入れ替わることとなった。」
「お前はわからないかもしれないが
丁度そのとき、ドロップの腹にはお前の子が居た。
だから入れ替わった瞬間サーガラの血が流れてしまった。」
「つまりは、半分竜(ドラゴン)で半分龍王。」
「それが、お前の弟だ。」
グルは驚いた。
弟がいたことも、その弟がサーガラと
血が繋がっていることも知らなかったのだ。
そのことで、しばらく沈黙が続いたが
グルは答えた。
「今どこにいる?名前とかないのか?」
「…名前は今のところないが
海底界(海しかない世界)に居る。」
「ドロップを連れて帰ってから行ってみるか?」
グーロが言うとグルは身を乗り出して言った。
「行く!いや、行きたい!」
目をキラキラとさせて言うグルを
グーロは優しい目で見つめていた。
焚き火の火がゆらゆらと揺れている。
こうして、夜が明けた。
「レプリトスカに行こう。
一度様子を見ないことには作戦も思いつかぬ。」
「グルもついて来い。ここから南東に進むのだ。」
グーロは後ろ足で砂を蹴ると火を吹きながら
南島へ進んだ。グルもバサバサと
翼を動かしながら後を追った。
レプリトスカの空は、緑色だ。
細菌や汚染などが原因の一つで
人間が来れば息絶えてしまう。
だが、細菌に強い竜や魔物にとっては
気にもならないものでグーロたちも普通に立ち寄っていた。
そんなレプリトスカの街はなにやら賑わっていて
牛の頭をした男が大きなハサミを持って
何かをしている。空からはよく見えないが
グーロとグルには何をしているか分かった。
「ドロップの翼を切り刻んでいる…!」
グーロが言うとグルは目を真っ赤にして
牛男の元まで向かった。無論。グーロもだ。
「辞めろ!その者は罪人ではないぞ!」
鬼の形相でグーロが叫ぶと
ゲラゲラと魔物が大笑いする。
目の前で透き通るような白い鱗を剥がれ
翼まで切り刻まれたドロップの姿が、そこにはあった。
羽元から血が吹き出し意識はほとんどない。
それでも笑い狂う魔物にグルは激怒した。
「何故殺める?何故笑う?何故お前らは止めない?」
「お前の親が足を切られても笑えるのか?」
隣りにいた老いた魔物の胸ぐらを掴んで
グルが言うと老いた魔物はケラケラと笑った。
「他人の親が拷問されてちゃ笑うさぁ!」
「だって赤の他人の親なんだからねぇ!」
アハハハハハハ!周りの魔物も爆笑した。
グルとグーロの怒りが上限を上回る。
ガンッ…ドロップの閉じ込められている
柵をグーロが蹴った。柵が凹んで穴ができたと思えば
グーロはドロップを抱き寄せる。
「大丈夫か?意識はあるか?!」
言っても返事はない。グーロが手当をしようと
手当て箱を出した途端、予想もつかないことが起きた。
グサッグサッグサッ鈍い音が響くと
グーロは倒れる。グルが急いで駆け寄ると
グーロの目玉に剣が刺さっていた。
「父さん!しっかりして!」
揺さぶるとゲホッと咳払いをする。
目から血が流れていた。
「………あぁ、こりゃ手当しても無駄だな。
お前がよほど名医じゃない限り…」
「俺はショック死するかも…しれん。」
グーロは血と涙が合わさったようなものを
目から流して目を瞑った。
グルが歯を食いしばって手術器具を取り出し
グーロとドロップに麻酔をした。
「…俺、医者になるから。」
「二人共生きててくれよ…!」
震えながらメスを持つと、グーロの目に刃を入れた。
思ったよりも柔らかくて力加減を間違えると
神経に影響する。脳の神経とも繋がっているからか
グルはいつもより手が震えた。
それが、親の目を手術するからなのか
難しさで震えているのかは、神のみぞ知ることである。
目玉はもう、グチャグチャで摘出するしかなかった。
目玉を摘出すると、義眼を目に入れて代用し
どうにか助かることができた。
だが、ここで悲劇が起こる。
「生かさぬ。」
体を布で覆った魔王が出てきて
剣でドロップの心臓を貫いた。
ドロップの息はもうない。グルは絶望と怒りで
動くことすらできなかった。魔王は笑うと
グルの前から風のように消え去った。
あの時からグルは魔界が大嫌いになったのだ。