⚠学パロ
ーーー
「おじゃましまーす」
軽く一礼をしてから靴を脱いで中に入る。
「どーぞ。適当に座って?」
「ありがと」
レトさんの家の中はアンティーク調で少しだけ、古いものが目につく畳のおしゃれな雰囲気の部屋だった。
「お茶で良い?」
「あ、うん」
「それにしても…雨ひどくなってきたね」
その通り。雨なんてやむ様子もなく、ひどくなっていく一方だ。
「テレビつけていい?」
「いいよ」
-ただいま、○○県では雨が非常に強くなっており土砂崩れの危険性が…-
「あー、どうしよ」
雨のせいで家に帰れないと嘆いた
その瞬間「ピコンッ」と携帯音が鳴った。
「誰から?」
「うっしーからだ」
ホーム画面を開いてみるとうっしーという文字が表示されていた
『帰れましたか?俺はガッチさんの家に泊めて貰ってまーす』
二人がピースしてガッチさんの家にいる事が分かる写真とともにメッセージが送られてきていた
「これ見て」
「楽しそうだね~」
とまらせてもらってるのか?いいなぁ。俺も泊めて欲しいなぁ~
あ、もちろんレトさんの家にだよ?
「うーん…キヨ君もとまっていく?」
「明日土曜日だしさ。雨もやまないだろうし」
え?今???え??
聞き間違い?
「で?どーするの?」
「今日、ばあちゃんも帰ってこないって連絡あったし」
なるほど、レトさんはおばあちゃんと暮らしているのか…………
じゃなくて
「お言葉に甘えて、とまらしていただきます」
「素直でよろしい。」
俺は謎に正座をしながらそう答えた
そこからゲームを一本丸ごとやった。
時々レトさんがお菓子を出してくれて楽しくて、楽しくて、
この時間が終わって欲しくなかった。
「よいしょ」
突然テーブルの上にドスンと手を置いてノートを広げている
「………あのー?何を…?」
「んー?宿題するよ」
「うげぇ」
今日課題が出た教科は数学だけだが、こんな日位勉強なんてものはしたくなかった
「いーやーでーすー」
「我が儘言うな。俺の特製のお茶をついでやるから」
そうすると、俺をなだめるようなポーズをしながらキッチンへと歩いて行く
その間にレトさんのノートをのぞき込むと、案外きれいな字をしていて字を見ているだけでも愛おしいと思えてしまった。
「やべ、俺、こんな変態だったのか…」
なんて独り言を言ってみる
「お前は元からだろ」
「ひっど」
クスクスと笑って緑茶を机に置いて、笑顔で
「どうぞ」は反則ですよ
ーーー
俺は20分もかからない内に問題をときおわった。
そして緑茶をすする。ほっこりとして落ち着く味だ。
前を見るとプリントが進んでる様子がないレトさんが頭を抱えていた
「どう?」
「え?うん…まあまあだけど…………」
「……もしかして………終わった?」
俺がコクリと頷くと一瞬で顔が真っ青になってあたふたし始めた
「向こうでゲームでもしといて」
「分かんないんなら教えるよ?」
「だ、大丈夫だから」
しっしっと追いやられてしまったが、あまりにも可愛いツンデレを見てしまった。
もう完敗。お手上げですわ。
俺は渋々一人でゲームをすることにした。
そこから約1時間経ってもレトさんがこちらへとやって来ない
心配になって勉強している方まで歩いて行く
「…えーと……ここがaで…ここは…b?かな…」
ぶつくさと考えていて集中しているようだったので俺はしょーがないなと思い、またゲームをしにテレビの前に戻った。
それからまた1時間。流石に遅い。
遅すぎる。
焦りと戸惑いを隠せずにゲームの電源を切る
「お待たせ~」
そんなことを繰り返していると、気の抜けた鼻声でヘラヘラと笑ってこちらへと歩いてきていた
「今回の宿題さ、俺の苦手な範囲で…ごめん…」
「気にしなくていいよ。さ、面白いゲーム見つけたからさ、やろ?」
泣きそうだったのでフォローをすると
鈍感な癖に
単純で
「うん!」と柄にもあわなく元気に返事をしやがった
その攻撃はレトさんより単純な俺には急所にあたりすぎてしまった。
ーーー
二人きりの部屋に「ぐぅ~」なんて間抜けな音が急に広がる
二人同時だったらしく
「「ごめん!」」
みごとに声が重なった
「レトさん、俺腹減った。」
「そーね」
二人で静かに笑った
ーーー
「よし、俺作ってくる」
「料理出来るの?!」
「え、うん」
「当たり前でしょ?」という顔でこちらを見てきていた
「じゃあ、またまたお言葉に甘えるわ」
「おう!任せとけ」
レトさんはそう言ってニカリと笑いまた台所へと走って行った
グツグツ
コトコト
美味しそうな匂いがだんだんとこちらまで漂ってきて、俺の腹の虫は治りそうになかった
あまりにも俺好みの匂いで、少しだけ目線をそちらに合わせる
バチッとレトさんと目が合った
「できたよ」
優しく微笑んでこっちを見てくれた
匂いよりもそちらの方が気になって仕方がない
「どう?ハンバーグ作ってみた」
「ハンバーグ?!すげー」
