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第一章 白い約束 前編
――リュカ視点――
エリアス「リュカ、またそんなところにいた」
聞き慣れた声に振り返ると
エリアスが穏やかな笑みを浮かべて立っていた
エリアス「探したんだからな」
リュカ「ごめん」
そう返すと、エリアスは困ったように笑いながら俺の隣に腰を下ろした
幼い頃から変わらない距離
隣にいることが当たり前で
言葉がなくても落ち着ける相手だった
リュカ「今日は訓練じゃなかった?」
エリアス「もう終わった」
そう言って俺の頭を軽く撫でる
その手の温もりが好きだった
子どもの頃から何度も触れてきたはずなのに
年を重ねるたび胸の奥が落ち着かなくなる
……こんな気持ち、知られたくない
エリアスは幼馴染で、護衛騎士見習い
俺はヴァレンティア王国の第一王子
生まれた立場も背負うものも違う
だから、この想いは胸の中にしまっておかなければならない
エリアス「考えごと?」
顔をのぞき込まれて慌てて首を振る
リュカ「なんでもないよ」
エリアス「そうか」
それ以上聞かないところもエリアスらしい
聞きたいことがあっても無理には踏み込まない
俺が話したくなるまで待ってくれる
そんな優しさに何度救われてきただろう
エリアス「そういえば」
エリアスが空を見上げながら口を開いた
エリアス「来月の誕生日、一緒に街に行かないか」
リュカ「街?」
エリアス「ああ。前に食べたいって言ってただろ?あのお菓子」
思い出した瞬間自然と笑みがこぼれた
リュカ「覚えてたんだ」
エリアス「忘れるわけない」
照れもなく返される
俺が何気なく話したことまで覚えていてくれる
それが嬉しかった
エリアス「約束だからな」
リュカ「うん」
俺は迷わず頷いた
こんな時間がずっと続けばいい
隣で笑い合って、他愛ない話をして
それだけで十分幸せだった
だけど、その幸せは突然終わりを迎える
「リュカ様」
侍女の声が聞こえて振り返る
「国王陛下がお呼びです」
父上が?珍しい
リュカ「すぐ行くよ」
立ち上がるとエリアスも一緒に立つ
エリアス「俺も行こうか」
リュカ「大丈夫」
そう答えたものの、胸の奥には言いようのないざわめきが広がっていた
父上が俺だけを呼ぶなんて滅多にない
何かあったのだろうか
エリアス「じゃあ、またあとで」
リュカ「うん」
エリアス「街に行く約束、忘れるなよ」
リュカ「もちろん」
笑顔で返事をした
その時の俺は、本当にそうなると信じてた
父上の部屋に向かう足取りは無意識に速くなる
扉の前で深呼吸をひとつしてから声を掛けた
リュカ「リュカです」
「入りなさい」
扉を開けると父上と母上が並んで座っていた
二人とも穏やかな表情を浮かべている
けれど、その空気はどこかいつもと違っていた
「座りなさい」
促されるまま椅子に腰掛けた
父上は俺をまっすぐ見つめ
ゆっくりと口を開く
「リュカ。お前の婚約が決まった」
『!』
……婚約
耳に届いた言葉に頭の中が真っ白になった
何も考えられない
何も聞こえない
ただ一つだけ浮かんだのは
さっきまで笑っていたエリアスの顔だった
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コメント
1件
あおいです🤍 第2話、読みました。 幼い頃から変わらない距離感に甘えていたリュカの胸の内が、一つひとつの仕草や言葉に溢れていて切なかったです。「こんな気持ち、知られたくない」という独白に、彼の隠した想いの重みがぎゅっと詰まっていました。エリアスが覚えていたお菓子の約束——あの温かいシーンがあったからこそ、国王の呼び出しと「婚約」の知らせの衝撃が胸に刺さりました。続きが気になります。