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第二十章:押し倒された夜と、目撃者ハンジ衝動と制御不能な独占欲


エルヴィン団長との公然たる争いを終えたリヴァイ兵士長の心は、激しい怒りと嫉妬で燃え上がっていた。エルヴィンがサクラを連れ出し、**「一人の男」**としての感情を露わにしたことは、リヴァイの理性を限界まで追いつめた。


その日の深夜。リヴァイは自室の掃除を終えた後も、心の荒れを抑えることができなかった。彼は、サクラの**『清潔な聖域』が、エルヴィンの私的な感情に触れ、「汚染」**されたという感覚に耐えられなかった。


リヴァイは衝動に突き動かされ、音もなくサクラの部屋に侵入した。


サクラは、明日に控えた三者会議の準備を終え、ベッドで眠っていた。リヴァイは、静かにベッドの傍まで近づくと、サクラの小さな体を、言葉もなく見下ろした。


(俺の傍にいろ。誰にも、お前の心を乱させない。お前は…俺だけのものだ)


リヴァイは、サクラの体を押さえつけるように、彼女の上に覆いかぶさった。


「…兵士長!?」


サクラは突然の重みで目覚め、驚きの声を上げた。リヴァイは、彼女の口を手で覆い、静かに、しかし荒い息遣いで囁いた。


「静かにしろ。…お前は、俺の許可なく、あいつに触れさせすぎだ。お前は、自分がどれほど貴重な存在か、理解していない」


リヴァイの顔は、月の光の下で青白く、その瞳は切実にサクラを求めていた。彼の行動は、愛情よりも、彼女を自分の支配下に置きたいという、制御不能な独占欲に支配されていた。彼は、サクラの体を**物理的に『占有』**することで、エルヴィンへの優位性を主張しようとしたのだ。


「俺は、お前が誰のものかを、お前の体に叩き込んでやらなければならない」


最悪の目撃者


リヴァイがサクラの顔から手を離し、次の行動に移ろうとした、その緊迫の瞬間。


ガラッ


突然、部屋のドアが、ノックもなく勢いよく開けられた。


「サクラちゃん!ねえ、さっき君の異世界の**『核融合』**の話を思い出してね、ちょっと聞きたく…」


そこに立っていたのは、深夜のひらめきに興奮し、大型のノートを抱えたハンジ・ゾエ分隊長だった。


ハンジの言葉が、途中でぴたりと止まる。


彼女の視線の先には、ベッドの上で、小柄なサクラの上に覆いかぶさり、サクラの体を押し倒しているリヴァイ兵士長の姿があった。リヴァイのシャツは乱れ、その表情は怒りと欲望で歪んでいる。


部屋の空気は、一瞬にして凍り付いた。ハンジの眼鏡の奥の瞳が、これまでにないほどの驚愕と、そして純粋な科学的興味で大きく見開かれた。


「…へ?」


ハンジは、興奮と混乱のあまり、持っていたノートを床に落とした。


リヴァイは、自分の最も私的で、**「清潔な聖域」**で犯した衝動的な行為を、最も厄介な第三者に見られたことに、全身の血の気が引くのを感じた。


「ハンジ…てめぇ…」リヴァイは、殺意を込めた眼差しでハンジを睨みつけたが、すぐにサクラから体を離した。


サクラは、ハンジの出現によって解放され、激しい動揺と羞恥心で、布団を顔まで引き上げた。


ハンジは、床に落ちたノートを拾いながら、混乱した思考を懸命に整理しようとした。


「あ、ああ!す、すまない!リヴァイ!これは…これは、あれだね!**『緊急体術指導』だね!?…まさか、『実戦形式の組み伏せ訓練』**を、こんな時間に、こんな場所でやっているとは…さすが人類最強…」


ハンジはそう言って、無理やり納得しようと試みたが、顔は真っ赤に染まり、声は震えていた。彼女は、この状況が**「訓練」**などではないことを、十分に理解していた。


「あ、あの!じゃあ、その、その**『実戦形式の組み伏せ訓練』**は、後で、その、報告書を、ぜひ、エ、エルヴィンと私に、提出してくれ!…じゃあ!」


ハンジは、ノートを抱え直すと、逃げるようにドアを閉め、その場から立ち去った。


リヴァイは、恥辱と怒りに顔を歪ませながら、サクラのベッドの傍で立ち尽くした。彼の独占欲は、最高の形で、公衆の面前(ハンジの前)に晒されてしまったのだ。

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