「だろ?食べるぞ」
ほかほかの炊きたてのご飯が白くつやつやと輝いて
ハンバーグは切ると中の肉汁がこれでもかと主張してくるようにあふれ出てくる
付け合わせの味噌汁は具材がまんべんなく入っており嫌いなものが混ざっていても自然と食べてしまいそうだ
「く、食っていい?」
「もちろん。召し上がれ?」
ニヤニヤと顔をゆがめているが瞳の奥では「どう?、どう?」と言うようにキラキラと光っている
「うんまっ!」
「でしょ?!」
これは、もう、何というか、控えめに言ってすごかった
「おれも食べよ」
レトさんが一口頬張る。
その姿は、やっぱり男だなぁと思ってしまうように落ち着いた様子で食べていた
「うまい!」
うん。まあ、普通にカッコいいな
レトさんの新たな一面を知れて嬉しい反面
やっぱり俺らは所詮男同士。同性なのだと思い知らされる瞬間でもあった。
「………ね、レトさん」
「ん?」
「同性愛ってさ、どうなのかな」
「同性愛だけにどうって?あんまかかってないよ。2点。」
とっさに口が開いてしまった事なのでもう取り返しがつかなくなってしまった
さっきのレトさんも口から味噌汁を吹き出しそうになってたし
「そうじゃなくて、真面目な話」
いっそのこと開き直ってしまえ
「レトさんはどう思うの?」
こんなのほぼ告白に近いだろう。
なのに何ですっとぼけたいつもの顔してんだよ
「………そうね、おれはね」
顔つきが変わりイケメン俳優みたいに真剣な表情になった
「あっても、全然いいと思う。それは人の自由だから。俺が縛ってしまったらその人の人生が乗っ取られてしまいそうでしょ?」
「だからもし、キヨ君が男の子を好きだとしても応援はするよ。お前の隣でな」
どうやら俺が男が好きと勘づかれたらしい。
だが、俺は取り繕って
「俺が男を好きって事ではないんだけどね。友達の話。」
そういうと、目をぱちくりさせて「友達思いなんだな」と優しく、かつ、驚いた声で言った
「けど答えてくれてありがとう」
「真面目な答え聞けてほっとしたわw」
おれがへらりと笑うと
君は目を光らせていつもの感じで言った
「どこまでも失礼な奴だな」
「褒めたんじゃん」
「どこがだよ」
そしてその気まずい空気も幕を閉じた
ーーー
「そんじゃ、電気消すよ」
「はい」
パチリと音が鳴ると視界が真っ暗になる
すぐ隣にはレトさんが寝ている
そうです。お察しの通り、同じ布団で寝ることになったのです
なんでも、おばあちゃんとは一緒の布団で毎日寝てるんだって。
………………あえてそこには触れなかった。
俺ならいつも土足でずんずん行くだろうって思うだろうけどさ
そんなの俺には出来なかった
だって気付いていたから
レトさんの両親がこの世にはもういないということ
玄関には仏壇があって、6月らしいあじさいの花が丁寧に供えられていた。
俺がお風呂に入ってるときだって静かに金属の鐘の音が聞こえた。
「友達がね家に泊まってくれるよ」なんて
はしゃいだ声を俺が居ないところでだしていた
家族だけの特権だな
だからレトさんも寂しかったのだろう。そう思ったので、しっかりとその話には踏み込まないようにした
今日は考えすぎたのでウトウトして眠ってしまった
なんだか動きにくくて目を微かに開けるとレトさんが俺をぎゅっとしていた
「…意外に力強っ」
離したくないと言っているかのように強く、やさしく俺を抱いていた。
俺は抱き枕じゃねーよ
苦笑しながらも、向かい合って寝ている形になっているのでこれはこれで結構恥ずかしいものだ。
「××××××…」
ん?なんて言った?
もう一度耳を澄ます
「かにねこくん…」
は?かにねこ?かにねこってなに?
レトさんを起こさないようにキョロキョロすると
ふと、頭の辺りにふわっとした感触があるのに気付いた
頭の片方には猫耳、もう片方には蟹の手がついていて白と黒色のぶち模様の長い抱き枕が置いてあった
レトさんが俺のために置いてくれたと思うと嬉しくて「ふふっ」と笑ってしまった
ま、センスはどうかと思うけど
起きる様子が0%のレトさんを見下ろしながら
栗色がかった髪の毛をふわふわと、大切に撫でる。
そうすると顔をしかめ、そのあとに子供らしい笑顔を見せる。目元には涙が浮かんでいる
そっと涙を拭う
こんな顔誰にも、いや、俺なんかには見せたくないはずだろう
少しだけ大人びていると思ったけど、それはなかなか甘えられなかったからかな
大丈夫。俺が隣に居てあげるから。
たとえこの恋が実る事がなかろうと、ね
いい香りがするシャンプーの頭をぎゅっと抱きかかえて最初で最後になるかも知れない俺にとっての最高の優しい声で言葉を放つ。
「おやすみ。レトさん」
ーーー
6月編終わりました。
とても長かったですね。
ごめんなさいです。
コメント
2件
わぁぁぁぁ…レトさんの過去ですごいやられてしまった😭😭 また、キヨも優男な所がまた良いんですよね…