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❍ 72 ◇持ちつ持たれつ
頭の中が痺れ、下腹部の肉の奥がジンジンするのだった。
「ヤ……ァンっ」
『どうにかしてほしい』
どうにかって?
自分に向けて問い掛けたが、その答えなんてとっくに知っている。
だけど、その言葉をはっきりと言葉にすることは憚られ、違う言葉を選んだのだ。
私が意味のない問答をしているうちに、彼の右手が下腹部に戻り、縦横無尽に
指を巧みに操り動き回る。
だけど──
手と指だけじゃ何かが足りない。
『お願い、どうにかしてほしい。
今度こそ、どうにかしてほしい』
すると、彼の手は私の左右の太腿を掴み開脚するように少し広げた。
そこでも彼の舌と口で、ねっとりと吸い付かれり舐められたりと──
絡み取られ、これまで知らなかった領域の快感を与えられる。
もう、声を抑えるなんてことできなかった。
「ァ…フン……○…〇――――」
自分が快感に負けて破廉恥な言葉を口にしたらどうしよう、そんな悩みを
脳内でしていると……蒼馬さんの動きが止まる。
ある意味、彼は品行方正な男性だった。
私のことも、奥さんのことも困らせないよう、ちゃんと考えて行動できる人なのだ。
快感を上り詰めたときに挟む、この間といったら……。
ないわぁ~。
だけども、この試練を乗り越えない人間には、あとで地雷が待っていたり
するのだから、しようがない。
この待っている時間の長いこと。
秒刻みの時間をこんなに長いと思ったのは初めてのことだった。
そして聞こえよく『授かり婚』だなどと、恥ずかしげもなく言えるバカップルは
こらえ性のない奴らなのだ、などと待っている間、私は脳内で奴らに八つ当たりしていた。
行為が再開される。
そして、最後の行為をなりふり構わず互いに全身で没頭し続けた。
この夜、私の身の内に『媚薬の一滴の雫』が静かにユルユルと垂らされた。
濃厚な時間が過ぎゆき、私の身体の奥にあったチロチロと燃え盛っていた芯が燃え尽きた瞬間――――
『終わった……』
そう思った途端、とんでもなく寂しさに襲われた。
付き合って4年目にして、私たちは本当の不倫関係になった。
だからといって、明日から大出を振り、彼女気取りができるわけもないことを
私は得心していた。
だって、ただ身体を求められただけだ。
奥さんが家を出て行ったらしいと他からの情報で聞いたけれど、それこそ家を出たという
話も離婚するという話も聞かされてはいないし……。
蒼馬さんから、ちゃんと付き合おうとか結婚を考えているとかっていう、
そのような私自身を必要とされる言葉は、なんら聞かされていないのだから。
私は自分が傷つかないよう、この先のシナリオを自分にとって都合のいいように
考えるのはよそうと思った。
そして、彼からの新たなアクションがない限り、これまでと同じ距離感で
過ごすと決めていた。
私は決して蒼馬さんに弄ばれているなどとは、思っていない。
これまでも、これからもだ。
だって、彼の存在で自身慰められてきたのは事実なのだから。
まぁお互い様で、持ちつ持たれつといったところだよね?
私たちの関係って。