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「わ、笑わなくてもいいじゃないか…」
「すいません。でも…私の一言であんなに動揺しなくても…ふふっ…」
店長は、暗闇でも分かるくらいに顔を真っ赤にしてハンドルを握っている。
そんな中、私は今の状況に驚いていた。
(あれ…?私、何…男相手に笑ってるの…?)
爆笑とまではいかないが、久しぶりに、演技ではない、素の自分で笑った。
よりによって大嫌いな男なんかの前で。
そんな自分が許せなかった。
「藤塚さん、初めて笑ってくれたね。愛想笑いじゃなく。なんか、嬉しいなぁ。」
私の心境にも気づかず能天気な発言をする店長に苛立ちが募る。
「何で嬉しいんですか?おかしいですよ。店長、私に馬鹿って言われたんですよ?上司に向かって。普通、怒るところじゃないですか。」
だいぶ、トゲを込めた言い方だったと思う。それでも店長は、全く動じていなかった。
「いやぁ、俺が馬鹿なのは本当のことだしね。それに、遠慮がないのはいいことだよ。」
にこにこして、言う。遠慮がない…?そんな捉え方もできるのか。
この人はどこまでもプラス思考な人だ。私が何を言ってももう、無駄なんだ。
私に構うことをやめない。
徐々に、諦めの気持ちが芽生えてくる。
それと同時に、よく分からない感情が生まれた。
だけどきっと、悪い感情ではない。
「…店長。私…辞めるの、撤回してもいいですか?」
ちょうどその時、私の家が見えてきた。
「え?も、もちろんだよ!!いやぁー、よかったよかった!!」
ゆっくりと車が停車すると同時に、店長がそう応える。