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入学式が始まった。
フローラ様が在校生代表として堂々とお言葉を述べている。
彼女は、王太子殿下が欠席の可能性が少しでもあるのならとしっかり準備していたのだろう。
フローラ・シュガー公爵令嬢、シュガーは砂糖、つまりは佐藤だ。
そして、この物語の作者は10年以上前のフローラ事件の時にいたCAの誰かだ。
協調性が売りの珠子だったが、みんなと意見が合わない時があった。
CAのスケジュールはフライトメンバーも含めて毎回変わる。
しかし、月に1回ほど班フライトといって同じメンバーで飛ぶ。
フローラ事件は班フライトの後のホテルで起こった。
その日は班の中の1人が誕生日で、私が小さなサプライズパーティーを企画した。
その中で『幼馴染と出会ったばかりの金持ちどちらと結婚する?』というゲームの話になった。
男が結婚する相手を一方に選べるという、理不尽なゲーム。
私は当然、出会ったばかりの金持ち女フローラと結婚すると言った。
周りは全員幼馴染と結婚するに決まっていると言って、なぜか私は非難された。
男性は意外と妻の実家を見ていて、実家の太い女を選んで結婚していると感じていた。
私は小さい頃から女子ばかりでつるんでいて、男の幼馴染がいなくて男の幼馴染と結婚することが想像できなかった。
私をざまぁ要員フローラとして描くと言うことは、実は私は嫌われていたのだろうか。
フライトが終わった後の自由時間に、女子校のノリを引きずってパーティーなどして面倒な人と思われていたのかもしれない。
私がノートに嫌いな人の名を書いていたように、煩わしい珠子のことを自作の小説の中で「ざまぁ」するという訳だ。
「イザベラ様、少し宜しいでしょうか⋯⋯」
私の横にいつの間にかカルロスが来ていた。
何かあったのかと思い、彼についていって会場を出る。
カルロスはとある部屋の前まで案内すると、立ち去っていった。
「珠子様、少し話しましょう。先ほど、シュガー公爵令嬢とお会いしているのをお見かけしました。珠子様がなんだか落ち込んでいるように見えたのですが、何かありましたか? 」
部屋の中にはルイ王子がいた、私は彼が入学式に出席していなかったことに驚く。
「フローラ様のモデルは珠子でした。それより、ルイ王子は入学式に出席しなくて宜しいのでしょうか?新入生代表の言葉がありますよね。代役を立ててますか? 」
ルイ王子はカップを用意し、紅茶を2人分注ぎながら私の話を聞いている。
「王太子である兄上が出席しないので、僕も出席しません。新入生の言葉はカットされます」
王族は出席しないということにしようと言うのだろうか。
出席しないけれど代役を立てたルイス王太子より、新入生の言葉という重要なものをカットしたルイ王子は気遣い珠子にもできないことをしている。
ルイス王太子の不在より、新入生の言葉がなかったことの方が周りには印象に残るだろう。
兄ルイスのために喜んで火の粉を全部かぶりに行く、ルイ王子は本当すごい。
「紅茶美味しいです。気持ちが暖かくなりました。ルイ王子、愛しています。それにしても、本当にルイス王太子殿下のことを第一に考えられているのですね」
私は、自分は女子には好かれていると思っていたので、「ざまぁ要員」にされる程、嫌われていたという事実に動揺していた。
ルイ王子はショックを受けている私の姿に気が付き、部屋に呼んでくれたのだ。