tg視点
図書室を出たあと、俺たちはしばらく無言だった。
tg(あっとくん、さっき……俺の気持ち、聞こうとしてたよね)
でも、言えなかった。
あの「好きだよ」の返事も。
俺の「850」の想いも――まだ、怖くて。
at ……ちぐ
tg あ、え、な、なにっ?
声が裏返る。
顔を見れないのに、返事だけは早くて、自分でも情けない。
at 無理に、答えさせようとしてたらごめん。……今の話、忘れてもいいから
tg っそんなこと、ない…!
俺は、あっとくんを見た。
その目は、やっぱり優しくて、でもどこか戸惑ってて。
tg …俺も、ちゃんと言いたいこと、ある。でも、今すぐは…うまく言えないかもで……
at うん、それでいいよ
あっとくんが小さく笑って、前を向いた。
横顔が、夕焼けに少し赤く染まってるのを見て、胸がぎゅっとなる。
tg(……言いたい。ほんとは、すぐにでも)
でも言葉にした瞬間、何かが崩れてしまいそうで。
at ねぇ、ちぐ
tg ん?
at 明日、…もう一回だけ、時間くれる?
tg えっ…
at ちゃんと……気持ち伝えたいから
心臓が、どくん、と跳ねた。
tg ……うん、いいよ
返事をした俺の声が、ほんの少し震えていたのに、
あっとくんは気づかないふりをしてくれた気がした。
それが、ちょっとだけ優しくて、ちょっとだけ悲しかった。
tg(明日、あっとくんは、なんて言うんだろう)
怖い。でも、期待してる。
数字じゃない、“言葉”で聞けるかもしれない。
そんなことを考えてるうちに、いつもの分かれ道に着いた。
at じゃ、また明日
tg ……うん
ふと、あっとくんが一歩だけ、近づいた。
ほんの少しだけ、距離が縮まる。
触れたかもしれない手が、ふわりとすれ違って――
tg おやすみ、ちぐ
そう言って笑ったあっとくんの後ろ姿を、俺は黙って見送った。
jg(好きって、こんなに苦しいのに、こんなに……嬉しい)
夕焼けが、少しずつ夜に染まっていく空の下で、
俺の「850」は、また少しだけ熱を帯びていた。
♡▸︎▹︎▸︎▹︎2000
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