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#狂愛
桜咲かな
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第41話
僕は、馬を休めるために宿屋に泊まってからまた進み始めた。
道中、何だか大事な事を忘れている気がして考えながら馬を走らせていた。
何だろう……こんなに歯がかゆいのは……
僕は頭をひねりながらくしゃみをした。
噂か。でも、何で……?
僕はこの謎が深まるばかりで首を傾げた。
セルフに着くと、ここも魔物が着たような傷跡が残っている。
「……ロルフ! ありがとう……ホルムを守ってくれて……」
僕の姿が見えたニコラさんが僕の方へ向かって走って来た。
「ニコラさんも無事だったんですね。良かったです」
僕がそう微笑むとニコラは僕の頭を優しく撫でた。
「……という事なので、昔の事に関しては口を噤んで欲しいという願いをしにきました。皆さんご無事でなによりです」
僕が肩膝をつきながら言うと「それは私たちも同じよ。噤んで欲しいというのは姫様のためよね。勿論引き受けます」とキャサリン様の声が聞こえた。
「あぁ、ありがとう。これで、ロザンナも報われる。こんなにも早く事態を収束させてくれたお陰で死人は出なかった」
そう言いながらジェイミー様が頭を下げた。
「それはなによりです。妹探しの旅と、他のゆかりのある都市へ向かうので僕はこれで失礼します」
そう言って僕が出ていこうとして扉に手をかけた所で背中にニコラさんが「ソフィーは記憶があるの?」と言った。
「多分、あると思います。また今度来る時はたっぷり話してあげてください」
僕はそう言って扉を閉めた。
少し広場で買い出しや身支度を整えてから馬の世話をして南へ向かった。エルドまでは休憩無しだったら丸一日かかる。馬の負担を考えると夜は走らせない方がいいので、途中で野営をすると考えると一日半かかると見積もった。
途中で魔物の群に会ったらという事も考えてだ。
僕は、途中であの龍と戦った所に寄った。そこは、王城を中心として見ると、東南の方面だ。セルフはどちらかというと東北だ。
魔力は見えないけど、昔からソフィーの光の筋が見える事が多々ある。
十一を数える頃には集中すればソフィーの光が見えるようになっていた。勿論、アニカも同じだ。
僕は集中するために呼吸を整えて、神経を研ぎ澄ませた。これは十四年ぶりくらいだ。
目を開けると光っている空気が漂う空気の中儚い光の筋が二本あった。でも、アニカとソフィーを見比べるとアニカの方が色が青白くて、ソフィーが黄色っぽい。
僕はソフィーの方の光を辿った。
でも、途中で僕が疲れてしまって光が見えなくなってしまった。多分、光を見るのにも力は必要なんだと思う。
力が目覚めているのだろうけど、分からない程、小さな力だったのだったから気付けなかったんだと思う。
僕は深くため息をつきながらアニカが復帰する前に済ませないといけない事を先にしようと思った。
何で、こんな使えないの……生き残ったのに……血筋なのに……
僕は馬にブラッシングをしながら夜空を見上げた。
夜空も変わらないな。アニカがあの花を思い出さなければ僕はもういい。アニカが僕の名前を一生思い出さなくても、大丈夫。
いや、あの一度目の大災厄も思い出してほしくないけど……あ、あと僕の情けない姿も……でも、これは僕の我儘か。
……でも、思い出したらアニカはどうするのだろう? 泣くかな? 悲しむかな? それとも怒るかな? ……どちらにしろ、僕は謝ろう。
それがきっと僕にできる事。
僕はふかふかの草のベットの上でそんな事を考えながらいつの間にかグッスリと寝た。
「あっ! ロルフ!」
そう言って十歳くらいの男の子が崖から滑り落ちて僕に向かって手を伸ばしている。
僕は必死に手を掴もうとした。なんなら飛び降りた。だけど間に合わなくて僕も一緒に落ちた。
「うっ! ……」
僕は唸りながら飛び起きた。周りは森で、馬が青々と茂った草をムシャムシャ頬張っている。
僕は小川で軽く体を流して服も総洗いしてから違う服に着替えた。
……情けない。こんな昔の事を……でも、リュック……僕がしっかりしてればな……
僕は唇を噛みながら馬に跨った。
何だか、昨日、力を使い過ぎたのか、食欲も……ん? 何だ? この違和感……
光の力を使い過ぎると、食欲が無くなり、発熱と頭痛と腹痛に怠け、息苦しさも。酷ければ、生死に関わる程の症状が出る。
治すには、光の力を他人からかけてもらうか、時間に任せるか。僕はそんなに酷くないから、大丈夫そうだけど……
何だろう……察しが悪いのは昔からだけど、こんなに歯がかゆくなった事は無いけど……う〜ん……
僕は正体不明の嫌な予感が過ったので馬を急かした。
コメント
1件
読了しました! 今回はロルフの内省が深くて、特に「リュック」の夢のシーンが胸に刺さりましたね。彼の「僕がしっかりしてれば」という後悔が、普段の頼もしさの裏にある脆さを感じさせて、グッときました。それにしても「歯がかゆい」という不調、何かの伏線ですよね? 光の力の使い過ぎとは別の、何かが起きる予感がしてゾクゾクします。続きが気になります!